主張
米国の暴挙と首相
常軌逸した行動を認めるのか
安倍晋三首相が6日に年頭記者会見を行いました。注目されたのは、トランプ米大統領の指示によって米軍がイラクのバグダッド空港でイラン革命防衛隊の司令官を空爆で殺害するという軍事攻撃に対しどんな見解を示すかでした。しかし、首相はこの軍事攻撃について一切コメントしませんでした。しかも、トランプ氏の対イラン「有志連合」の呼びかけに事実上応え、中東沖に自衛隊を派兵する考えを改めて表明しました。いくら首相が「緊張緩和のための外交努力」を訴えてみても何の説得力もなく、ただ空虚に響くだけです。
無法重ねるトランプ政権
米軍がイランの司令官を殺害したのは3日です。ところが、首相は態度表明を避け続けています。6日の会見でも「中東地域が緊迫の度を高めており、現状を深く憂慮している」「全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求める」と述べるだけでした。誰が今回の緊張をつくったのか、問題の根源はどこにあるのかについての言及はありませんでした。
今回のイラン司令官殺害をめぐるトランプ氏の言動は、理性を失った常軌を逸したものです。
イランの司令官を殺害した軍事攻撃は、トランプ政権が自ら呼んだように「先制攻撃」(エスパー国防長官)であり、国連憲章に違反していることは明らかです。
米紙ニューヨーク・タイムズ5日付(電子版)によると、米軍幹部らは今回の司令官殺害の選択肢を「最も極端な対応」としてトランプ大統領に提示しました。米国防総省では他の選択肢をより受け入れやすくするため、あり得ない選択肢を示すことがあり、大統領が採用するとは想定していませんでした。ところが、トランプ氏は司令官殺害を決め、国防総省幹部らは衝撃を受けたといいます。
さらに、トランプ氏は「イランが米国人や米国の資産を攻撃すれば、イランの52カ所を標的にし、とても迅速に、とても激しく攻撃する」とツイートしています(4日)。「52カ所」とは「何年も前にイランによって人質になった52人の米国人を示す」と述べており、1979年のテヘランでの米大使館人質事件への報復を念頭に置いたものです。標的には「イランやイラン文化にとって非常にハイレベルで重要なもの」が含まれるとし、米国内でも「文化遺産を攻撃するのは戦争犯罪」だとの批判が上がっています。
イラク議会は国内でイラン司令官などが殺害されたのを受け、米軍の撤退を求める決議を採択しました(5日)。これに対してもトランプ氏は「イランへの制裁が生ぬるく見える前代未聞の制裁をイラクに科す」と脅しをかけています。
自衛隊派兵の決定撤回を
米国とイランの緊張激化の原因がどこにあるかは明瞭です。トランプ政権がイランとの核合意から一方的に離脱し、同国への経済制裁と軍事圧力を強めたことにあります。さらに今回の無法な先制攻撃が戦争の危険を生んでいます。
首相は6日の会見で「日本ならではの外交」を強調しました。しかし、それは、トランプ政権の無法を黙認することではありません。米国が軍事力行使を直ちにやめて核合意に復帰するよう強く求め、中東への自衛隊派兵を撤回することこそ、憲法9条を持つ「日本ならでは外交」に他なりません。
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米国の暴挙と首相/常軌逸した行動を認めるのか
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ゴーンが会見で告発予告した「自分を逮捕させた政府関係者」とは? 囁かれていた今井尚哉首相補佐官と菅義偉官房長官の関与
昨年末、保釈中に秘密裏にレバノンへ出国した、日産元会長のカルロス・ゴーン被告。明日8日10時(日本時間)にベイルートで会見を開く予定だが、その内容が世界中で注目されている。ゴーン被告が日本の司法制度の酷さを告発し、自分の逮捕を仕掛けた「日本政府の関係者」を実名で暴露すると予想されているからだ。
ゴーン氏は先月31日にスポークスマンを通じて出した声明のなかで、〈国際法や国際条約における法的義務を著しく無視して、有罪を前提とし、差別が横行し、基本的人権が否定されている〉と日本の司法制度を批判したうえで、〈私は正義から逃げているのではない。不正義と政治的迫害から逃れているのだ〉と述べていた。
ゴーン氏が逃亡していることの是非はともかく、たしかに日本の司法制度は封建国家や独裁国家と変わらない非民主的なものだ。刑が確定していないのに一方的に劣悪な代用監獄に拘束され、起訴されてしまえば、どんなに証拠が不備でも99%以上の確率で有罪になってしまう。ゴーン氏逮捕以降、この日本の司法制度の後進性は欧米のメディアからたびたび批判されており、ゴーン氏も明日の会見で改めてこの問題を強くアピールすると思われる。
だが、ゴーン氏が明日、告発するのはそれだけではない。米テレビ「FOXビジネス」が6日に取材した際、ゴーン氏は東京地検特捜部による逮捕は、自分を日産会長から蹴落とすためのクーデターだったとし、それを示す「証拠」と複数文書も保持していると述べた。さらにゴーン氏は、みずからの逮捕・起訴の背後には日本政府の関係者もいたとして、8日に予定される記者会見では、数人の実名を明らかにする方針を語ったという。
ようするに、ゴーン氏逮捕には「日産内のクーデター」だけでなく、「自分の逮捕の背景には、日産がフランス企業に買収されることを嫌がった日本政府がいる」と主張し、そのことを明日の会見で具体的に暴露すると予告しているのだ。
言っておくが、これはゴーン氏が自分を正当化するために、根拠のない“陰謀論”を主張しようとしているわけではない。
そもそも、2018年のゴーン氏逮捕をめぐっては「日産、三菱自動車のルノーとの統合、海外移転を阻止する日本政府の意思があったのではないか」という国策捜査説が流れていた。実際、ルノーの筆頭株主であるフランス政府は三社を全面的に統合し、日産や三菱もフランスに移転させる計画をぶちあげており、ゴーン氏は当初、この経営統合計画に異を唱えていたものの、ルノーCEO続投と引き換えに態度を豹変。これに官邸や経済産業省が危機感をもち、検察と日産幹部らがけしかけたのではないかというものだ。
そして、本サイトはじめ一部のメディアは逮捕直後から、この日産クーデーター、ゴーン逮捕に安倍政権が関与していると考えられる根拠を具体的に指摘していた。
そのひとつが、ゴーン不正追及の動きが逐一、菅義偉官房長官に伝えられていたとの見方だ。いま、さまざまなメディアで、日産内部にゴーンの不正を調査していた極秘調査チームがあったことが報道されているが、中心人物と名指しされているのが、専務執行役員で弁護士資格も持つマレー系イギリス人のハリ・ナダ氏と同じく専務執行役員で広報担当を務めていた川口均氏(当時。副社長を経て昨年11月退任)。このコンビが最初に動いて情報を集め、弁護士、検察との間で計画を詰めていったといわれている。
ところが、そのひとりである川口氏が、菅官房長官と非常に親しい関係にあった。
「日産の本社は横浜ですから、地元選出の大物政治家である菅官房長官とは会社ぐるみで関係があるんですが、川口さんは特別です。川口さんが横浜商工会議所の副会頭になった頃から付き合いで、この数年は、頻繁に連絡をとりあって、会食や会合を重ねていた。社内では“川口さんの後ろ盾は菅さん”というのは共通認識になっていました。ゴーンの件も、菅さんに事前に相談していなかったとは考えにくい」(日産関係者)
川口氏は、東京地検特捜部がゴーンを逮捕した直後、菅官房長官を訪ねて、逮捕の報告と謝罪を行った人物。その際、川口氏が報道陣に「菅さんは驚いた様子だった」とコメントしたことから、「わざわざ菅官房長官が知らなかったと強調したのが、逆に不自然」との声が出ていたが、逐一、菅官房長官に報告をあげ、相談していたと見るほうが自然だ。
実際、ゴーン逮捕前から日産内部に食い込んでいたことで知られる「週刊文春」(文藝春秋)も2018年12月6日号の記事で川口執行役員がハリ・ナダ氏と連携をとっておいたことや菅官房長官と親しい間柄であることを強調していた。