キランソウは低山の麓や、人里の湿った石垣などに普通に生えるシソ科の多年草で
山野草に少しでも興味のある人には比較的、馴染みの深い植物だと思います。
和名の漢字表記では、「金襴草」と「金瘡小草」の2種類が使われています。
和名の意味ははっきりしませんが、”キランソウ”と読めるのは前者の方で、金瘡小草は
漢方薬としての薬効を強調した名前のようです。
一説によると、この植物の薬効は驚くべきもので、一度は死にかけた病人も生き返ると
いう意味から「ジゴクノカマノフタ」という別名があります。
まあ、それ程の効果があるかどうかは別にして、主な薬効としては鎮咳、去痰、腫れ止め
虫さされ等で、生薬名では全草を乾燥させたものを「筋骨草」と呼んでいます。
キランソウ<シソ科 キランソウ属> 多年草
ヘクソカズラ(屁糞葛)とはなんとも強烈な名前を頂いたものですが、標準和名はヤイトバナのようです。
別名があまりにも強烈なので、今日では標準和名よりもこの名が普及してしまっています。
しかし、この別名も源流を辿ると、万葉時代には既に「くそかずら」と呼ばれていたようで、
万葉集に高宮王の「さう莢に 延ひおほとれるくそかずら 絶ゆることなく宮仕えせむ」の一首が
みられます。
「さう莢」は刺のあるノイバラのような灌木のことですが、その刺をも厭わず絡みついていく
ヘクソカズラのように絶えることなく宮仕えしましょう・・・という意味の一首だそうです。
宮仕えの厳しさ・・・今も昔も変わりませんね
追い打ちをかけるように「屁」が追加されたのは江戸時代のようですが、これはどうも悪ノリ?
のような気がします。
ヘクソカズラ <アカネ科 ヘクソカズラ属> 蔓性多年草
さて、ところでヘクソカズラの名は悪臭がすることに由来するものですが、花などに鼻を近付けて
嗅いでみても悪臭がするわけではありません。
しかし、実際にやってみたことはありませんが、揉んだりすると不快な悪臭があるようです。
この臭いの元は、細胞に含まれるペデロシドという物質で、昆虫などの食害を受けた場合、
メルカブタンメルカプタンという揮発性のガスに分解されて悪臭を発します。
これは、この植物の天敵に対する防御機構の一種ですが、これを逆手にとって利用する
昆虫がいるというから、自然は面白いものです。
カタカナで書くと15文字と、少し長い名前ですが「ヘクソカズラヒゲナガアブラムシ」という
アブラムシの一種はヘクソカズラの汁を吸うことによってペデロシドを体内に取り込み、天敵の
テントウムシに捕食されるのを防いでいます。
また、スズメガの一種ホシホウジャクは他の蛾類との競合のないヘクソカズラを食草に
することによって食草の独占を計っていると考えられます。
何れも植物と昆虫の生きるための知恵・・・知れば知るほど不思議という他ありませんね。
連日の猛暑続きであった今年の夏もようやく終息し、いよいよ本格的な秋が始まりました。
気が付けば来週の月曜日は早や10月・・・もうそんな時期なんですね~
田園都市とでも言ったらよいのか、都市化が進んでいるとはいえ、まだまだ農地の方が多く、
住んでいる地域を都会と田舎に分けてしまえば、やはり
田舎と呼ぶ他はないであろう我が城陽市・・・
良い点と言えば身近な自然を通して、季節の移り変わりを
肌身に感じられることでしょうか?
農地では特産の無花果や寺田芋と呼ばれるサツマイモなどが収穫期を迎えています。
この時期に市内の農地や小川の畔を歩いていていて
特に目に付くのが、道端の草に蔓を絡めて咲いている野生の朝顔です。
園芸種の朝顔は既に花期の終わりを迎えていますが、此方はこれから花の最盛期を
迎えようかというところ、11月の末頃までは花が楽しめそうです。
植物分類学的にはヒルガオ科サツマイモ属となり、サツマイモの仲間です。
アメリカアサガオ <ヒルガオ科 サツマイモ属>
名前からも分かるように、熱帯アメリカ原産の朝顔で、路傍の雑草やフェンスの金網 に
絡まって咲いているのをよく見かけます。
日本朝顔に似た青い花ですが、花柄は短く、花冠の径は3cm位、中間に肥厚した抱葉
が一対あるのが特徴です。葉は朝顔のように3裂したものと丸葉のものがありますが、
丸葉のものはマルバアメリカアサガオと呼んで区別されることもあるようです。
マメアサガオ <ヒルガオ科 サツマイモ属>
帰化種の朝顔では最も繁栄した種類ではないかと思います。
畑地、小川の畔、道路の分離帯、列車の線路沿いなど、比較的に水的条件に恵まれた
場所では圧倒的な繁殖力を見せています。
和名は「豆朝顔」で、花冠の径が約1.5~2.0cmと小さいことから名付けられたものです。
同属のホシアサガオとの相違点は、葯がやや濃いめの赤い色をしていること、顎が
肥厚していて種子ができると反りかえること、花柄に疣状の突起が見られること等で見分け
ることができます。(いずれも帰化植物です)
また、葉の形は朝顔ように3裂したものから丸葉まで多くの変異が見られます。
第2次世界大戦直後、野菜の種子や穀物に混じって上陸したと考えられています。
9月に入って、さすがに朝夕は少し涼しさを感じるようになりましたが、手紙の書き出しで
「朝夕はめっきり涼しくなりました・・・云々」と書くような状態でもなさそうです。
こんな時期を「初秋」と呼ぶべきか、それとも「晩夏」といったほうがいいのか・・・などと少し
悩むところですが、最近は通信手段の I T 化で手書きの手紙などほとんど見ることも書くことも
随分と少なくなりました。
こんな時、久しぶりに誰かに手書きの手紙をもらったりすると、何とも新鮮で飛び上がりたいほど
幸福な気分になれるから不思議なものです。
秋は手紙を書いてみるにはいいシーズンかもしれません。
ところで、街の公園などでは、キョウチクトウ、ムクゲ、サルスベリなどの夏の花が未だ元気に
咲いていて夏健在といった感じですが、山野では既に秋の草花が顔を出し始めています。
今日の画像は、木津川河川敷の草むらで見付けた可愛いスズメウリの花と果実です。
スズメウリ <ウリ科 スズメウリ属>
ウリ科の1年草ですが、蔓の先端が地中に潜って越冬することもあります。
果実は径が1cm程で、熟すると白くなり、カラスウリに対して、ずっと小さいことから
メハジキは夏の木津川河川敷で比較的、よく目に付く植物の一つです。
分類上はシソ科に属していますが、シソ科には珍しく、茎葉はヨモギのように深く3裂して
十字対生となっています。
和名は「目弾き」で、昔、子供達が茎を短く切ったものを上下の瞼で挟み、目を閉じて遠くへ
飛ばして遊んだことから来ているようですが、この遊びかたについて確信的に述べた資料が
見当たらないので、実のところ私にも良く分かりません。
地上部を乾燥させたものは漢方生薬名でヤクモソウ(益母草)と呼び、産後の止血や体力
低下の改善、利尿、子宮の収縮などに効果がある婦人薬として用いられます。
種類としては、メハジキの他にホソバメハジキと帰化植物のセイヨウメハジキなどがありますが
画像のものは、恐らくセイヨウメハジキだと思います。
メハジキ <シソ科 メハジキ属> 越年性2年草
市内の放棄耕作地に生えていた花です。
野草の図鑑にもあまり載せられていませんが、ヨーロッパ原産の帰化植物で、ヒレハリソウという
和名が付けられています。ヒレハリソウというと馴染が薄いと思いますが、昭和40年代頃には
健康食品としてブームとなった「コンフリー」と言えば知っている人も多いのではないでしょうか。
当時は、鉄分やビタミンCがホウレンソウの5倍以上も含まれ、葉は刈り取っても短期間に次から
次へと生え出す理想的なハーブ野菜として人気がありました。
またコーカサスの長寿村ではこのコンフリーが常食され、血液の浄化や老化の抑制に結び付い
ているというような話も、実しやかに流布していたようです。
ところが、2004年6月14日、厚生労働省は、海外でこのコンフリーを摂取することが原因で
肝障害(肝静脈閉塞疾患)が起こり、肝硬変や肝不全を起こす例が多発していることを理由に
コンフリー又はこれを含む食品の摂取を控えるよう注意を呼び掛け、食品としての販売を
禁止しました。これにより、健康食品は一転して有毒植物になってしまいました。
可愛い花に纏わる悲しいエピソードです。
ヒレハリソウ (ムラサキ科 ヒレハリソウ属) 多年草 別名コンフリー
ヘラオオバコはヨーロッパ原産の帰化植物です。渡来時期は江戸時代末期で、非意図的に
侵入してきた植物と考えられますが、帰化植物の中では比較的古参の植物と言えます。
在来種のオオバコと同じオオバコ科で、5月頃から蕾と共に花茎が伸び上がり、30㌢位から、長
いものでは80㌢程にもなります。円柱状の花序が下から順に咲き上がっていく姿は中々愛嬌が
あり、被写体としても面白く、私の好きな野草の一つです。
耐乾性に優れ、主に、国道の中央分離帯や、河川の堤防上などでの繁殖が目立ちます。
日本では外来生物法によって、「要注意外来種」に指定されていますが、ヨーロッパの
いくつかの国では、ワイルドハーブの一つとして、健康茶や自然薬として利用されています。
カワヂシャは5~6月にかけて本州中部以西の水田や水辺でみられるゴマノハグサ科
クワガタソウ属の越年草です。
主な特徴として、花は白色で淡紫色の筋のある小さな花を多数付け、葉には明確な鋸歯が
あり、花柄は直線的に斜上します。
近年、全国的に生息数が減少を続けていることから、環境省のレッドブック(RDB)で
準絶滅危惧種(NT)の指定を受けています。
カワヂシャ(川萵苣) ゴマノハグサ科クワガタソウ属 越年草
葉には明確な鋸歯があり、これは外来種のオオカワヂシャと見分ける最大のポイントで
花柄が直線的に斜上するのも本種の特徴
オオカワヂシャ(大川萵苣) 多年草 特定外来生物
一見、上記のカワヂシャによく似ていますが、鋸歯は細かく全縁に見えます。花はカワヂシャと
比較すると一回り大きく、鮮やかな青紫色、花柄は伸びるに従って、少し湾曲します。
在来種の準絶滅危惧種カワヂシャと交雑したホナガカワヂシャと呼ばれる雑種は
実験によって種を作る能力の有ることが確認され、自然界でも遺伝子撹乱を生じさせる
恐れがあることから、外来生物法によって、オオカワジシャは特定外来生物に指定され、栽培や移動が
禁止されています。