教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

目次詳細(教育経営の広がり 第8~14章)『教育の理論③教育の制度と経営―社会の中の教育』

2022年10月18日 23時55分00秒 | 目 次
 相変わらず、あっという間に一日が終わってしまう毎日です。新刊紹介も途中で途切れてしまっていました。先月Kindleで出版したテキスト第3巻の後半部分を紹介します。
 なお、第3巻の表紙も、他の巻と同様、妻と一緒に完成させました。第1・2巻と比べて少し躍動的な感じになっています。こうしたのは、教育の心構え的な要素が強かった第1・2巻に比較して、実際に教育を動かしていく方法を中心に取り扱っていくことを表現したかったためです。

 教育の理論シリーズ第3巻『教育の制度と経営―社会の中の教育』の後半=第2部は、教育の経営について論じています。教育経営は教育学の研究領域の一つですが、ここでは教育目的を達成するための組織的・計画的な仕事、と単純に定義してまとめました。教育経営学や教育行政学の反応が気になりながら、とにかく、教師や様々な人々が学校・園を経営に関わっていく上で持っていてほしい見方・考え方を提供することに徹しました。
  目的達成のための仕組み(組織)が制度ですから、教育経営は教育制度を動かすこととも言えますね。そのため、第2部「教育の経営」の内容は、第1部で見てきた教育制度を動かし方の面から考えていくんだなと思って読んでいただけるとよいと思います。

 第2部は、子ども達や教師、または学校・教育から政治・福祉の方向へ、近いところから遠いところ・大きいところに視野が広がっていくように構成しています。第8章は、主たる教材である教科書を取り上げました。教科書は、教師と子どもとの間にあって子どもの学習を支え、発達を促す教育を経営していく上で欠かせない教育制度の一つです。制度と経営の両方に深く関わるものとして、教科書を取り扱っています。第9章は、学級経営について、教師と子どもの協働による学級づくりと、保護者との関係づくりについて論じました。教師だけでなく子どもとともに学級をつくっていく方法や、学級の外とのつながりを意識しながら学級を経営すること、学級経営と子どもの背後にいる保護者との関係、保護者との関係づくりにおいての目標や気を付けるべきことなどについて論じています。学級経営を保護者連携と絡めて論じているのが特徴です。第10章は、学校経営について、チーム学校と学校運営協議会(コミュニティ・スクール)に焦点を当てて論じました。現在、教員と他職種との連携機会の増加、公立学校のコミュニティ・スクール化が大きな課題になっており、これらをどのように統合して学校経営につないでいくかを問題としています。子どもたちのための学校経営を実現するには、やはり基本的な制度と方向性の理解が重要だと思います。第11章は、学校をめぐる教育環境を整備することについて、地域学校協働活動や地域の様々な機関・施設との連携、学校間連携、保護者間連携に注目して論じました。学校が地域内で孤立せずに、子どもたちの教育環境を改善していく方向で教育経営・学校経営の体制を整備するにあたって、学校の外との関わりに注目する必要があると考えて設定しました。続いて、第12章は教育政策、第13章は教育行政について論じ、政治・行政の中で、教育・学校をどう位置付けて経営していくかについて考えようとしています。第14章は、学校安全や学校衛生、安全・防災教育などについて論じ、養護・福祉の立場から学校経営を見つめ直そうとしています。教育と福祉の接続・連携については、制度論として長く研究が続けられてきていますが、本章は教育実践・教育経営論として研究したいと思っています。保育における「教育と養護の一体的展開」の考え方に学びながら、人類の福祉向上が教育目的の一つであるという認識を前提にして、学校教育と児童福祉の一体的展開を展望したいという意図が背景にあります。
 こうしてみると、第3巻は、これまでの教育学や学校教育に対して挑戦的な内容になっています。まだ粗削りな内容ですが、今後のさらなる研究や実践の展開につながればと思っています。


 
白石崇人『教育の理論③教育の制度と経営―社会の中の教育』Kindle、2022年。

 第1部 社会と教育制度
 第2部 教育の経営
第8章 「教科書」とは?―制度と経営をつなぐ
 1.教科書(教科用図書)とは?
 (1)「教科の主たる教材」としての教科書
 (2)教科書が配られるまで
 2.知識・技能の習得と資質能力の育成
第9章 「学級経営」とは?―学級づくり・保護者連携
 1.学級経営の仕組み
 (1)教師と子どもたちによる学級経営
 (2)学級の決まり事の指導、学級の事務
 (3)学級と学級の外とのつながり
 2.保護者との連携
 (1)子どもの「通訳」として
 (2)「パートナー」としてともに子どもを育てる意識
 (3)教育のプロとしてのアドバイス
 (4)保護者同士のつながる場・居場所の提供
第10章 「学校経営」とは?―社会に開かれた教育課程の実現
 1.チーム学校と学校経営
 2.学校運営協議会とコミュニティ・スクール
 (1)コミュニティ・スクール化の方法
 (2)教育課程における学校・地域の連携協働
第11章 学校をめぐる教育環境を整えるには?―学校と地域
 1.地域学校協働活動の推進
 2.地域における学校・園
 (1)地域における教育・子育て支援センター
 (2)地域にある学校・園の連携
 3.日本のPTAの歴史とこれから
第12章 「教育政策」とは?―教育政策過程、教育振興基本計画
 1.現代日本における国の教育政策過程
 2.国の教育政策の基本となる第3期教育振興基本計画
第13章 「教育行政」とは?―地方自治と教育委員会
 1.教育行政と教育・学校経営
 2.地方自治と教育委員会
 3.これからの教育委員会への期待―地域学校協働活動を例に
第14章 学校での安全確保・危機管理・防災教育とは?―養護・学校安全・学校衛生
 1.養護と教育
 (1)教育の前に養護ありき
 (2)ウェルビーイングのための教育と養護の一体的展開
 2.学校における安全確保・危機管理に関する仕組み
 3.防災教育について 
結 章

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目次詳細(教育制度を研究する 第1~7章)『教育の理論③教育の制度と経営―社会の中の教育』Kindle版

2022年10月07日 20時00分38秒 | 目 次
 相変わらず忙しくしております。9月にKindleテキストの全巻出版が完了しましたので、目次により、内容の紹介をさせていただきます。まずは第3巻の前半について。

 第3巻は、教育の制度と経営について論じた教員養成用テキストです。学校教育に関わる人であればだれでも知っていてほしいことを内容にしており、対象は幼小中高のどの学校種でも対応しているつもりです(学校種ごとの粗密はあります)。
 必修科目だけど教師を目指す学生がどう学修すればよいかわからないという声が聞こえがちな「教育の社会的事項・制度的事項・経営的事項」に関する科目。制度とは目的達成のための仕組みであり、経営とは目的達成のための仕組みの組織的な働きというように、シンプルに定義して、内容を構成しました。教育の制度と経営を教職生活や教育実践の「足場」として位置づけ、実践家に必要な見方・考え方を問題にしたつもりです。現代的・歴史的・国際的視点をもって、教育の目的を達成するための制度と経営について分析しています。
 第1部は、社会のあり方と教育制度のあり方が関わっていることを様々な視点で検討しています。第1章では、現代社会において学校教育制度をどう改革していくべきか考察しました。格差社会・AI社会・人口減少社会における教育制度の課題と、「主体的・対話的で深い学び」(個別最適化された学修などの検討もしています)と「オンライン学習」について論じています。2021年に論文化した内容を少し訂正したものです。第2章は日本の国民教育制度と学校体系について歴史的に検討し、第3章は外国の学校体系や教育制度と比較しながら日本の学校体系・教育制度の特徴を考察しています。なお、第2章は2020年のミネルヴァ書房発行のテキストに寄せた論考に大幅に加筆したものです。第4章は、学校の社会的役割について、日本における学歴社会の歴史と、雇用と学校の関係に注目して論じました。第5章は、日本の就学制度の役割について、公教育の私事化・公共性の問題と日本の就学制度史を踏まえて考察しました。第6章は、中等教育制度の役割について、欧米の歴史と日本の高等学校の歴史を踏まえて考察しています。第7章は、学校がジェンダーにどう向き合うべきか、日本の女子教育史と近年指摘され始めた「男子問題」に注目して論じました。第1部では、現代的・歴史的・国際的視点によって、国民教育・学校体系・学歴・就学・進学・就職・ジェンダー形成等に注目しながら、これまでとこれからの教育制度のあり方を考察しております。


白石崇人『教育の理論③教育の制度と経営―社会の中の教育』Kindle、2022年。

序 章 ―教職生活や教育実践の足場を確かめる
 第 1 部  社 会 と 教 育 制 度
第1章 これからの教育制度とは?―格差・AI・人口減少社会と教育
 1.未来の社会が要求する教育制度の変革
 (1)格差社会と教育制度
 (2)AI技術を前提とした社会と教育制度
 (3)人口減少社会と教育制度
 2.教育方法の変革と教育制度の課題
 (1)「主体的・対話的で深い学び」の実現
 (2)オンライン学習への注目と課題
第2章 日本の教育制度はどのようにできたか?―江戸から平成まで
 1.明治教育の出発点
 (1)江戸から明治へ
 (2)「教育」とは何かをめぐって
 2.国民教育の制度化
 (1)共通教育と義務教育を目指して
 (2)普通教育の模索
 (3)普通教育と人材養成
 3.国民教育の影響
 (1)就学慣行の定着と臣民教育
 (2)立身出世主義と良妻賢母主義
 (3)学校・家庭・社会
 4.国民教育始動の意義
 5.大正・昭和・平成期の学校体系
 (1)大正期から戦後教育改革までの学校体系
 (2)1947年以後の学校体系の変遷
第3章 どんな教育制度がありうるか?―学校制度の国際比較
 1.世界の学校体系の多様性
 2.公教育制度の多様性―オランダと日本の比較から
第4章 学校の社会的役割とは?―学歴・資格・雇用・教育
 1.日本における学歴社会の形成
 (1)近世身分制社会からの脱却
 (2)様々な学歴社会の形成要因
 2.学歴社会と企業の人材育成
 (1)企業と学校出の人材
 (2)学歴社会から資格社会へ
 3.学校の社会的役割―機会均等・人材配分・資質涵養
第5章 日本人はなぜ就学するようになったか?―私事化と公共性の狭間で
 1.就学するのは誰のためか?―教育の私事化と公教育
 (1)教育の私事化
 (2)教育の公共性
 2.近代日本における就学というライフスタイルの出現
 (1)学齢制度の定着
 (2)学齢の始期と終期はいつか
第6章 初等後教育・中等教育とは何か?―普通教育、進学準備、職業準備
 1.中等教育制度の歴史
 (1)中等教育制度の3つの源流
 (2)20世紀アメリカにおける前期・後期課程と男女共学の成立
 2.中等教育内容の発展
 (1)古典語・母国語・外国語をめぐる言語教育の模索
 (2)実学としての数学・自然科学・実業科目
 (3)自治・訓練による人格形成
 3.高等学校の歴史
 (1)旧制高等学校の歴史
 (2)新制高等学校の創設
 (3)1960~70年代における高校教育の拡大
 4.高校教育の質的転換
 (1)1990年代以降の高校をめぐる状況変化
 (2)2014年12月の中教審答申による高校教育の質的転換構想
第7章 学校はジェンダーにどう向き合うか?―別学・共学、女子・男子問題
 1.女子教育の成立
 (1)良妻賢母主義の歴史的意義
 (2)高等女学校の設立と良妻賢母主義教育
 2.第一次世界大戦後の女子教育の転換
 (1)女子体育の改革と奨励
 (2)女子教育における知育・徳育の改革と奨励
 (3)女子の教育のゆくえ
 3.現代日本における男子の教育問題

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