中央公園を歩いていると、地面にはセミ穴がいっぱい開いている。
でも、その割には抜け殻を見ないなあと思っていたら、ひとつ葉裏についているのがあった。
腰をかがめて見ていると、犬の散歩に来た女性のかたが、
「何か探しているのですか?」
「いいえ、セミの抜け殻があったので、見ていたんですよ。ここは、セミの穴がいっぱいありますね」
「ええ。でも今年は、こんなにある割には、あまりセミが鳴いていないって・・・」
朝、お掃除のおじさんから聞いたという話を彼女は続けた。
「セミの幼虫が穴から出てくるところを待ち構えていてね、鳩が、はしからみんな食べてしまうんですって」
この頃いやに鳩が集まっていると思っていたら、こんなことだったのか。
「長いことかかってやっと外界へ出てきたというのにね。一声も鳴けずに、飛べずに」
「カラスが小鳥のひなを襲ったりもしますしすね」
「自然界では仕様がないことなのかしらね・・・・」
「人間だって、いろいろな生き物の命を・・・・」
そんな話をして別れた。