動物の子ども、とりわけ生まれてしばらくの幼児はとても可愛い顔つきをしている。イヌやネコなどはもちろん、ライオンやトラなどの野獣の子どももまるで縫いぐるみのように可愛く、これがやがては顔つきも獰猛になっていくとは思えないくらいだ。もっとも魚類や両生類、爬虫類の子どもは可愛いとは言えない。カエルの子のおたまじゃくしは顔つきを見ても可愛い部類には入るが、哺乳類とはちょっと違う。鳥の子どもには鶏や鴨のように可愛いものがいるが、野鳥の雛にはひどく醜いのもいる。やはりほとんど例外なく可愛いのは哺乳類の子どもだろう。もっとも人によっては、イカの子どもであろうと何でもちんまりしているのはすべて可愛いと思う人もいるようだ
長男の家族と昼食をとったときに女子大生になっている孫娘に「動物の子はなぜ可愛いのかな」と言ったら、「大人から攻撃されないためよ」と答えた。この説はこれまでにも聞いたことある。動物の子どもがかわいく見えるのは、主に同種の大人から襲われないようにするためのデザインだというわけだ。もっとものようにも聞こえるが、実際には幼獣が成獣に殺されるという例はライオンなどにはあるようだし、それに動物が、私達が子どもを見て「可愛い」と思うのと同じ心情があるのだろうかと疑問にも思う。
野生動物が成獣になると顔つきが厳しいものになるのは、環境のせいでもあるだろう。イヌやネコは大きくなっても可愛い顔立ちのものはいるが、ノラになるとかなり目つきが悪い。家の近辺で時折、我が家のミーシャと体つきも毛並みもそっくりなネコを見て、はてなと思い名前を呼ぶことがある。そうするとこちらを警戒するように見つめるのだが、その目を見て、ああノラだったかと気づき、ミーシャもノラになっていたらこんな目つきになったのだろうかと思う。動物の子どもが可愛い(とくに目)のは、まだ浮世の風にさらされていないからかも知れない。