@人は環境次第で変わる。だがその背景次第では変えたくとも変えれない事もある、とはこの小説。国籍の違いから考え方の違いは思った以上に解離がある。商習慣の違い、生活環境の違いはその典型的なものかもしれないが、国籍の違いで思うままにならない事も多くある。現実、日本人はそうは思わなくとも海外からの移住者・定住者にとっては日本のハードルは相当高いと言う。日本は外国人に対して冷酷な国なのか、島国の日本、これからの国際化の波にしっかり歩調をとって欲しいところだ。
『蔭の棲みか』玄月
- 第122回(平成11年度下半期) 芥川賞受賞 ソバン翁の右手首は、戦争で吹き飛ばされた。朝鮮人の元軍人が補償を求めて提訴したことを知り、過去が蘇る。芥川賞受賞作他二篇
- 「影の棲みか」朝鮮・韓国からの安い日雇い労働者団地に住む一人の老人ソバン。数百人を超えるその団地での様々な事件、問題を抱えた歴史を知るソバンがいた。朝鮮から来てこの団地で財産を稼いだ主と一部住民が賃金のことで対立、騒動を起こす。中国人が騒動を起こしたと密告で警察が立ち入るが警察と主が賄賂で繋がっており刑事事件にはならない。ところが団地そのものの解体が始まる。
- 「おっぱい」子供は絶対いらないと言う朝鮮人女性と日本人の青年が結婚、ある日、韓国籍の恩師とその盲目の娘を家に招く。盲目の娘は結婚した女性と仲良しで、恩師に対しては金銭的な支援しており相当な尊敬の念を持ってのもてなしをしていた。2年後、今度は盲目の娘の赤ちゃんも一緒に連れて訪問する。夫婦は娘の巨大な母乳を見て圧倒、母親の強さを感じた。2年前の娘と母の差を感じた。その後夫は子供はいらないという妻に心変わりするのかと期待したが「あんたの考えていることなんて、みんなわかっているのよ。私をなんだと思っているのよ。甘く見ないでよ。あんたが思っているようには、絶対にならないからね。」とピシャリ。