2018年本屋大賞第2位。将棋の世界を舞台に重厚な人間ドラマを描いた、長編ミステリーです。
柚月裕子「盤上の向日葵」(上) (下)
年末に実家を訪れた時に、偶然TVでやっていたドラマが思いの他おもしろく「砂の器」を思わせる展開にぐいぐいと引き込まれました。思わずタイトルをチェックしたら、後から原作があることを知り、読んでみたくなりました。
page turner とは、まさにこういう小説をいうのでしょう。私は将棋の知識はまったくないですが、それでも十分楽しめました。文庫版の下巻の初版が出版された際に、大量の誤植が発覚し、100カ所以上の正誤表が発表されたことも話題になっていたようです。^^;
中公文庫「盤上の向日葵」に大量誤植 先手と後手が逆 (朝日新聞デジタル)
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私は文庫で読んだのですが、静の上巻、動の下巻というくらいテイストががらりと変わっていて驚きました。上巻では、埼玉県の山中で名匠の将棋駒を抱いた白骨死体が発見され、事件の核となる駒の持ち主を探る2人の刑事の物語と
将棋界に彗星のように現れた異端の天才棋士、上条桂介の不幸な生い立ちの物語とが交互に進行していきます。砂の器のセオリーから、桂介が事件に関わっているであろうことは容易に想像がつきますが、下巻での一筋縄ではいかない結末にうなりました。
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下巻の中で私が一番好きな場面は、東京大学に入学した桂介が将棋部を訪ねるところです。私はなぜか「シェーン」のような西部劇を思い出しました。
はぐれもののガンマンが、荒野の酒場を訪れると、そこでは荒くれどもが遠巻きにこのガンマンを値踏みしている。やがてリーダーがガンマンに勝負を挑むと、仲間の一人がリーダーに近づき ”手加減してやれよ” とそっと耳打ちする... そんな場面が思い浮かびました。
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でも私は、この後に登場する真剣師、東明重慶のことはどうしても好きになれなかったです。彼には小池重明という実在のモデルがいるそうで、人間としてはクズだけど、棋士としてはどうしようもなく魅力的な人物ということになっていますが
いやいや、人間としてクズというだけで、私としては受け入れられませんから。^^; 桂介が東明に出会わなかったら、彼はもっと違った人生を歩んでいたのではないか、と思わずにはいられませんでした。
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私にとって将棋というのは、冷静沈着、知的な頭脳ゲームというイメージでしたが、実は格闘技のような激しい世界もあるのだということを、この作品によってはじめて知りました。
特集「将棋」を読む で、作家の黒川博行さんと柚月裕子さんの対談があったので図書館で借りてきました。小説を読んだ後のデザート感覚で、こちらも楽しめました。
将棋は実はかなりハードな格闘技らしいですよね~
私などは秋ごろハマっていた「3月のライオン」のアニメと実写映画でしか知らない世界ですが、長時間の対戦と張りつめた神経に身体を壊す人もいるように描かれていました。
将棋を指す物語が文章でどのように「動」になっていくのか興味あります~
あと、天才的なプレーヤーの設定はとかくクズだったりしますね(笑
>将棋は実はかなりハードな格闘技らしいですよね~
そうなんですね。
羽生さんや藤井さんの印象が強く、静かに熱い戦いを思っていたので
こんなにも激しいと知って驚きました。
真剣師というのはお金をかけて戦う棋士のことで
下巻では、将棋に対して抱いていた優等生的なイメージが
ことごとくくつがえされました。
>天才的なプレーヤーの設定はとかくクズ
そうなのですね~
天才ほど、ありきたりの勝負では
飽き足らなくなってしまうものなのかもしれませんね。
中でも「佐方貞人シリーズ」は、大好きです。
柚月裕子さんは、岩手県で生まれ、高校を卒業された頃に父親の転勤で山形に移り、その地にて21才で結婚。
二児に恵まれて専業主婦。現在も山形にお住まいのようですが、
こんな経歴の方が、将棋界のこと、広島ヤクザの話や法曹界、警察内部の話など、よく書けるものだと本当に感心します。
「盤上の向日葵」は、読んだ後にテレビを観ましたが、セレンディピティさんの鋭い文章、頷きながら読ませていただきました。
以前、にゃんにゃんさんのコメント欄で柚月裕子さんのことを話題にされていたことがあるので、ファンでいらっしゃるのかな?と思っていました。
私は今回が初めての柚月さんの小説でしたが、とてもおもしろかったです!
映画化もされた「孤狼の血」も柚月さんの作品なのですよねー。
男性的なテーマが多いという印象ですが、私もどちらかというとこういう小説が好きなので、これから少しずつ柚月さんの小説を読んでみたいと思います。
「坂田貞人」は弁護士のシリーズなのですね? こちらも気になります♪
盤上の向日葵、ドラマの方はたまたまちょっと見ただけですが
それだけで十分におもしろさが伝わってきました。
ちょこっとこちらにコメント残させて下さいね。
私もドラマ版を、なんとなく多分1話目の途中から?見て引き込まれて、その後原作を読んだという流れでした。
>真剣師、東明重慶のことはどうしても好きになれなかったです。彼には小池重明という実在のモデルがいるそうで、人間としてはクズだけど、棋士としてはどうしようもなく魅力的な人物ということになっていますが
そうなのよー。私もコレ同じでした。
いけ好かない人間だったわー。
なんでこんなヤツについてっちゃうの?!って、そこが解せなくてね。小説読んだら少しその辺りが解るかも・・と思ったけど
わ~い、古い記事にコメントを残してくださってありがとうございます。
latifaさんも本作は、ドラマの途中から原作、という流れだったのですね。
ドラマも(ごく一部を見たのみですが)おもしろかったですよね。
なんとなく砂の器を思い出させる深くて重い人間ドラマで
私はこういうタイプの小説が好きなんだろうなーと思います。
latifaさんもやはり東明重慶がお嫌いでしたか。
不幸な少年時代から這い上がってきたのだから、こんな男にかかずっていないで、陽の当たる場所で生きて欲しい、と痛切に思いましたが、ふつうの甘っちょろい人生では飽き足らなかったのかな~なんだかとっても残念に思いました。