蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

銀河鉄道の父(小説)

2024年02月24日 | 本の感想
銀河鉄道の父(小説)

宮沢賢治の父:政次郎の視点で賢治の生涯を描く。映画を見てから読んだ。

「雨ニモマケズ」などの作品から、賢治ってストイックで清貧な人、という勝手なイメージを抱いていた。本書によると、古着屋と質屋で大金持になった父のオンボ日傘で育った、お坊ちゃまだったようだ。
もっとも宮沢家の史料が豊富なわけではなくて、大半は著者の想像によるものなのかも知れないが・・・

政次郎は、父から受け継いだ事業を大きく発展させ、利殖の才もあったみたいで、地方の大富豪みたいな感じだったらしい。しかし、金貸し(質屋)という生業に後ろめたさを感じていて、浄土真宗に帰依し、セミナー合宿?を費用を負担して定期的に企画する。
いつまであっても自立せず、なにかというと父にカネをせびる(このあたりは手紙が残っていてホントみたい)賢治よりよっぽど立派な人物のように思えた。

政次郎の父(賢治の祖父):喜助(宮沢家の事業の創始者)は、成績優秀だった政次郎の進学を認めなかった。「質屋には、学問は必要ねぇ」「本を読むと、なまけ者になる」というのが、当時の世間の常識だったらしい。
政次郎自身は、賢治を中学校に進学させ、さらにその上の農学校に入ることも認めた。その結果はまさに前掲の箴言?通り、「なまけ者」を作っただけだった、とも言えよう。
もっとも「なまけ者」つまりカネとヒマに恵まれた人がいないと、学問や芸術の発展はないのだろうが。

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