フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

フランスとフランス人に対する30の質問(3)

2008年04月23日 | Weblog
  [注釈]
* Autre signe qui ne trompe pas : たしかに他動詞 tromper に目的語がありませんね。ただ、この動詞に限らず、目的語を持たない他動詞の用法はそう珍しくないのではないでしょうか。「もうひとつ疑いようのないことがある。」と訳してみました。
* Les familles d’ouvriers (...) souhaient (...) que leurs enfants suvient des e’tudes... : ここは、shoko さんがお察しの通り,souhaiter の目的語は二つ目の que 以下の節です。
* Les Français des couches populaires ont inte’gre’ (...) Mais les immigre’s d’origine maghre’bine croient encore : ここは、いわゆる「(土着の ?)フランス人」と移民の対照をしっかり押さえて下さい。la re’alite’ de la reproduction sociale des e’lites とは、平たく言えば「エリートはエリート家庭から生まれる」という現実を指しています。そうすると la promesse the’orique の言わんとするところも分かりますね。つまり、「がんばれば誰でもエリートになれる」という建前のことです。
 [試訳]
 もうひとつ疑いようのないことがある。それは、教育に対する移民家族の関心の高さである。マグレブ出身の工場労働者や勤人の家庭は、同じ階層のフランス人家庭に比べて、子供が高等教育を受けることを望んでいる割合が高い。子供が男の子の場合は40%の家庭が,女の子の場合は54%の家庭がそうした希望を持っている。一方フランス人家庭の場合は,子供が男の子だと21%、女の子の場合で36%しか、高等教育機関への進路を想定していない。大衆層のフランス人は、エリートが社会的に再生産される現実を甘受してしまっている。けれどもマグレブ出身の移民たちは「フランスモデル」をまだ信頼し、学業上の成功に基づいた能力主義が理論的に約束している、すべての子供たちに開かれた未来を信じている。
………………………………………………………………………………….
 雅代さんが話題にしていた「教育の機会均等」ですが、フランスは保護者の教育費の負担が日本とは比べ物にならないくらい軽いですから,その点からすると e’galite’ はある程度守られていると言えるかもしれません。
 フランスの大学には「授業料」という言葉がありません。これも随分と高くなりましたが,年度始めに3万円ほどの「登録料」を払えばいいだけなのです。
 今大阪の府立高校の年間授業料が約14万円。国公立大学はほぼ54万円です。フランス人からすると「天文学的」な数字ではないでしょうか。そんな教育費の高さが日本の教育の平等をいびつに歪めていることは言うまでもありません。
 ただ、問題は複雑で,そんなフランスでさえも教育の機会均等を実現することは、なかなかに難しいようです。
 さて、次回はp.82 volonte’ d’inte’gration までを範囲として、また疑問点だけを書き込んで下さい。来週水曜日までに注釈と要旨をお目にかけます。
 smarcel