あれよあれよと言う間に10月に…
さて、前回給特法を話題にしましたが、教員の多忙化問題・働き方改革に関して、基本的なことはもう少しあります。それは、教員の働き方と労働基準法との関係です。忙しいのですが、そろそろまとめておいた方が仕事上よいので以下のようにまとめておきます。
さて、労働基準法は、労働者を対象とした法律です。国家公務員、つまり国立学校の教員には適用されません。地方公務員、つまり公立学校の教員には一部が適用されませんが、勤務時間などには適用されます。他方で、私立学校法人の設置する学校の教育職員、つまり私立学校の教員は適用対象です。私立学校も、教育基本法にあるように公教育の役割を果たすことが目的であって、営利的活動をする企業とは性質が異なります。とはいえ、そこでの勤務条件等は労働基準法に基づいていなければなりません。
労働基準法には、公私立学校教員の働き方に関して、以下のような重要な条文があります。
つまり、公私立学校教員は、1週間について40時間までの労働、1日8時間までの労働を原則として、1日の間に自由に使える45分または60分の休憩時間、1週間に1日休日を与えられるはずなのです。公立学校教員であっても、「公衆の不便」の中に子ども達や保護者の不便が入るとしても、労働時間や休憩は「労働者の健康及び福祉を害しないもの」である条件があります。
以上のような勤務条件を整えることは、使用者(つまり自治体または学校法人)の責任です。しかもこの使用者の責任は次のような罰則つきです。
なお、給特法で指示されていることの他に、労働基準法も次のような例外を定めています。
このように、公立学校はもちろんですが、私立学校法人も「臨時の必要がある場合」に労働時間の延長や休日労働をさせることができます。ただし、「行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において」という条件付きであることは注意したいところです。それから、労働組合または労働者の過半数代表者との協定(いわゆる三六協定)を結んで、行政官庁に届け出た場合にも、労働時間延長と休日労働をさせることが可能です。ただし、私立学校教員に対しては、これらの場合の残業・休日出勤に対しては、25%から50%の割増賃金を支払い、延長時間が60時間を超えた場合には50%以上の割増賃金を支払わなければなりません(公立学校教員は給特法のためこの規定は適用されない)。
つまり、公私立学校教員が残業や休日出勤をしなければならない場合というのは、基本的には、「臨時の必要がある場合」と三六協定の範囲内なのです。そのため、その仕事が本当に「臨時」なのかが重要ですし、労働組合や代表者と協定を結んだかどうかが重要です。もちろん公立学校教員については、先回紹介しました「限定4項目」も残業・休日出勤の基準です。
以上のように、公立・私立によって若干の違いはありますが、教員も労働基準法の適用を受けて働くことになっています。使用者は何でもかんでも命令できるわけではないですし、「子どものため」「社会のため」といった理念も教員の健康・福祉を害しない範囲で扱われるべきものです。残業・休日出勤は使用者が命じるものです。教員の多くは残業・休日出勤を日常的に行っていますが、実際には特に命令されたわけではない場合も多く、「自主的」に行っているという風に処理されてます。その残業・休日出勤が本当に「自主的」かどうかは、多くの場合、疑問が残りますが、教育現場ではそういう実態が続いています。
最近、働き方改革の呼びかけが浸透して、教育現場でも上記のような「自主的」残業・休日出勤が蔓延している実態を変えていこうと努力が続けられています。その成果はまだはっきりとは見えてきませんが、その努力は労働基準法の原則に基づいて進められることがまずもって大事でしょう。
さて、前回給特法を話題にしましたが、教員の多忙化問題・働き方改革に関して、基本的なことはもう少しあります。それは、教員の働き方と労働基準法との関係です。忙しいのですが、そろそろまとめておいた方が仕事上よいので以下のようにまとめておきます。
さて、労働基準法は、労働者を対象とした法律です。国家公務員、つまり国立学校の教員には適用されません。地方公務員、つまり公立学校の教員には一部が適用されませんが、勤務時間などには適用されます。他方で、私立学校法人の設置する学校の教育職員、つまり私立学校の教員は適用対象です。私立学校も、教育基本法にあるように公教育の役割を果たすことが目的であって、営利的活動をする企業とは性質が異なります。とはいえ、そこでの勤務条件等は労働基準法に基づいていなければなりません。
労働基準法には、公私立学校教員の働き方に関して、以下のような重要な条文があります。
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
第34条 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
3 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
第40条 別表第一第一号から第三号まで、第六号及び第七号に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、第32条から第32条の五までの労働時間及び第34条の休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
2 前項の規定による別段の定めは、この法律で定める基準に近いものであつて、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない。
2 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
第34条 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
3 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
第40条 別表第一第一号から第三号まで、第六号及び第七号に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、第32条から第32条の五までの労働時間及び第34条の休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。
2 前項の規定による別段の定めは、この法律で定める基準に近いものであつて、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない。
つまり、公私立学校教員は、1週間について40時間までの労働、1日8時間までの労働を原則として、1日の間に自由に使える45分または60分の休憩時間、1週間に1日休日を与えられるはずなのです。公立学校教員であっても、「公衆の不便」の中に子ども達や保護者の不便が入るとしても、労働時間や休憩は「労働者の健康及び福祉を害しないもの」である条件があります。
以上のような勤務条件を整えることは、使用者(つまり自治体または学校法人)の責任です。しかもこの使用者の責任は次のような罰則つきです。
第119条 次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
一 [略]第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条[略]の規定に違反した者
三 第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
一 [略]第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条[略]の規定に違反した者
三 第40条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
なお、給特法で指示されていることの他に、労働基準法も次のような例外を定めています。
第33条 災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
2 [略]
3 公務のために臨時の必要がある場合においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の五まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 [略]
3 公務のために臨時の必要がある場合においては、第1項の規定にかかわらず、官公署の事業(別表第一に掲げる事業を除く。)に従事する国家公務員及び地方公務員については、第32条から前条まで若しくは第40条の労働時間を延長し、又は第35条の休日に労働させることができる。
第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の五まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
第37条 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
このように、公立学校はもちろんですが、私立学校法人も「臨時の必要がある場合」に労働時間の延長や休日労働をさせることができます。ただし、「行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において」という条件付きであることは注意したいところです。それから、労働組合または労働者の過半数代表者との協定(いわゆる三六協定)を結んで、行政官庁に届け出た場合にも、労働時間延長と休日労働をさせることが可能です。ただし、私立学校教員に対しては、これらの場合の残業・休日出勤に対しては、25%から50%の割増賃金を支払い、延長時間が60時間を超えた場合には50%以上の割増賃金を支払わなければなりません(公立学校教員は給特法のためこの規定は適用されない)。
つまり、公私立学校教員が残業や休日出勤をしなければならない場合というのは、基本的には、「臨時の必要がある場合」と三六協定の範囲内なのです。そのため、その仕事が本当に「臨時」なのかが重要ですし、労働組合や代表者と協定を結んだかどうかが重要です。もちろん公立学校教員については、先回紹介しました「限定4項目」も残業・休日出勤の基準です。
以上のように、公立・私立によって若干の違いはありますが、教員も労働基準法の適用を受けて働くことになっています。使用者は何でもかんでも命令できるわけではないですし、「子どものため」「社会のため」といった理念も教員の健康・福祉を害しない範囲で扱われるべきものです。残業・休日出勤は使用者が命じるものです。教員の多くは残業・休日出勤を日常的に行っていますが、実際には特に命令されたわけではない場合も多く、「自主的」に行っているという風に処理されてます。その残業・休日出勤が本当に「自主的」かどうかは、多くの場合、疑問が残りますが、教育現場ではそういう実態が続いています。
最近、働き方改革の呼びかけが浸透して、教育現場でも上記のような「自主的」残業・休日出勤が蔓延している実態を変えていこうと努力が続けられています。その成果はまだはっきりとは見えてきませんが、その努力は労働基準法の原則に基づいて進められることがまずもって大事でしょう。