室生寺を訪れた後、次の目的地である長谷寺に向かう途中、どこかでお昼をいただくことに。例によって 車で走りながら Google Maps で探し、長谷寺の参道にあるお食事処「お抹茶・お食事 長谷路」さんに行ってみようということになりました
なんとも趣のある門構えのこちらの建物は、大正時代の建築で、登録有形文化財に指定されています。お隣の山田酒店さんと敷地がつながっていて、どうやら酒屋さんのご主人がご自宅ではじめられたお店のようです。
庭木が茂り、池に飛び石のある立派なお庭です。お昼の時間がとっくに過ぎているせいか、人の気配がなく「すみませ~ん」と声も掛けるも誰も出てきません。
やがて、呼び鈴代わりの銅鑼?のようなものを見つけてたたくと、ご主人が (おそらく酒屋さんの方にいらしたのでしょう) 出迎えて、離れになっている奥のお座敷に案内してくださいました。
お昼の食事のメニューは、お蕎麦のセット4種類の他、地元の三輪そうめんを使ったにゅうめんセットがありました。セットにはどれも、奈良名物の柿の葉ずし2個がつきます。ご主人自らお蕎麦を用意され、席まで運んできてくださいました。
夫と息子は「鴨なんセット」にしました。鴨肉に湯葉。斜め切りにした青ねぎの緑が目に美しいです。
私は山菜そばセットにしました。素朴でひなびた風情があり、なんとも滋味深くおいしかったです。
柿の葉ずしは、帰りの新幹線で必ず買うほどの大好物。柿の葉で包まれることで、おすしがぎゅっと締まり、なおのことおいしく感じられます。お店によっても多少の違いがありますが、こちらのは小ぶりで私好みでした。
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江戸時代から続く酒屋のご主人からうかがった話では、ここはもともと長谷寺があるから、というより、お伊勢参りに行く途中の街道筋の街として栄えたそうです。街の名前は長谷ではなく初瀬(はせ)、街道の名前は初瀬街道といいます。
もちろん当時はまだこの地に鉄道が通っていませんでしたから、旅人たちは初瀬街道を歩いて三重県松坂市へ、そこから南下して伊勢神宮を目指したのでしょう。
おかげ参りが大流行だった頃、今は静かなこの町も旅人がひっきりなしに歩いていたと想像すると、なんだか愉快な気持ちになってきます。
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長谷寺に参詣する間、快く車を駐車場に置かせてくださった親切なご主人。旅の出会いが、すてきな思い出となりました。