菅義偉首相の退陣意向表明により、衆院選の投開票は十月三十一日以降との見方が強まっている。その場合、日曜が慣例となっている投開票日の選択肢は五つとなる。衆院議員の任期満了は十月二十一日に迫る。公選法の規定により、最も遅い投開票は十一月二十八日。新首相は政治日程や、与党に有利なタイミングを見極めながら判断するが、任期満了を超えての衆院選となれば異例の事態となる。..中日新聞読者の方は、無料の会員登録で、この記事の続きが読めます。会員登録する
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1年前、「国民のために働く内閣」を掲げて政権を発足させた菅義偉首相。実際には国民の方を見ず、新型コロナウイルス対応などを独断で進め、国民の信頼を失った。異論に耳を傾けない「1強」政治の手法を安倍政権から引き継ぎ、国民に説明しない政治を続けた帰結として、政権が行き詰まったと言える。安倍晋三前首相は7年8カ月にわたった在任中、国政選挙で勝利を重ね、野党にも自民党内にも強敵がいない「1強」体制を構築。意見が異なる相手を敵視する手法で分断を広げながら、違憲の疑いが強い安全保障政策などを進めた。安倍路線を継承した菅首相も、似た対応を繰り返した。新型コロナ拡大による緊急事態宣言下で、世論や専門家が強い懸念を示したのに東京五輪を開催。日本学術会議の任命拒否問題で明確な理由を説明しないなど、国民の納得を得て政策を進める姿勢に一貫して欠けていた。今、緊急事態宣言の効果が薄れて感染が収まらず、入院できずに自宅で亡くなる人が相次ぐという悲惨な現実がある。政府と国民が一体となって危機を乗り越えなければならない局面で、国民と信頼関係を築けていない罪は軽くない。取り戻さなければならないのは、国民に自分の言葉で正直に話し、手間暇をかけて納得を得ていくやり方。つまり民主主義に基づく政治だ。まず自民党は、「とにかく『選挙の顔』を代えよう」ではなく、なぜ国民の支持が離れたのかに向き合わなければならない。