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青紫の星のような小さな花を頭頂にたくさんつけた花を、Hさんからいただいたのは去年の四月ごろである。五月になって一本だけ花が咲いた。
ところで、せっかくの花だがHさんも私も名前を知らない。家にある花に関する本を総動員して調べたが、どの本にも載っていない。何度か、図書館の分厚い園芸植物図鑑なども見てみたがラチがあかない。苦闘のすえに出会ったのが、神保町のタキイ園芸で売っていた植物図鑑。そこでやっと見つけた。その名は、シラーぺルビアナであった。私はささやかな感動を夫に伝えると、
「聞いたこともないね。ぼくはシラノ ド ベルジュラックなら知ってるけどね」
ととぼけたことをいった。
シラーの仲間はたくさんあるが、このペルビアナは花茎が長く伸び散房花序の青紫の花をつける。地中海沿岸が原産地である。
水不足に弱いとあったので,日向に出して乾けばしょっちゅう水をやっていた。一年経った今年は、五本の蕾が立ち上がり見事に咲いた。
写真を撮り、ちょうど五月十日が誕生日のHさんにバースデー・カードにして送った。Hさんは大変喜んでくださったが、
「それにしても、お宅ではきれいに咲いているのに、なぜ家のはひとつも咲かないのかしら。みんな、葉が寝ちゃうのよ。ヘンね」
と不思議がられた。
「それは水不足ではないかしら。友人の畑のもそうだったから。植木鉢だと、すぐに乾くので、いつも水をやっていただけなんだけど」
と答えると、即座に、
「わかりました、愛情ね」
と言って笑った。(2001.5)
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