教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

木目込人形-巳年

2012年12月31日 21時26分18秒 | Weblog



 今実家です。早速いろいろ使われまして、ゆっくりするどころじゃありませんでした(笑)。
 写真は母親が作った木目込(きめこみ)人形のへびです。毎年干支の人形を作ってまして、デザインが面白いので、こっそり毎年楽しみにしています。来年は巳年なので蛇。
 手前の人形も自分で作ったそうです。

 さて、今年は皆さんいかがだったですか?
 私の2012年は走りつづけた一年でした。忙しいのはいつものことなんですが、今年の忙しさはちょっと違ったように思います。他人から頼まれる仕事が急に多くなりました。そういう年齢・立場になったのかなあと感じます。頼まれごとは余り断らないたちだし、自分の仕事の締切もあったので、締切と締切が近くなりすぎて大変でした。一つの締切が終わったと思ったら次の締切が…を繰り返していて、マラソンみたいでした。どうにかこうにか走り切れて、依頼主にもそれなりに満足していただけた(と思いたい笑)ので、良かったです。
 後は、私家版テキスト『幼児教育保育学科用テキスト 幼児教育の理論と応用』の完成と出版決定、新規授業「教育原理Ⅱ」の模索、そして博士論文執筆の本格的な再開、といったところでしょうか。テキストは、実際に配布してみていろいろ課題を残し、その対策として出版を思い立ちました。幸いに協力者が現れ、今や校正段階までたどり着きました。
 新規授業は、このブログでも中間報告した通りですが、いろいろ苦労しています。しかし、「学生を本気で勉強させるにはどうしたらよいか」という問題について、真剣に考えるいい機会だったと思います。
 博士論文は、これまで構想は立ち、細かく研究成果は積み上げてきていても、まだ書けてないところがあるから書きあげられない、仕事が忙しくて書く余裕がないなどと言い訳をして、きちんと向き合って来なかったように思います。しかし、あることに気づいて、ゴチャゴチャやっている時間の余裕はもうないことがわかり、「尻に火がついた」状態になりました。今年、久しぶりに教育史学会で発表したのも、そのためでした。こんな時に、テキストが形になり、受け持ち授業もほぼ2年目以上になり、仕事にも慣れてくるなど、様々な点で執筆環境が整ってきたのは幸いでした。

 いずれも来年に引き続く課題であります。今年の成果を土台にして、必ずやり遂げたいと思います。

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年末もう終わっちまう

2012年12月29日 18時35分31秒 | Weblog

年末は博論の新節書いてます。やっと1節終わりそうです。
と思ったら、もう29日。31日には実家に帰りたいので、今年書けるのは明日で最後。うおお、日が経つの早すぎ…

明日は、1つ残っている校務も終わらせなければ。

あと、大晦日大雪になりませんように。(中国山地を越えられなくなるので)

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出版準備中のテキストについて少し

2012年12月24日 19時39分02秒 | Weblog

 どうも、出版準備中のテキストについて、少し情報をば。
 タイトルとシリーズ名、出版社については、よほどのことがない限り今後変わらないはずなので、情報公開しますね。

 現在、以下の2冊のテキストを社会評論社から出版準備中です。来年春までに2冊とも出版する予定です。なお、出版社は先輩からの紹介です。

 ① 白石崇人著『幼児教育とは何か』幼児教育の理論とその応用 第1巻、社会評論社。(入稿済)
 ② 白石崇人著『保育者の専門性とは何か』幼児教育の理論とその応用 第2巻、社会評論社。(二校済)

 定価はまだ未定です。内容は、シリーズ名にある通り、今年4月に私家版を作った『幼児教育保育学科用テキスト 幼児教育の理論と応用』を加筆訂正したものです。私家版のように1冊にまとめたかったのですが、価格が高くなりすぎるため、2冊に分けることになりました。2冊に分けたといっても、単純に半分にしたのではなく、2分冊化のために章節を再編成し、けっこう手を入れています。再編成後の章節構成については、また機会を見つけて公開します。
 なにやら最近、たまに、「テキスト出版、待ってます」というお声をいただきます。有り難いことです。
 がんばって出版にこぎつけます。

 

 イヴだというのに、という文言を書こうと思ったら、予想以上にさみしくなってきたのでやめました笑。

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ひとくぎり

2012年12月22日 23時54分46秒 | Weblog

 本日土曜補講を終え、今年の授業はすべて終了です。やっと一区切りつきました。

 あれこれ仕事が残っていますが、年末年始は何としても時間を捻出して、博士論文を進めなくては…
 博論については、大部分を今まで書いてきた論文を加筆修正・再編していくことで構成していきますが、そのほか新規に序章・終章と、新節を3つほど書かなければなりません。とりあえずこの年末年始は新節を少しでも形にしたいところ。3月の仮製本を目指したいと思っています。

 11月までも忙しかったのですが、12月に入ってからも、外から内から新しい仕事が飛び込んできました。楽しみかつ嬉しい仕事もあれば、「うっ…」というような仕事もあります。うわーん、来年もひたすら忙しくなるようです。
 今年は全体的な印象として、今まで来なかったような仕事が降って湧いてくる年でした。いったい何が起こったのやら…
 まあ、求められることはいいことだ。仕事を持ってくる人たちの期待に応えたい。

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忙しいときにやってはいけないこと:風邪をひく

2012年12月09日 21時49分04秒 | Weblog

 忙しいときに一番やっちゃあいけないこと。
 それは……風邪をひくこと。

 うぬぬ、風邪をひいてしまいました。木曜の昼くらいから調子が悪くなり、いろいろモチベーションは上がらないわ、作業効率も悪いわ。ろくなことありません。今日にいたっては体のところどころが痛み始めるし…
 ああ、こんなんで新しい週を迎えねばならぬとは。

 本日、雪も結構ふってきました。まだ積もりはしないと思って窓の外をのぞいたら、少し積もってるよ…。ああ、はやく春にならないかな。いや、やらなければならないことが山積しているので、いま春になっちゃあ困るか。

 すんません、弱音しか出なかった。身体の健康は、やっぱり精神状態も左右するなぁ。

コメント (2)
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教師は教科書を使いこなさなければならない

2012年12月02日 23時55分55秒 | 教育者・保育者のための名言

 仕事をしていると、いろんな問題が起こるもんですね。来週、がんばって乗り越えます。

 さて、本日は、沢柳政太郎のこの名言を紹介。
 「教科書に使役されて、教科書を授けるための教師となってはいかぬ。」

 「教科書は使うものであり、使われてはならない」とは、授業者としての教師のあり方を示す言葉として、今でも現場でよく言われる言葉です。私も授業実践をしていていつもこの言葉の大事さを思い知らされます。
 この類の言葉の早い使用例が見られるのが、沢柳政太郎の『教師及校長論』(1908年)です。沢柳は、教科書をそのまま教えて満足している教師に対して、「そういう教え方をしている君。子どもはこう思っているぞ。『この先生より教科書の方がえらい』とね」と警告しました。また、次のようにも言っています。教育においては、教師が主であり、教科書はその道具である。教師は教科書の奴隷ではない。教科書を使いこなさねば生きた教育はできない。教科書を自由に使いこなすには、教科書の十分な研究(教材研究)が必要である。
 これは、教育内容や教室における教え方に関する教師の自律性を示す言葉です。教師の専門性を考える上では、無くてはならない言葉だと思います。沢柳が初めて言ったのかどうかはわかりませんが、当時の教師に対して強い影響力をもっていた沢柳がこれを言ったことの意味は大きいでしょう。なお、沢柳のこの名言の意味は、教師の勝手に教科書・教材を扱って良い、という意味では決してありません。しっかり教材研究し、教材を使いこなすべきという意味なのには注意してください。
 教師は、教科書(教材)を十分研究して教科書(教材)を使いこなすことで、はじめて子どもたちを本当に教育することができる。よりよい授業実践を求めて教壇に立っている教師なら、誰もが理解・共感できる言葉だと思います。

 ちなみに、教育史研究者として、この発言のどこが面白いかというと、国定教科書時代・権威主義的時代にこういう風に言っているというところです。この部分の掲載されている『教師及校長論』は、当時の教員社会の大ベストセラーの一つです。ということは、後の教育社会のリーダーとなる沢柳が、国定教科書に使われてはならない、使いこなすのだ、と主張し、それを多くの教師が同調・共感したわけです。
 この言葉の直接の対象は主に中等教員のようですが、初等教員も読んでいたはずですから、国定教科書の話をもってくるのもあながち間違いとも思えません。(国定教科書を直接批判してはいけないので、中等教員対象に見せかけた可能性もあるかもしれません) 国定教科書時代、教育目的・内容へのアクセスができなくなったと通説では言われていますが、学説・現場レベルではどんな感じで受け止められ、運用されていたのでしょうね。…というより、国定時代だったからこそ、大事にされた言葉なのかもしれませんね。


 「教科書に使役されて、教科書を授けるための教師となってはいかぬ。」

沢柳政太郎「教師と教科書」(『教師及校長論』同文館、1908年)より。
 (『教師と教師像』沢柳政太郎全集第6巻、国土社、1977年、86~90頁)
 ※句読点・濁点は付け直し、旧字体はなるべく新字体へ書き直した。

 教師は主で教科書は器械でなければならぬのに、教科書が主で教師は恰[あたか]も生徒に向て教科書を解釈取次するものに過ぎないやうな有様が実際存して居る。しかも何人もこのさまを見て怪まない。教師自身もかく思うて居る。考へて見ると驚くべきことである。この弊は中等の学校に於て特にひどい。教師自身が教科書の奴隷を以て甘んずる次第であるから、生徒が教師よりは教科書をえらいと考えるのは無理もない。
 教師が教室にのぞんで今日は何枚目からはじめると宣告するのは、即ち教科書の取次者たるを表明するものである。この学期には予定の如く教科書を終ることの出来たのは満足であるといふのも同様の思想から出て来て居る。[略]
 教科書を授けるのが教授ではない。教科書の内にかいてある事項や理屈を教へるのが教授である。否、教科書の内にのって居る材料をかりて生徒の思想を開発拡充するのが教授である以上は、教師は成るべく直接に生徒の思想に向て働くことをせんければならない。教科書とにらみ合をし、首引をして居り、もし教科書をとられたならば仕事が出来ないやうではいけない。[略]つまり教師は教科書に拘束されて少しも自由自在に且、臨機応変に働いて行くことが出来ない。前に申したやうに、教師は教科書を講釈する道具にすぎない観がある。洵に憐むべきである。
 全体、教師は生徒を教授するものであり、生徒は教師より教授を受くるものである。即ち、教授は教師と生徒との関係である。唯、方便として図書、器械、標本等を使用することがあるのである。然るに実際に於ては、教授は教科書と生徒との関係で、教師は唯その教科書を生徒に理解せしむる媒介者に過ぎない。故に教師は生徒を教授するものにあらずして、教師は生徒に教科書を紹介するものであるといふ有様である。教師は直接に被教育者に対するものにあらずして、中継ぎ人たるに過ぎない状態である。果して然らば教育の定義にいふが如く、教師は被教育者に直接に影響を及ぼすものでない。これ即ち教師が教科書の奴隷となり居るためである。軽重本末を誤て居るためである。少しく酷にいふと中継媒介者ならばまだしもよけれど、書物に使役されて居るものに過ぎない観がある。[略]
 教師も生徒も教科書に拘束されて居るやうでは本当でない。[略]教師は教科書を見ずして自由自在に教授してもらひたい。生徒も皆教師を見つめて教師の教授に注意して本を開くに及ばないやうにしたい。唯教科書は復習のとき、教師が前に居ないときに参考する位にしたい。分らぬ事柄があったら事柄そのものを取て教師に質さすやうにするがよい。[略]教師たるものはかく質問するやうに生徒を指導してもらひたい。
 教師が教科書に使役されずにこれを使役しやうとするには、教科書を放棄して置いては出来ない。能く教科を諳誦する位にこれをのみ込まねばならぬ。教科書を見ずに教へるには、予め充分よく教科書を研究して置かねば出来ぬ。既によく教科書を研究して諳誦する位になれば、そこで初めて教科書を自由に使役することが出来る。かくて教授は活発に自在に面白く為すことが出来る。教科書に束縛されて居る間は、とても活発な面白い教授は出来ない。洵に活気のない死んだ教授より出来ない。畢竟、教科書に使われるは、それを使ふだけによく研究してないからである。[略]教科書の効能はこれを利用して現はれ、これに使役されては没する。
 [略]もし教科書に誤があった時には、教師は訂正して教ふることが出来るか。[略]次に教科書の内にあることを加除して教ふることが出来るか。[略]かく教師はその見込に依り教科書を活用して行かなければならぬが、教材を加除し順序を変更するが如きは軽々しくなすべきではない。能く研究して確乎たる見込がある場合に限るべきであって、決して容易に勝手にしてよいというふ次第ではない。要するに、従来よりも一層能く教科書を研究し、よく之を活用すべきである。決して教科書に使役されて、教科書を授けるための教師となってはいかぬ。

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