死の貝(小林照幸 新潮文庫)
山梨、岡山、福岡の一部地域には昔からその地域だけに見られる奇妙な病気があった。子供が罹患すると成長がとまってしまい、病状が進むと腹水がたまり、動くこともできなくなって市に至ることもある、というものだった。明治時代中期から西洋医学を学んだ医者たちが原因をさぐり、寄生虫によるものと見当をつけるが感染経路がなかなか判明せず・・・という内容のノンフィクション。初出は1999年。2024年に新潮文庫にはいった。
原因となる日本住血吸虫は、ミヤイリ貝(発見者の苗字から命名)を中間宿主として、水田などの流れが少ない水たまりから人間の足などにとりついて経皮感染する。
当初は飲料水から経口感染するという説が有力で、飲用の前に煮沸を徹底させたが効果なく、研究者たちの牛などをつかった対照実験で経皮感染すること判明する。
このプロセスにおいてある研究者は自ら実験台になって水田にはいったりする。この例が典型だが、研究に参加した医師たちは「なぜ、そこまでする?」と傍目には思えるほど熱心に原因追求と対策に取り組む。叙述は淡々としていて事実を並べているように見えて、その情熱が本からひしひしと伝わってきて、よくできたミステリのように、どんどん先が読みたくなる。
初出から25年近く経過した本を見出して、文庫に入れた編集者および出版社がすごいなあ、と思えた。
明治・大正期の話かと思っていたら、この病気の(日本での)終結が宣言されたのは、平成8年で、まだほんのちょっと前。ところが、中間宿主(であるが故に各地で絶滅をめざした)のミヤイリ貝は、今ではなんと絶滅危惧種とされているそうである。なぜ、ミヤイリ貝が山梨などのごく一部の地域にしか繁殖できなかったのは今でも解明されていない、というのも不思議な話だ。
山梨、岡山、福岡の一部地域には昔からその地域だけに見られる奇妙な病気があった。子供が罹患すると成長がとまってしまい、病状が進むと腹水がたまり、動くこともできなくなって市に至ることもある、というものだった。明治時代中期から西洋医学を学んだ医者たちが原因をさぐり、寄生虫によるものと見当をつけるが感染経路がなかなか判明せず・・・という内容のノンフィクション。初出は1999年。2024年に新潮文庫にはいった。
原因となる日本住血吸虫は、ミヤイリ貝(発見者の苗字から命名)を中間宿主として、水田などの流れが少ない水たまりから人間の足などにとりついて経皮感染する。
当初は飲料水から経口感染するという説が有力で、飲用の前に煮沸を徹底させたが効果なく、研究者たちの牛などをつかった対照実験で経皮感染すること判明する。
このプロセスにおいてある研究者は自ら実験台になって水田にはいったりする。この例が典型だが、研究に参加した医師たちは「なぜ、そこまでする?」と傍目には思えるほど熱心に原因追求と対策に取り組む。叙述は淡々としていて事実を並べているように見えて、その情熱が本からひしひしと伝わってきて、よくできたミステリのように、どんどん先が読みたくなる。
初出から25年近く経過した本を見出して、文庫に入れた編集者および出版社がすごいなあ、と思えた。
明治・大正期の話かと思っていたら、この病気の(日本での)終結が宣言されたのは、平成8年で、まだほんのちょっと前。ところが、中間宿主(であるが故に各地で絶滅をめざした)のミヤイリ貝は、今ではなんと絶滅危惧種とされているそうである。なぜ、ミヤイリ貝が山梨などのごく一部の地域にしか繁殖できなかったのは今でも解明されていない、というのも不思議な話だ。
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