中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

ネズミ

2011-10-16 13:30:21 | 身辺雑記

 長い間ネズミを目にしたことがない。以前はどぶなどで走っているのを見かけたことがあるが、少なくとも現在の家に来て約30年、家の中はもちろん、近辺でも見た記憶がない。

 

 昔は人家があればネズミは跳梁していた。私が幼い頃には、天井を駆け回るネズミの足音をしょっちゅう聞いたものだったし、柱などに齧った跡があったものだ。正月などは搗いた餅を部屋に置いておくと、いつの間にか齧られていて、母はその餅を食べる時には噛み跡を包丁で削っていた。食料の乏しい時代だったから。気持ちが悪いと捨てることはなかった。ネズミは家にいるのがあたり前の嫌われ者だった。

 

 ネズミは大まかに分けるとイエネズミとノネズミがある。普通人家やその近辺にいるのはイエネズミで、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの3種がいる。家の中を走り回っているのはクマネズミで、ドブネズミは下水などにいるが、下水管などを伝って家の中にも入ってくる。これらは体が大きく、英語でラットと言う。

 

 

                            クマネズミ

 

 

                            ドブネズミ

 

ハツカネズミはマウスと言うが、家の中にもいる小さいネズミだ。長男がまだ2歳くらいの時に、勝手に続く小部屋に座っていて、急に「チュウチュウがいたあ」と言って泣き出した。どうやらハツカネズミを見たらしい。ネズミはすばしこいものだが、ハツカネズミは特に敏捷で、あるとき生物準備室に入り込んだのを生物部員達が捕まえようと大わらわになって追い掛け回したが、まるで飛ぶように逃げ回ったので部員達は「スーパーマウス」と名付けた。捕まえたのかどうかは覚えていない。部員達は実験用にマウスを飼っていたが、これはアルビノという白いハツカネズミだ。部員達はマウスと言うと白いものだと思っていたようで、「スーパーマウス」のような野生のものは初めて見たようだった。

 

                          ハツカネズミ

 

 猫はネズミを獲るものとされているが、少なくとも今頃の飼い猫はネズミを獲ることはほとんどないのではないか。生物部員だったN君の、これも生物部員だった奥さんが、あるとき飼っている猫を叱ったら、翌日起きてみると枕元にネズミが置いてあったそうだ。どうやら叱られたお詫びらしいと笑っていた。我が家のミーシャは、セミやバッタを獲ったことはある。小さいスズメを獲ってきたこともあったが、まだばたばたしていたので逃がしてやった。おそらくミーシャはネズミを見たら怖気ついてしまうのではないか。「ネズミなどとることもなく猫は逝き」という川柳を見たことがあるが、ミーシャもその口だろう。

 

 ネズミを捕食するものにイタチやヘビなどがいる。幼い頃、天井裏で何か重いものを引きずるような音が聞こえた。しばらくするとチッチという、か細い声が聞こえたが、どうやらヘビが這っていってネズミを捕まえたらしい。家の中に入ってくるのはアオダイショウだ。

 

 

 

 ネズミを獲ってくれるのはいいが、アオダイショウはそれほど多くないから、どうしてもそれぞれの家でネズミ退治をしなければならない。ネズミを捕食すると言えば、前に雲南省の元陽の有名な棚田を見に行った時、農家の側に立っていたら、放し飼いにされた巨大な黒ブタが、これまた大きなネズミを捕まえて食べようとしていたのにはびっくりしたことがある。

 

私の父はネズミが入ってきそうなところを探して、板を打ち付けて塞いでいたが、そんなことをしてもネズミは齧って穴をあけて入ってくる。それでネズミ捕りの罠を仕掛ける。バネ式のものはネズミが仕掛けた餌をとろうとするとバネが跳ね返って押さえてしまうのだが、バネは強力でネズミは即死してしまう。血を吐いたりして後始末をするのが気味が悪い。それで金網で作った籠に餌を仕掛け、ネズミが入って食べようとすると蓋が落ちるようになっているのを勝手の土間などに置いておく。朝起きてみるとネズミがかかっているから、これを防火用水などに沈めて殺し、死んだら土に埋める。こうやってずいぶん獲ったものだが、何せネズミは繁殖力が強く鼠算式に増えるから、結局は人間の負けになる。

 

 

 よく見るとネズミは可愛い顔をしている。それで童画や漫画に描かれたりもするのだが、どうも私には不潔なように思われて嫌いだ。子どもの頃、どぶの水に濡れたドブネズミを見たせいかも知れない。大学時代に外部の先生を招いてネズミの解剖実習があったが、ネズミネに触るのが嫌だったし、必修ではなかったので欠席した。

 

 ネズミの話をすると切りがないから、このあたりでやめておこう。

 

  *写真はいずれもインタネットから。