@未成年の犯罪は殺害事件でも刑罰が軽い、だが殺された家族、残された家族は生活が乱れ、犯人の年齢に関係なく一生憎悪が募る。犯人が悔いを新ため出所後にどのように暮らそうと「許すことができない」のだ。そんな人間はどのようになれば許されるのか、残された家族の思いそのものの小説の主旨が心を突き刺した。 法的解決は残された家族に「無念さ」だけが残る。これは決して具体的な解決策があるわけではない非常に厄介な問題だ。
『悪党』薬丸岳
探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。実は佐伯も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。
ー悪党
子供を殺された両親の恨み。殺したのは未成年で少年院で過ごした後、雇われ「振り込めザギ」を営んでいた。探偵の依頼で身元が判り両親は許せないその男に殺傷事件を起こす。半身不随になった男の彼女はその両親を恨み始めた。
ー復習
幼い二人兄弟が母親に見捨てられ、弟が餓死する。探偵に現在の母親の状況を確認すると妊娠しており、兄はその恨みをはらしたかった。親の愛情を受けないで育った子供として・・・
ー形見
未成年の息子が殺害事件を起こしたことで、母と姉は世間の厳しい目を縫い生き抜いてきた。息子は出所後も、社会の除け者暮らししかできない状態。そんな時、癌の末期の母が息子に最後に会いたいと切望したが・・・
ー盲目
一人の男に貢いで逮捕された女性、実は銀行員で真面目な女性が愛した男がいた。女性は断固として貢いだ先を告白なく刑期を終えても話そうとしない。その男は資金で商売を開始、結婚もしていた。(人を盲目に、ずるい人間)
ー慟哭
弁護士からの依頼で出所した男の今を調査する。その弁護士は昔姉を殺された犯人の弁護士だった。弁護士の仕事は犯罪人でも無罪を勝ち取る事、たとえそれが身内の事件でも・・・
ー帰郷
探偵捜査の為、盗聴器を設置して証拠を元犯人の家から盗み出すが、気づかれ打撲傷を負ったキャバ嬢、探偵の愛人。元キャバ嬢の過去を知ることで人の不幸が自分と同じに映った。
犯人はもう一人の仲間、姉を実際に殺害した男、を強請っており、やむなく逃亡を手助けすることに同意する。その後逃亡した男は他殺体で発見された。
ー今際
姉を殺した最後の一人の男が見つかった。それは末期癌で入院していた。その男を弁護した弁護士が現れ余命幾許もない病人の男に与えたのは、母親との面接だった。「母親を呼んだのは弁護士としての最後の情けですか」に対して「いいえ、私なりの彼への罰です」と弁護士は答えた。
「人を憎み続けることは苦しい。憎しみはやがて激しい焔となって、心の中を焼き尽くそうとする。そして烈火を人に向けるのだ」
「犯罪者に対する憎しみ。人を傷つけて平気な顔で生きている人間に対する憎しみ。それは手のつけられない火焔となり多くの人たちを不幸にする」
「犯罪の被害に遭った者にとって最も苦しいのは加害者が幸せに暮らしていること」
「憎しみは完全に消えることはない」
「たまには笑えるような仕事をしろ、いつでも笑ってもいいんだぞ。いや、笑えるようにならなきゃいけないんだ。俺たちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
「悪党は自分が奪った分だけ大切な何かを失ってしまうこともちゃんとわかっている。それでも歩いことをしてしまうのが悪党なんだ」