下り一番列車で豊後竹田に着いた後は、1時間ほど街をぶらぶら。日曜朝の地方都市とあっては静かそのもので、朝ごはんにありつけないかとの淡い期待は、もろくも崩れました。天気も崩れ始めます。
しかし時間が経つにつれて、お揃いの黄色いシャツを着た人々が集まり始めました。九州横断特急の1番列車に向けた、歓迎・見送りイベントのために集まってきたようです。
「今でしょ!!たけた」。今風の横断幕を持つのは、今の若者たちです。
だんだんとホームが黄色に染まってきました。
「元気です!たけた」。横断幕は何枚も準備されていました。
別府から熊本経由、人吉行きの九州横断特急1号が到着。黄色い風船を振っての、大歓迎です。
別府と阿蘇という、九州の名だたる観光地を結ぶ観光特急だけに、外国人観光客の姿も多数。時ならぬイベントに、興奮気味にカメラを向けていました。
元気な子どもたちに見送られ、竹田を離れて行きます。
こちらもマスコミ各社が取材合戦の真っ最中。
玉来駅を通過。さきほど下り一番列車で通った時よりも、ずっと大勢の人が待ち受けていました。
黄色のシャツと風船は存在感も抜群。車内からは歓声が上がります。
車内では地元観光協会が、米やお水などがぎっしり詰まった記念品を配布。一眼レフを振り回していた僕は「関係者」と見なされてしまったのか、もらえませんでした(泣)。
同じく記念品を配っていた和服姿のお兄さんからも「マスコミの方ですか?」と聞かれる始末。もう少し、格好を考えた方がよかったかな?
次の停車駅、豊後荻で下車。JRのプレスリリースでは荻での歓迎イベントの告知はありませんでしたが、こちらのホームも黄色いシャツで埋め尽くされていました。
さきほどの和服のお兄さんは、歓迎隊と言葉を交わして再び列車に飛び乗り。くろちゃんの旗を振り、初列車の乗客を見送りました。
現在は竹田市域となっている荻ですが、元は独立した自治体で、現在でも観光協会は独自の組織を持っているようです。
お祝いの横断幕は、しっかりしたものが何枚も作られていました。
ホールでは被災状況の写真展示も。
徹底的に破壊された線路を、よくぞ1年余りで復したものだと感心します。
次のお出迎え・見送りは別府行の「九州横断特急2号」。荻からの観光PRも行うようで、特産のトマトが山のように準備されていました。
旗を振ってお見送り。車内の人もほとんどがこちらに手を振っており、僕も「にわか地元人」になって笑顔の交換。人吉からのキャラバン隊も乗っており、つながった線路で人も行き交い始めました。
次の宮地方面の普通列車を待っていると、宮地から折り返してきた先ほどの和服のお兄さんが、駅内食堂のご飯に誘ってくれました。
てっきり観光協会の方かなにかと思っていましたが、熊本出身、京都在住の個人の方で、沿線の方にお祝いの気持ちを届けているのだそうです。かといってマニアな雰囲気は微塵もなく、地元の方ともすぐに仲良くなっていました。
駅内食堂もイベント準備のため臨時休業だったらしいのですが、お兄さんに心動かされ、ありあわせの材料でご飯を出してくれたようです。舌代にはない、野菜たっぷりちらしずしでした。
食事中には、「支所長がぜひお礼をしたいと言っているので、連絡先を教えて頂けないか」と市役所の方が来られていましたが、お兄さん、丁寧にご辞退されていました。
見送りイベントは九州横断特急向けだったようですが、残っていた人にお兄さんも交えて、宮地行き普通列車に向けても行うことに。
笑顔に見送られ、さわやかな気分で豊後荻駅を後にしました。
新型キハ220系の車内は、乗車率120%といったところ。いつもこれくらい乗っていればという声も聞かれました。
かなり長い区間に渡って、線路が新しくなっている区間もあります。新線建設か、それ以上の厳しい環境での復旧劇に、頭が下がる思いです。
宮地駅到着。
駅構内には、災害復旧資料館がオープン。北部豪雨だけではなく、1990年の被害についても詳細に解説しています。
トンネルに流れ込んだ鉄砲水で押し出されてきた線路の実物も、前代未聞の被害を伝える証人として展示されています。
宮地駅からは「あそぼーい」で熊本へ。鉄道記念館で開かれた展示会で車内を見学したことはありますが、営業運転する列車に乗るのは今回が初めてです。
くろカフェには、客室乗務員からこんなメッセージが。
立野のスイッチバックは、ななつ星の乗り入れに備えた引き込み線の延長工事が完了。
全線復旧を迎え、「夢の豪華列車」の運行開始もいよいよ秒読み段階に入りました。
熊本に着くと、鹿児島本線が大雨の影響で運転見合わせになっていてびっくり。運行再開の見込みも立たないということで、通常運行の新幹線に乗って久留米へ帰りました。
雨の影響で、この日行われる予定だった久留米水の祭典のパレードは中止に。しかし夕方には止み、一万人のそろばん総踊りは予定通り実施されました。雨が大きな被害にならず、なによりです。