チョウは美しいものとされて衣服や絵画などさまざまのものに描かれているが、どうしたものか妻は大嫌いで、ほんの小さいのが飛んできても悲鳴を上げて逃げ回っていたのがおかしかった。幼い頃によほど怖い思いをしたことがあったのだろう。
胡蝶文様唐織
蝶文様の帯
名古屋帯
身近にいる昆虫で私が最も嫌いなものはゴキブリだ。姿を目にしただけで不愉快になり、手元にゴキブリ専用の殺虫剤のスプレーがあると、これでもかと言うくらい噴霧する。上から見ても油染みて嫌なものだが、たまに真横から見ることがあり、これまたSF映画にでも出てきそうな奇怪なものだ。子ども達がまだ幼かった頃、夜中に眠っている私の頬に何かが止まった。驚いて目が覚め手で払うと飛び去っていったのがゴキブリだった。その肢の裏の細かい棘の感触がなんとも言えないほど気味が悪く、翌日は授業をしていてもその感触が残っているような感じで何度も頬をさすったものだった。
次男が紹介してくれた本、長谷川英祐『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー)を読んでいる。アリは働き者の代表のようにされていて、イソップ物語にもキリギリスと対比されたりしているが、アリのコロニーを観察していると、働きアリの中には、ほとんど、あるいはまったく働かないものがいるそうだ。どうしてそのようなものが存在するのか、まだ読み出したばかりだがなかなか興味がある。
私が読んでいる本のページの表面を動き回っている小さな虫を見ていると、この虫が見ている世界はどんなものだろうと考えてしまう。どこでどのようにして生まれて、私の部屋に入ってきたのだろうか。どうやって相手を見つけるのだろうかなどと考えていると、ちょっといじらしくも思う。彼らの祖先は人類よりもはるか昔に地球上に姿を現した。古代の昆虫には巨大なものもいたらしい。それがどんどん繁栄していくうちに、このようなごく小さなものにもなった。これからどのように進化していくのか、昆虫は人類が滅んだあとでも生き残るだろうとも言われている。その頃にはどんな昆虫がいる、どんな世界になっているのだろうか。