中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

異様な司法のあり方(2)

2011-02-22 09:27:55 | 中国のこと

 90年に仮釈放になったNさんは、90年4月に刑務所の職員によって刑務所に連れ戻された。刑期がまだ残っているからだと言う。Nさんが裁かれる根拠になった流氓罪は97年の刑法改正で、罪状範囲が曖昧だとして廃止されていたが、Nさんの罪状は消されなかった。留守宅に送られてきた刑務所からの通知では、「逃亡していた」とされ、懲罰として刑期を2020年まで延長するという決定になっていた。

 

97年にNさんと結婚した妻は「戻れとは一度も言ってこなかったではないか」と刑務所に訴えたが、刑務所から送られてきた反論は、「刑務所に連絡もせずにいて、これが逃亡でなくて何なのか。刑期延長は法規に沿った正しい決定だ。罪を認めて、心から悔い改めろ」というものだった。自宅療養は刑務所が認めたもので、管理責任のある近くの派出所に定期的に届け出をしていたし、住所を変えたこともなかったのにこの処置だ。いったい誰が、どのような法規に基づいて決定したのか。無法に等しいとやり方だ。これも党の決定とでも言うのだろうか。

 

再収監から7年近くたち、Nさんは14年間を獄中で生活したことになる。2020年まで後9年ある。その時にはNさんは56歳になり、老境に入りかけている。北京在住の人権弁護士の周沢氏は「刑期延長は不合理だ。法的に不公平な上、あまりにも残酷で非人道的だ」という訴えの文書を司法省に送ったが、何の回答もなく、刑務所側も沈黙したままだと言う。

 

ノーベル平和賞を受賞した作家の劉暁波氏は、「中国には法はあっても法治がなく、憲法があっても憲政はない」と言っているそうだ。中国には「法治」というものはなく、「人治」だと言われているのは知っているが、このNさんの例は、その典型のように思う。二十一世紀の世に、このようなことがあること自体唖然とさせられる。近代国家とは思われない。

 

いかに世界第2の経済大国と言っても、これでは古代王権国家のようではないか。三権分立は認めず、すべてが共産党の支配下にあるから、もちろん民主国家ではない。それにしても、かくも人民を虫けら同然に恣意的に扱うことが、やがては国家にどのような結果をもたらすかは、歴史を重んじると言う中国の指導者に分からないはずはないと思うのだが。一部の富裕層の人間だけが国民ではない。それとも13億の国民の幸福に配慮することは今の政府には、手に余ることなのだろうか。