「長官に会わせて」「無理だ」 自衛官5人が直訴 防衛庁を慌てさせた前代未聞の“事件”


[「防人」の肖像自衛隊沖縄移駐50年](4)第1部対峙反戦自衛官(上)
沖縄の日本復帰が翌月に迫る1972年4月27日、東京・六本木にあった防衛庁(当時)の正門前に突如、報道陣を引き連れた制服姿の自衛官5人が現れた。騒然とする現場でカメラのフラッシュを浴びる5人の中に唯一、沖縄出身で当時20歳の1等陸士、与那嶺均さん(69)=今帰仁村出身=がいた。
「沖縄派兵を中止せよ」
読み上げた文書は、防衛庁長官宛て。復帰に伴う自衛隊移駐に鋭く反発していた沖縄と呼応するような直訴だった。
「長官に会わせてほしい」「無理だ」。15分ほど守衛と押し問答した末、「長く居座ると拘束されかねない」と引き揚げた。自衛隊の在り方に疑義を唱える匿名のビラが隊内でまかれたことはあっても、5人もの現役隊員が素性を明らかにし、公然と批判の声を上げたことはない。直訴の直前には会見を開き、全国紙などの記者は前代未聞の「事件」に飛び付いた。
防衛庁の職員は慌てた。本当に自衛官か。急いで5人の顔写真を撮った。読み上げ文の署名と照らし合わせて所属部隊を確かめ、すぐ戻れと命じた。が、本人たちには届かなかった。「隊に顔を見せればリンチを受けるかもしれない」と恐れ、あらかじめ休暇届を出した上で身を隠していたからだ。
警視庁も加わった捜索網をかいくぐり、再び現れたのは翌28日。日本が主権を取り戻したサンフランシスコ講和条約発効の記念日であり、沖縄にとっては米軍施政下に取り残されることが決まった「屈辱の日」に、東京タワー横の芝公園に約8千人が集まった沖縄反戦集会だった。
与那嶺さんも壇上に立った。「私は沖縄で、住民に銃を向けたくない」。沖縄戦中、壕に逃げ込んだ住民を追い出した旧日本軍と、自衛隊を重ね合わせて訴えた。語り終えると、賛同の拍手と歓声がうねりのように広がった。高揚感はなかった。むしろ憤っていた。「欲しかったのは賛意ではない。移駐阻止の実現だった」。移駐部隊には、故郷の対立感情をそらすために地元出身者が選ばれていた。反対するにしても、沖縄の人間が矢面に立たされる構図は同じだった。
◇◇
数日後、身を潜めていた都内で自分たちが懲戒免職になったと新聞を読んで知った。“政治的中立”を守る規律に反した-という理由だった。入隊後の約1年間、同僚と、時に沖縄出身の隊員とウチナーグチで語り合った沖縄移駐反対論を許さない「見せしめだった」と思っている。(「防人」の肖像取材班・銘苅一哲)
<反戦自衛官(中)に続く>https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/690918
任期満了(2月5日)に伴う岐阜県知事選は7日、告示され、いずれも無所属新人で元内閣府官房審議官の江崎禎英(よしひで)氏(56)、新日本婦人の会県本部会長の稲垣豊子氏(69)=共産推薦=、元県職員の新田雄司氏(36)と、5選を目指す無所属現職の古田肇氏(73)の4人が立候補を届け出た。自民党県連内の支持は江崎氏、古田氏で分かれており、激戦となる見通し。24日に投開票される。知事選で保守分裂となるのは1966年以来、55年ぶり。4人の立候補は58年と77年に並び過去最多。女性の立候補は初めて。感染拡大が深刻化する新型コロナウイルス対策や、古田県政4期16年の評価が争点となる。古田氏は現職知事としてコロナ対策を継続するとして、街頭活動や集会などの活動に参加しない方針を示しており、異例の選挙戦となりそうだ。立候補の受け付けは午前8時30分から県議会棟で始まり、届け出順は抽選で、江崎氏、稲垣氏、新田氏、古田氏と決まった。江崎候補は、岐阜市の選挙事務所隣の屋外駐車場に約700人(陣営発表)を集め、「コロナは性質を知り、正しく対策すれば必ず終わる。不安を払拭(ふっしょく)し、岐阜から実証していこう。変えれば、変わる。新しい時代をつくるため、ワンチームで戦い抜こう」と訴えた。
美濃加茂市に選挙事務所を構える新田候補は、立候補の届け出後に県庁前で第一声。「子育てしやすいまち、誇れる仕事があるまち、安心できる福祉のまち―の三つの柱を掲げ、県民の手に安定した県政を取り戻す」と声を張り上げた。古田候補は出陣式を行わず、岐阜市の選挙事務所で選挙対策本部の役員らと記者会見した。新型コロナ対策に全力で取り組む姿勢を改めて示した上で、「何としても県民の皆さんの命を守るという初心を貫きたい」と強調。選挙カーを見送り、公務に戻った。選挙人名簿登録者数(6日現在)は166万5588人(男性80万5037人、女性86万551人)。前回2017年の知事選の投票率は36・39%で、過去2番目の低さだった。
岐阜県、12日に緊急事態宣言要請へ 愛知と連携
古田肇岐阜県知事は11日、愛知県とともに12日にも政府に対して新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令を要請する考えを示した。深刻な感染拡大と医療提供体制の逼迫(ひっぱく)を受けて判断した。古田知事は「愛知県と緊急事態宣言の地域指定に向けて連携して進める。(政府への要請は)可及的速やかに行いたい」と説明した。
9日には1日当たりの発表数としては過去最多の105人が感染し、病床使用率は10日時点で宿泊療養施設を含めて50・6%に上った。県では独自の非常事態宣言を9日に発表し、酒類を提供する飲食店を対象とした営業時間短縮要請を午後8時までとして2月7日まで延長したほか、病床拡充などの対策を進めている。非常事態宣言発表時には、愛知県と政府に緊急事態宣言の対象地域とするよう要請する方針を示していた。
愛知県の大村秀章知事は11日の民放番組で、岐阜県と政府に緊急事態宣言を12日に再発令を要請する考えを明らかにした。これを受け古田知事は「県としては緊急事態宣言に匹敵する対策を展開している。愛知県とは経済、生活圏が重なっている。足並みをそろえて取り組みたい。政府に対しては県の状況や問題意識、対策を伝えていく」と述べた。
また、12日に愛知、三重両県知事と3県知事会議を開き、感染状況について情報や意見を交換する意向も示した。