教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

にこり!

2024年05月31日 21時16分00秒 | Weblog
「ばつ かいて、にこり したら、"さ"だよー」



今朝、うちの子が書いて教えてくれた「さ」の書き方です。
そう言われると、「さ」がかわいく見えてきませんか?

5歳になったうちの子ですが、最近文字に興味深々です。
妻が教えたのかもしれませんが、「さ」の書き方の覚え方が、とってもステキだったので、思わず世界に伝えたくなりました。

絵を描いたり、色を塗ったり、制作したりすることが大好きなうちの子ちゃん。
言語力も表現力もついてきて、作品の説明を受けるのが、いつも楽しみです。



もう一つの絵は、私と自分と、カラフルなハートを描いてくれました。
子どもにとって私はやっぱり(物理的に)「大きい」存在のようです。「パパはおっきいから」とのこと。
なぜハートはいろんな色なの?と聞きましたら、「いろんな すきが はいってる」とのこと!
紙のど真ん中に大きく絵を描いているのも、とてもうれしい。

すくすくと心豊かに育ってくれています。
妻の子育てと保育士さんたちの保育の賜物ですね。
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教育学参照基準における教育学と教育史

2024年05月18日 11時06分14秒 | 教育研究メモ
 日本学術会議心理学・教育学委員会教育学分野の参照基準検討分科会「報告 大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 教育学分野」(2020年8月18日、以下「教育学参照基準」)のいう教育学は、過去に様々な立場から批判されてきた教育学とは異なるものととらえるべきである。そこでの教育学は、「ある社会・文化における人間の生成・発達と学習の過程、およびその環境に働きかける」営みとしての教育を対象として、あらゆる教育の目的・内容・方法・機能・制度・歴史などについて規範的・実証的・実践的にアプローチする様々な学問領域の総称である。教育の規範や過去の教育の事実、教育の実践方法をそれぞれ個別に明らかにしたり、社会や家庭の教育、生涯にわたる学習や人間形成などを軽視して近代学校教育ばかりを対象としたりすることで良しとするような学問構想は、そこにはすでに存在しない。教育学は、近代学校教育制度に支えられながら、同時にそれを相対化し、改善策やオルターナティブを提示する学問を目指している。また、市民性の育成にかかわるとともに、「教職に関する専門教養」を担って学校教育・教員養成に貢献する。教員養成は教育学の本質的要素として位置づけられ、教員養成に携わることで教育学自身の理論的発達と諸学の質保証を進める構想がとらえられている。
 教育学参照基準は、教育史の役割を直接的に明示しており、教育学としての教育史の仕事を求めているといってよい。とくに、実証的アプローチにおいては、教育がどのように行われてきたかを記述・説明し、教育の歴史性を認識してその限界を見極める教育史が求められている。このような実証的アプローチによる教育史は、人間・社会の可変性の限界を見極めて教育を組織化する実践知とともに、人間・社会に関する科学的知見や理想・理念についての反省的に認識する反省知のための、より確実な知的基盤を形成する役割を果たす。教育の歴史的理解は、教育の事実や問題がどのように生成されたのかを理解・説明したり、教育の原理や概念、目的を理論的に理解・説明したりする上での基礎知識を提供する。教育史は実証的アプローチによって、教育学のリソースとして基礎的アプローチを支えるものでもある。
 教育学参照基準には、明示的ではないが、教育史によって身に付けられるものとして暗示される素養も多く見いだせる。教育の社会的・文化的多様性の理解や、教育事象と社会的事象の相互関係を理解、学習過程とそれへの教育的介入の理解については、教育の組織化や教育実践を支える教育学の実践的アプローチに欠かせない素養であるが、長年の教育史研究の積み重ねにおいて見出されてきた多様な教育史を前提としたとき、これらを教育史の学修を通して身に付けることは可能である。しかし、そのためには教育学を前提としない教育史の成果を教育学の教材として取り込む必要がある。教育史テキストの編集においては、教育や教育諸概念の多様性や社会との関連、歴史性に着目し、多様な教育史の成果がいかなる教育学固有の諸理解・素養・能力の育成につながるか明確にしながら教材選定・研究を進めなければならない。その作業は、教育学としての教育史を具体的に構築するだけにとどまらず、教育学の境界横断性を具体化する重要な作業でもある。
 教育史家が自分の問題意識に基づいて自由で多様な教育史を研究するからこそ教育学・教員養成の発展可能性は高まっていくが、そのままでは十分な成果を見込むことはできない。教育学参照基準によれば、教育学としての教育史の教育は、講義だけでなく多様な学修方法を組み合わせて学生の学修経験の多様性を確保することや、「再帰性」を生かすために学生自身の学修過程を分析する機会となること等を検討していかなければならない。教育史の演習単独で1~2単位を構成できる科目を用意できる学部・学科等はどこにでもあるわけではないので、教育史の講義と教職科目における講義・演習、ゼミなどの講読演習の機会を効果的に組み合わせる課程を工夫が必要である。卒業論文についても、過去の教育の歴史的事実を単に体系化するだけでなく、教育学の知識・理解・能力を踏まえた問題設定によって体系化することによって、教育史の卒業論文は教育学の学修方法となりうる。また、評価方法についても、事実の正確さを評価するにとどまらず、教育学の学修の目的・目標・方法に沿って様々な観点から評価する必要がある。
 教育学としての教育史という立場は、教育史教育に様々な課題を突き付ける。教育学の中で教育史がその役割を果たそうとするとき、教育史は教育学の規範的・実践的アプローチを支える実証的アプローチとして自らの役割を自覚し、多様な教育史の成果を教育学固有の諸理解・素養・能力の育成につながるように教材化して、多様な学修機会と教育学の目的・目標・方法に沿った評価につながる教育方法を開発していく必要がある。教育学としての教育史の立場は、教育学教育において確立する必要がある。その準備として、テキストとシラバスの抜本的見直しを行い、教育課程の研究開発に取り組む必要がある。

〈主要参考文献〉
・ 白石崇人「教員養成における教育史教育」広島文教女子大学高等教育研究センター編『広島文教女子大学高等教育研究』第2号、2016年、29~48頁。
・ 白石崇人「教職教養としての教育史」広島文教女子大学高等教育研究センター編『広島文教女子大学高等教育研究』第5号、2019年、1~13頁。
・ 白石崇人「日本教育史研究における「教育学としての教育史」」広島文教大学高等教育研究センター編『広島文教大学高等教育研究』第9号、2023年a、1~14頁。
・ 白石崇人「現代日本における教育史教育の課題―歴史教育・高大接続・教員養成を意識した「教育学としての教育史」の教育の模索」『広島文教大学紀要』第58号、2023年b、11~25頁。
・ 日本学術会議心理学・教育学委員会教育学分野の参照基準検討分科会「報告 大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 教育学分野」、2020年8月18日。
  https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-h200818.pdf
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教育学としての教育史

2024年05月10日 23時55分00秒 | 教育研究メモ
 教育学としての教育史は、「教育」概念の歴史と「教育学」の歴史を中心とする教育史である。それゆえに、「教育」・「教育学」を構成する諸概念とその体系の歴史、すなわち教育学史や教育学諸領域の歴史が必要である。これを基礎にして、学校・社会・家庭の教育や教育制度・政策、教育問題、教育運動、教師・子ども・青年などの歴史の研究を深め、教育史の内容を厚くできる。
 教育は、人間生活・形成の一側面として多様な概念・領域と接触し、相互に影響し合って成立している。教育学としての教育史を描くとき、福祉・政治・経済・文化などとの接点や関係において展開される歴史を視野に入れなければならない。教育の概念・領域の歴史だけを明らかにしても、教育と関係するとはいえ福祉・政治・経済・文化の歴史だけを明らかにしても、それは教育史として十分ではない。その両方への視点が必要である。
 特定の国や地域の教育も、他の国や地域と接触し、相互に影響し合って成立している。例えば日本教育史を描くとき、世界・外国や西洋・東洋文化などとの接点や関係において展開される歴史を視野に入れなければならない。その視点から、制度や思想、概念、モノ、人などの交流史や受容史は重要である。
 教育は、様々なアクターによって運営・機能している。教員や親・保護者、子ども、学習者、政治家、学者、様々な教育関係者、地域住民などの具体的な人々や、国家や社会、団体、組織、企業、市場などの団体組織が、様々な感情と利害をもってかかわり、教育の歴史をつくっている。教育をめぐる政治過程や合意形成、価値判断などが、どのような歴史的背景の中で、どこで、誰をメンバーとして、どんな立場から進められたか、その経緯・変遷を明らかにすることが重要である。
 教育学もまた、その下位領域において、または下位領域の相互作用の中で成立し、または他の学問分野との相互作用の中で成立している。大学や研究所、学会、研究会、派閥などの一定の場において、様々なアクターがそれぞれの感情や利害をともなって相互に関係しながら、教育学史を形成している。教育学の諸領域内部の歴史とともに、諸領域の相互関係、教育学と他分野との相互関係の歴史は重要である。また、教育学は、その活用をめぐって、教師や教育行政、国家、運動体などと相互に影響し合いながら歴史をつくっている。教育学と教師の教育研究の関係史や、教育学の政策過程・教育運動への参画の歴史などは重要である。
 教育史は多様である。教育学の立場をとらない教育史は、教育学としての教育史とは違った視点・考え方をもち、得意なテーマや問題意識も異なる。他の立場による教育史の成果は教育学としての教育史を刺激し、新たな研究を生み出す。それと同時に、教育学としての教育史が、他の立場による教育史に刺激を与えることも積極的に考える必要がある。特定の立場による教育史が独自に研究を積み重ねていくとともに、多様な教育史が相互に関連・影響し合いながら高め合っていく場も積極的に設けていかなければならない。その意味で、教育学としての教育史は研究を着実に積み重ねていく必要がある。





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