フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

Lecon 128 注釈と試訳

2007年11月07日 | Weblog
 [注釈]
* Elle che’rissait son autonomie : autonomie 「一人で生活すること」Moze さんの「自分のことは自分でする」という訳は、うまい訳ですね。反意語は de’pendance となります。
* lorsqu’elle prenait simplement l’autobus, (...) se hissant (...) demandant... : ここの現在分詞は、「地下鉄に乗る」為に必要な具体的な手続きを述べています。
* Personne は「ひと」を指す普通名詞で、一人でカフェなどに入るときボーイさんから、Une personne ? と聞かれます。あの personne です。

 [試訳]
 母の孤独

 母は一人で暮らしていた。一度ならず、姉の、またわたしのところで暮らすことを拒んだからだ。「自分のアバルトマンで私は気楽にやっているし、自分の暮らし方だってある。誰にも邪魔をされたくないしね」母は、誰にも迷惑をかけない暮らしを大切にしていた。それが私には心配でもあった。母が一人で大通りを横切る。でも母の目は、信号の色をはっきり見分け、やって来る車に注意するほど良く見えてはいなかった。また女友達に会いに、地下鉄で遠出をすることもあった。そんな時でも、適当な通路や方角を知るのに、ただ記憶を頼りにしているのだった。またわたしの家へ来るために母がただバスに乗るだけでも心配だった(わたしは母を停留所で待っていたものだ)。バスに乗り込むにも一苦労。自分がどこで降りるべきかを教えて下さい、と人に頼んでいたし、乗る時にも、やって来たバスが果たして自分が乗るべきバスなのかを、母はひとに尋ねなければならなかった。わたしは出かける時はタクシーだけにするようにと母から約束を取り付けた。それでも、母はタクシーを見つけなければならず、タクシー乗り場に向かわなければならず、タクシーを拾える運が必要だった。
 母は、移動領域を減じられた人、徐々に移動を制限された人だった。
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 「身につまされた」というみさよさんの訳は、いつもより読ませるものでした。文章との共感は、やはり力になりますね。次回は、p.36, l.3 de’bouchent en elle. までとしましょう。