2019年本屋大賞受賞作。離婚や死別を経て、気が付けば2人の母親と3人の父親の間を渡って育てられてきたひとりの少女の物語です。
本屋大賞受賞作は、これまでにも何度となく読んできましたが、心なしかふんわりとした小説が多いような気がします。読後感はさわやかで温かい気持ちが残りますが、よいお話すぎて、正直物足りなさを感じてしまうこともしばしばです。
本作も、これほど複雑な家庭環境で育ってきて、本人には葛藤や悩みはなかったのだろうか? どの親も問題なく、みんないい人だというのは望ましいことではあるけれど、そんなにうまくいくかしら?と思いながら読みました。
家族を作るって、実の親子であっても、ものすごく努力が必要なものだと思います。まして世の中では義父母や養父母による不幸な犯罪もよく聞く中、本作の親子関係は、なんとなく現実離れしているように感じてしまったのも事実です。
でもそうした生々しい現実社会を忘れて、せめて小説の中では、理想の世界があってもいいかもしれませんね。
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私はピアノが好きなので、ピアノや音楽が物語の重要な小道具として登場したのはうれしかったです。懐かしかったのは、アンドレ・ギャニオンの 「めぐり逢い」
アンドレ・ギャニオン「めぐり逢い」Andre Gagnon
アンドレ・ギャニオンはカナダ出身の作曲家。90年代頃、彼の美しいピアノ曲をよく聴いていました。BGMなどに使われることも多いので、耳にした方もいらっしゃるかもしれません。私は楽譜集を持っていて、当時よく弾いていましたよ。
今回知ったのですが、アンドレ・ギャニオンさんは2020年12月3日に83歳でお亡くなりになられたそうです。この場を借りて、ご冥福をお祈りいたします。