★統一地方選では忘れてはならない争点がある。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題だ。教団は各地の自治体や地方議会にも浸透してきた。影響力の排除には有権者の厳しい監視が欠かせない。
政治と教団の関係は、昨年七月の安倍晋三元首相銃撃事件で再び表面化した。接点は国政に限らない。むしろ濃密な関係は地方政治の現場で築かれてきた。
共同通信の昨年十一月の調査では、教団側と接点のあった都道府県議員は少なくとも三百三十四人に上り、自民党が八割を超す。知事も十三人が関係を認めている。
関連団体の国際勝共連合は一九七〇年代、革新自治体に対抗する保守勢力の選挙応援に奔走した。関連団体はその後も、各種の教団系イベントの後援などに自治体や地方議員を巻き込んできた。
政策面でも影響力を行使してきた。家父長制的な家族観に基づく家庭教育支援法制定に向け、まず自治体での家庭教育支援条例づくりに注力。選挙応援などを受けてきた地方議員らが提案し、条例は十県六市で制定されている。
岸田文雄首相は昨夏、自民党と教団との関係断絶を明言。統一地方選でも選挙が行われる四十一の党地方組織のうち、二十七組織が候補者に教団との関係を断つ宣誓書の提出を求め、残る組織にも党の通知を周知したとしている。
しかし、党の地方議員と教団との関係の調査は拒んでいる。国政でも教団の名称変更の経緯は解明されず、解散命令請求も結論を先延ばししている。これでは関係断絶の決意を疑わざるを得ない。
曖昧な姿勢を突くように、教団側は強気に転じている。複数の地方議会に対し、教団や関連団体との関係遮断を宣言しないように信者らが陳情したり、議会が関係断絶を決議した自治体に対しては撤回を求めて提訴している。
文部科学省にも解散命令を請求しないよう申し入れ、霊感商法などによる被害の回復を巡る集団交渉についても後ろ向きだ。
この間、全国霊感商法対策弁護士連絡会や「宗教二世」らは統一地方選での教団の関与に警鐘を鳴らし、地方議会に教団との関係を精査するよう求めている。
この五十年以上、教団問題は断続的に世間の関心を集めては忘れられ、その結果、悲劇が繰り返されてきた。今回の選挙を悲劇に終止符を打つための起点としたい。
★ノーベル平和賞を受賞した人権活動家も実刑判決を受けた。独裁者が居座って市民弾圧を続ける限りベラルーシに未来はない。ルカシェンコ大統領は退場すべきだ。
二〇二〇年夏の大統領選で自分の当選を言い張ったルカシェンコ氏は、不正選挙に怒った市民を弾圧し、全土で盛り上がった抗議行動を力で抑え込んだ。
当局に拘束された人々の支援に当たった人権団体「ビャスナ(春)」の代表であるアレシ・ビャリャツキ氏も拘束され、昨年、獄中でノーベル平和賞を受賞した。
裁判所は三月、社会秩序の破壊を図った罪などでビャリャツキ氏に懲役十年の判決を言い渡した。
大統領選に野党勢力の統一候補として出馬したスベトラーナ・チハノフスカヤ氏にも、裁判所は懲役十五年を言い渡した。ただし、チハノフスカヤ氏は隣国のリトアニアに脱出している。
ビャスナによると、今も千五百人近い市民が投獄されている。ビャリャツキ氏はじめ市民の解放をルカシェンコ氏に要求する。
ベラルーシはルカシェンコ氏による三十年近い独裁体制によって行き詰まっている。弾圧を逃れたり、将来に見切りをつけたりして国を後にした人は多い。主要産業に育ってきたIT産業からの頭脳流出も目立つ。
本来ならば公正な選挙を経て正統性を持つ新大統領を選出し、出直しを図る必要がある。
ところが、民心を失ったルカシェンコ氏を隣国ロシアのプーチン大統領が後ろ盾になって支えている。市民の抗議行動で独裁政権が倒れるのは、明日はわが身かもしれないプーチン氏には許容できないのだろう。
気掛かりなのは、ルカシェンコ氏がプーチン氏の求めに応じてウクライナ侵攻に参戦しないか、という点である。
ベラルーシ国境からウクライナの首都キーウまではわずか百キロほど。昨年の侵攻開始時もベラルーシは出撃拠点になった。加えて、ルカシェンコ政権はロシアの戦術核の配備を受け入れる方針だ。
世論調査によれば、ベラルーシ国民の大半は参戦に反対している。ルカシェンコ氏は侵略戦争の片棒を担ぐべきではない。