中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

旧暦(陰暦、農暦)

2006-10-10 15:26:00 | 身辺雑記
 私が最後に勤務した学校におられたO先生が亡くなった。私よりも1歳年上だし女性だから、もう少し長生きされてもと思う。国語の教師で古典文学の造詣が深く、礼儀正しい賢い方だった。高校を退職されてからはある私立大学の教壇に立たれていた。私が勤務していた頃、この先生が何かの話の折に、日本の伝統行事は旧暦でするのが季節感に合っていいと思います、例えば七夕などは新暦ですると、まだ空気は澄んでいないので曇りが多くてよくありませんと言われたのが印象に残った。
 
 私が中国に関心を持つようになり、中国では年中行事には旧暦(陰暦)を使うことを知って、なおさらO先生が言われたことが理解できるようになった。中国では旧暦を農暦と言い、農業上必要な知恵の産物だった。中国の黄河流域で生まれ発達したもののようだから、日本の季節とはやや合わない点はあるが、それでも大まかには合っている。西安の李真がよく「立秋を過ぎたので涼しくなりました」と言っていたが、こちらは8月初旬で「立秋とは名ばかりの・・・」と挨拶に使われそうなまだ暑い時期だが、西安あたりではほぼ暦どおりなのだろうと思った。

 日本での春の節句となっている3月3日は「桃の節句」と言われるが、この節句のシンボルの桃は、この時期には自然界ではまだ咲かない。もっとも近頃では温室栽培のものがその頃に合わせて出回ってはいるが自然の姿ではない。旧暦では今年の3月3日は新暦の3月31日で、この頃にはもう春めいている。先日の中秋名月は「15夜の月」と言うが、旧暦(陰暦)は月の満ち欠けで日が決められるから、旧暦8月15日は新暦では8月8日で、「15夜」と言ってもぴんとこない。それにやはり15夜は先日の10月6日(旧暦8月15日)がいい。空は澄み渡り満月はことのほか美しく、涼しさが心地よい。

  ある衣料品販売企業の経営者が書いた本を読んだことがあるが、この人は衣服の仕入れ、販売は旧暦を基準にしていて、これだと無駄がないと言っていた。今年は旧暦では7月の次に閏7月と言うのが来て7月が長かった。こういう現象が販売の参考になるらしい。

 中秋節のことを書いたときにO先生のことを思い出していたのだが、思いもよらず数日にして訃報に接することになった。心からご冥福を祈る。