最後まで的外れな政権だ。菅首相が9日の会見で19都道府県の緊急事態宣言を今月末まで延長すると発表。併せて10~11月の早い時期に希望者全員のワクチン接種が完了する予定とし、「それに向けて制限を緩和していく。飲食、イベント、旅行などの社会経済活動の正常化の道筋を付けていく」と行動制限の緩和も打ち出した。
全国的に新規感染者数は減少傾向。解除期限の9月末を迎えるにつれ、さらに減少し、医療逼迫も解消されれば、行動制限の緩和も視野に入る。医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が言う。
「新型コロナウイルスの流行は人流よりも、夏と冬に流行する『季節性』に依存します。昨夏の流行は8月のお盆の時期から感染者数は減り、9~10月半ばが底でした。今年の流行も同じような動きをしており、夏の流行は収束しつつあります。緊急宣言の延長の効果ではありませんが、今月末ごろの感染者数はかなり減少している可能性があります」問題はその先だ。夏の流行よりもはるかにスケールの大きい冬の流行が近づいてくる。昨年冬の大流行(第3波)は10月の後半から感染者が急増し、年明けにピークを迎えた。10月1日にGoToキャンペーンが東京にも適用され、人流が増えた結果、第3波を招いたとされているが、季節性もかなり影響したとみられる。
「コロナの季節性変化は予想できることです。政府がすべきは流行の時期には徹底的に感染防止対策を実施し、流行が過ぎれば規制を緩和することです。ところが、菅政権は、夏の流行の収束期に緊急事態宣言を延長し、冬の流行が立ち上がる11月に行動制限の緩和をしようとしている。まったく的外れなタイミングです。11月以降の冬の流行が、行動制限の緩和によって感染が拡大したように見え、再度、宣言を発令する事態になりかねない。これではいつまでたっても、感染を抑えることも社会経済活動を再開することもできません」(上昌広氏)
大混乱の秋になりそうだ。