いま、もっぱら教材研究と論文執筆を同時並行に進めています。
さて、2015年度を迎える前に、2014年度後期の授業の総括をしました。もとは内部文書として書いたのですが、もったいないのでちょっと改訂してさらしておきます。
2014年度後期の「人間関係」「保育者論」「保育内容総論」では、アクティブラーニングの機会を取り入れるため、学生発表を中心とした授業形態に変えました。そこでは、学生を4~6名程度(保育者論は7~10名程度)のグループに分け、テキストの当該箇所についてレジュメ(分量は自由)を作成させ、担当回を決めて毎回1グループにそれぞれ発表させました。講義用HPを作ってそこにレジュメを前日までにアップし、授業中はiPad(本学では33期生から全員貸与)を使って参照します。発表担当ではない学生は、テキストの当該箇所や発表レジュメを読んできて、発表後に質疑を行ったり、自分なりのノートを作成したりします。初めての試みだったので、時間配分は試行錯誤して後期の間にかなり変動しましたが、最終的には以下のような配分に落ち着きました。
00~15分 テキスト・レジュメ・ノート確認、発表最終打合せ
15~55分 レジュメ発表
55~90分 質疑応答、グループ話し合い、補充説明
最初の15分は、発表を聴くポイントを各自に作らせるために設けた時間で、何回か発表形式の授業を進めてから新たに設けました。当初の学生の様子を見るに、発表中何を聴いていいのかわからない雰囲気でした。学生によっては事前学習を行っていなさそうな者も見受けられたため、必要に迫られて設けたものです。この時間を設定してから後は、発表中に放心状態になっている学生が著しく減りました。
レジュメ発表は、最大40分与えましたが、20分程度で終わってしまうグループも複数ありました。グループによって取り組み姿勢や内容の理解度に差があり、グループメンバーの理解度が低いままで発表すると、フロア側の学生に不満や誤解が出やすかったです。その場合、発表内容だけでなく、質疑応答も不十分になります。発表者の理解度が変動する要因は様々あるようですが、テキストの読み込みや、テキストだけでない追加の調査研究、レジュメ作成などの事前学習にどれだけ時間と労力をかけているか、で明らかに変動していたことははっきりわかります。私の研究室に何度も足を運んでくるグループ(またはメンバーの一部)は、比較的、発表内容の質が高かったです。となれば、どれだけ熱心に事前学習に取り組めるように仕向けられるかが、私の工夫のしどころでしょう。シラバスや後期前半の授業でやり方を伝えたのですが、授業評価アンケートで、事前事後学習のやり方がよくわからなかったと答えた人が数名いたので、今のままではいけないかなと思います。
この授業形態では、発表グループ以外のフロア側の学生の学習についても、考えておかなければなりません。そこで、発表中の思考を促すために、ノート作成を課しました。しかし、最後に集めてチェックしたところ、レジュメを表面的になぞったり抜き書きしたりしただけの学生や、もっと書けそうなのにいい加減に済ましてしまっている学生がいるような印象を受けました。思考やノートづくりを支えるために、ノートのパフォーマンス課題について最初に示し、何を書いていったらいいかわかるようにしてやることも必要かな、と今は思っています。
質疑応答では、最初は学生たちも自主的に質問していましたが、後半にいくにしたがって授業者が当てないと質問しなくなりました。考えなくなったのではありません。学生の近くに寄って聞き耳を立てると、いいつぶやきをしていることがありました。つぶやきを拾ったり、目線を見ながら発言を促したりしていきましたが、埋もれた質問も多かったと思います(最後に提出させたノートにはいくつかよい質問メモもありました。もったいない…)。適宜、授業者が改めて発問し、意見や疑問を引き出したり、揺さぶったりしましたが、いくら時間をかけても発言が出てこず、私自身が答えを言わざるを得ない場合も多くありました。私が発言しすぎたことも、学生たちの質問が積極的に出てこなくなった原因だと考えています。ICTの活用も含めて、学生の疑問を引き出すための改善余地はたくさん残っています。
以上のような授業形態には、課題は残っていますが、成果もあったと確信しています。私の実感としても、学生のノートを見ても、一方的な講義よりも学生の思考が明らかに活性化していました。もっと効率的・効果的に学生の思考を活性化させるため、さらなる改善を積み重ねたいと思っています。たとえば、学生が追究したくなる新しい教材の開発や、十分な事前学習時間や個別指導時間の確保、事前事後学習のポイントや参考文献の事前紹介、ICTの活用による質疑応答の活性化、ノート作成やレジュメ・発表方法のパフォーマンス課題の明示などです。また、ほかの科目でもアクティブラーニングを取り入れている科目はあるため、それらの科目との関係を意識できると、より効果は上がると思います。ほかの科目における経験をそのまま活用するだけでなく、さらに学生の思考を深めるように発展させるためにも、ほかの科目(とくに私の科目の前に開講されている科目)でどのような取り組みをしているか、さらに勉強させてもらいたいです。
ただ、ちょっと気になったのは、学生授業アンケートの結果を見る限り、前期と後期の科目(同じ学生対象)で、学生たちの「到達目標を達成した!」という達成感がよくも悪くもなっていないことです(前期はスタンダードな講義でした)。上記の形態で授業をして、「アクティブラーニングをした!」と実感した学生は大幅に増えて良かったのですが、到達目標に対する達成感を感じた学生は変わっていなかったのです。「到達目標を達成できたか?」という問いに対して9割以上の学生が「とてもそう思う」「そう思う」を選んでくれ、「まったくそう思わない」はゼロだったので少しホッとしましたが、「とてもそう思う」「そう思う」「そう思わない」の割合は変わらず、がんばったわりにううん…という結果でした。単に、後期の授業形態がうまくいかなかっただけ、かな? まあ、来年度また頑張ります。