日本では、そろそろ就職・採用試験の結果が出始めるころだと思います。大学によって有無や時期は異なりますが、多くの大学4年生はこれから卒業論文の仕上げにかかります。就職する人は卒業するために、大学院進学を希望する人は進学後の研究準備のために、それぞれ仕上げていきます。これまでのレポートとは違った分量の論文を初めてまとめるために、投げ出しそうになると思いますが、頑張ってください。
卒業論文の執筆は、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」という大学の目的(学校教育法第83条)を達成するための重要な学修活動です。卒業論文は、深く専門の学芸を研究する活動の総仕上げであり、これを通して知的・道徳的・応用的能力を展開させることを目指します。なんとなく取り組むのではなく、この目的を達成することを目指して取り組んでくださいね。
卒業論文に取り組む中で、最低限、身に付けてほしい知的・応用的能力が一つあります。それは、課題設定の能力です。例えば教育史研究の卒業論文であれば、教育史研究で解決できる課題を設定する能力になります。教育史研究では、教育史研究で解決できる課題とそうでない課題を区別し、教育史研究で解決できる課題を選択・設定します。学術研究は課題解決の力を育てますが、課題解決はまず課題設定から始まります。課題解決は、適切な課題を設定できるようになって、はじめて取り組むことが可能になります。解決できない課題を設定して研究の意味を主張しても、それは妄想にすぎません。その状態で無理やり研究を始めても、結論(解決案)を出すことはできません。課題に合った研究方法を設定する、または研究方法に合った課題を設定してください。
課題設定の能力は、適切な課題を設定するために試行錯誤する中で身に付いていきます。ちゃんと指導を受けながら卒論を取り組めば、自然に身に付きます。ちゃんと卒論に取り組んだ人とそうでない人を分けるのは、このような適切な課題設定能力ではないかと私は思います。これはいかなる課題解決にも必要な力ですから、研究者になるだけでなく、よい社会人になるために必要な力です。適切な課題設定能力が身に付けば、大学卒業後に出会う、様々な課題に適切に取り組むことができるでしょう。
適切に課題を設定するにはどうすればよいでしょうか。例えば、教育史研究の卒業論文であれば、歴史的に優れた思想・実践を研究して今に応用すれば今の子どもがよくなるとか、教育実践が変わるとかいうように、直接的な実践的課題を設定することは残念ながらできません。歴史的な思想・実践を応用することは、歴史研究だけでは不可能であり、その思想・実践を適用する応用的な実践研究が必要になります。歴史研究と応用研究を混同すると、適切な課題を設定することができず、歴史研究としても応用研究としても不適切なものになるでしょう。歴史研究で解決できる課題とそうでない課題を区別せずに、自分の課題意識だけで研究を始めると、歴史研究でなくてもよい駄文が出来上がったり、根拠や有効性のない解決案(結論)を主張してしまったりします。そんな論文を私は卒業論文と呼びたくありません。
歴史研究の成果をそのまま応用することには慎重であるべきです。たとえ数十年前の思想・実践であっても、それはその時代・国・地域・学校・教室の出来事であって、今を生きる私たちの思想や実践と同一視することはできません。過去を生きた人々は、共通点をもつにしても、根本的に今の自分とは異なる存在であることを忘れてはいけません。安易に今の自分と過去とを同一視すると、研究は自分勝手な自己満足で終わったり、過去の冒涜になったりするおそれがあります。
もちろん、歴史研究に研究者や現在の課題意識をもちこまないことはできません。しかし、自分の課題意識と歴史的課題をそれぞれ区別し、歴史的事実をその時代の課題の中で正確に分析・評価することが必要です。教育史研究には教育史研究なりの「役に立ち方」があります。歴史的課題には、現在まで形を変えながら続く課題と、その時代で終始した課題とがあり、どちらも「役に立つ」のです。現在まで続く現代的課題に取り組むときも、過去の課題と現在の課題の違い(目的・内容や条件などの違い)に注意する必要があります。その時代で終始する純粋な歴史的課題であっても、研究を積み重ねていけば、現在まで続く現代的課題につながったり、現在と異なる「他者」となって比較考察を可能にする貴重な資料になったりします。
だから、あわてず、現在を生きる自分の課題意識だけで突っ走らず、自分の課題意識を見つめ直し、教育史研究でなければ解決できない歴史的課題を設定してください。
なお、歴史研究は、自分の課題意識を歴史研究でなければ解決できない歴史的課題と関連づけなければ、続けることはできません。自分の課題意識を歴史的課題に関連付けていく努力が必要です。
そのために、自分の課題意識を見つめ直し、先行研究や資料を読みながら鍛え直して、歴史研究でなければ解決できない歴史的課題との関連性を探っていきます。教育史研究でなければ解決できない歴史的課題が何なのかについては、自分で考えているだけでは、わかるはずもありません。歴史的課題は先行研究や資料の中に書かれてあります。課題設定と先行研究の調査整理、資料の調査分析を相互に関連しながら進め、循環させていくことは、研究では普通のことです。
自分の課題意識がどこにあるのかある程度考えてみたら、先行研究や資料を読んでください。先行研究や資料を読みながら、また自分の課題意識を見つめ直し、鍛え直しましょう。この循環を繰り返したどることで、課題設定の質は高まり、その能力も身に付いていきます。卒論に取り組む4年生の場合、今からだと時間に限りがありますが、課題設定に不備がないか、先行研究や資料を読むことが不足していないかよく見直して、今できること・やるべきことをやりましょう。
卒業論文の執筆は、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させること」という大学の目的(学校教育法第83条)を達成するための重要な学修活動です。卒業論文は、深く専門の学芸を研究する活動の総仕上げであり、これを通して知的・道徳的・応用的能力を展開させることを目指します。なんとなく取り組むのではなく、この目的を達成することを目指して取り組んでくださいね。
卒業論文に取り組む中で、最低限、身に付けてほしい知的・応用的能力が一つあります。それは、課題設定の能力です。例えば教育史研究の卒業論文であれば、教育史研究で解決できる課題を設定する能力になります。教育史研究では、教育史研究で解決できる課題とそうでない課題を区別し、教育史研究で解決できる課題を選択・設定します。学術研究は課題解決の力を育てますが、課題解決はまず課題設定から始まります。課題解決は、適切な課題を設定できるようになって、はじめて取り組むことが可能になります。解決できない課題を設定して研究の意味を主張しても、それは妄想にすぎません。その状態で無理やり研究を始めても、結論(解決案)を出すことはできません。課題に合った研究方法を設定する、または研究方法に合った課題を設定してください。
課題設定の能力は、適切な課題を設定するために試行錯誤する中で身に付いていきます。ちゃんと指導を受けながら卒論を取り組めば、自然に身に付きます。ちゃんと卒論に取り組んだ人とそうでない人を分けるのは、このような適切な課題設定能力ではないかと私は思います。これはいかなる課題解決にも必要な力ですから、研究者になるだけでなく、よい社会人になるために必要な力です。適切な課題設定能力が身に付けば、大学卒業後に出会う、様々な課題に適切に取り組むことができるでしょう。
適切に課題を設定するにはどうすればよいでしょうか。例えば、教育史研究の卒業論文であれば、歴史的に優れた思想・実践を研究して今に応用すれば今の子どもがよくなるとか、教育実践が変わるとかいうように、直接的な実践的課題を設定することは残念ながらできません。歴史的な思想・実践を応用することは、歴史研究だけでは不可能であり、その思想・実践を適用する応用的な実践研究が必要になります。歴史研究と応用研究を混同すると、適切な課題を設定することができず、歴史研究としても応用研究としても不適切なものになるでしょう。歴史研究で解決できる課題とそうでない課題を区別せずに、自分の課題意識だけで研究を始めると、歴史研究でなくてもよい駄文が出来上がったり、根拠や有効性のない解決案(結論)を主張してしまったりします。そんな論文を私は卒業論文と呼びたくありません。
歴史研究の成果をそのまま応用することには慎重であるべきです。たとえ数十年前の思想・実践であっても、それはその時代・国・地域・学校・教室の出来事であって、今を生きる私たちの思想や実践と同一視することはできません。過去を生きた人々は、共通点をもつにしても、根本的に今の自分とは異なる存在であることを忘れてはいけません。安易に今の自分と過去とを同一視すると、研究は自分勝手な自己満足で終わったり、過去の冒涜になったりするおそれがあります。
もちろん、歴史研究に研究者や現在の課題意識をもちこまないことはできません。しかし、自分の課題意識と歴史的課題をそれぞれ区別し、歴史的事実をその時代の課題の中で正確に分析・評価することが必要です。教育史研究には教育史研究なりの「役に立ち方」があります。歴史的課題には、現在まで形を変えながら続く課題と、その時代で終始した課題とがあり、どちらも「役に立つ」のです。現在まで続く現代的課題に取り組むときも、過去の課題と現在の課題の違い(目的・内容や条件などの違い)に注意する必要があります。その時代で終始する純粋な歴史的課題であっても、研究を積み重ねていけば、現在まで続く現代的課題につながったり、現在と異なる「他者」となって比較考察を可能にする貴重な資料になったりします。
だから、あわてず、現在を生きる自分の課題意識だけで突っ走らず、自分の課題意識を見つめ直し、教育史研究でなければ解決できない歴史的課題を設定してください。
なお、歴史研究は、自分の課題意識を歴史研究でなければ解決できない歴史的課題と関連づけなければ、続けることはできません。自分の課題意識を歴史的課題に関連付けていく努力が必要です。
そのために、自分の課題意識を見つめ直し、先行研究や資料を読みながら鍛え直して、歴史研究でなければ解決できない歴史的課題との関連性を探っていきます。教育史研究でなければ解決できない歴史的課題が何なのかについては、自分で考えているだけでは、わかるはずもありません。歴史的課題は先行研究や資料の中に書かれてあります。課題設定と先行研究の調査整理、資料の調査分析を相互に関連しながら進め、循環させていくことは、研究では普通のことです。
自分の課題意識がどこにあるのかある程度考えてみたら、先行研究や資料を読んでください。先行研究や資料を読みながら、また自分の課題意識を見つめ直し、鍛え直しましょう。この循環を繰り返したどることで、課題設定の質は高まり、その能力も身に付いていきます。卒論に取り組む4年生の場合、今からだと時間に限りがありますが、課題設定に不備がないか、先行研究や資料を読むことが不足していないかよく見直して、今できること・やるべきことをやりましょう。