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福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

小児がん治療で上京するなら「のぞみ」多目的室が安心

2019年06月25日 | ■旅と鉄道

 地方住まいで子どもが難病にかかると、治療のため上京することを余儀なくされることがあります。小児がんが見つかった我が子も、築地の国立がん研究センターでの治療を受けることになりました。
 幼い子どもを連れて、しかも感染症を絶対に避けねばならぬ上京。大いに頭を悩ませましたが、いろんな方のご協力を得てこれまで4往復しています。
 同じ境遇の方々へのヒントにもなると思いますので、ひとつの体験談として記録しました。多目的室の予約可否は個別の判断になるようですので、利用を検討される場合は、早めに乗車駅へご相談下さい。


■ 障害者手帳所持者以外の多目的室予約は要相談

 昨年(2018年)12月に、長男が小児の希少がんであることが判明。今後、東京・築地の国立がん研究センターでの治療が必要になるとの説明を受けました。


 福岡の病院で抗がん剤治療が始まり、東京行きの頃には抵抗力が下がっていることは明白。しかし飛行機で行けば、搭乗手続きや機内で多くの人と接触することになります。まして冬は、インフルエンザの流行期。予約でいっぱいの国がんでは、万一感染症にかかれば治療スケージュルが1ヶ月遅れになってしまいます。

 そこで考えたのが、新幹線の多目的室を利用できないかということ。東京まで5時間かかるものの、乗ってしまえば他の人との接触なく移動できます。障害者手帳を持っていれば予約できるという条件ですが、それ以外の事情も汲んでもらえないか?
 そこでJR西日本のお問合せ・ご意見ご要望のページから、詳しい状況を記載して問い合わせたところ、2日後に電話で連絡があり、OKの返事がもらえました。


 2度目以降の利用では博多駅(092-472-8424)に直接、電話を入れて申し込んでいます。単なる入院のための移動ではなく、「抗がん剤治療中で抵抗力が落ちている」「感染症にかかっては困る」ため隔離が必要という点を強調して伝えるのがポイントです。
 なお多目的室の予約が可能なのは東海道・山陽・九州新幹線のみで、東北・北海道・上越・北陸新幹線では、乗車後に車掌と交渉する決まりです。他の利用者がいれば使えないわけで、これじゃ身障者の方も含め困るんじゃないかな。あらゆる人にやさしい新幹線であってほしいです。


■ 多目的室でも割引きっぷを利用OK

 多目的室でも、各種割引きっぷを利用可能スマートEX会員限定の早得が、3日前までの購入で博多~東京間が片道17,400円(週末なら17,000円)と割安です。しかも飛行機と違って、3日前までならば手数料なしで変更OK。直前キャンセルの手数料も310円と割安なので、刻々と変わる治療計画にも対応しやすいです。
 クレカと交通系ICをインターネットで登録すれば、年会費無料で入会できるので、早めに入会しておきましょう。


 早得利用の際、切符の予約・購入は以下のような手順になります。
【1】アプリで希望する列車が空いているか確認
【2】乗車駅に電話をかけ、希望する列車を伝える(第3希望まで聞かれます)
【3】数時間後に折り返し、予約できた列車の連絡がある
【4】アプリで取れた列車を予約(多目的室の予約はできないので、適当な席を抑える)
【5】駅に行ってEX早得の切符を受け取り、窓口で多目的室の切符に交換
(乗車当日でも交換できますが、10~20分ほどかかるので、事前受取りがベターです)


■ 多目的室での移動はこんな感じ

 乗車駅では、11号車のデッキに案内の駅員さんが待っていてくれています。予約の際に申し込んでおけば、改札から列車までも誘導してもらえますので、普段新幹線の移動に慣れていない方は、頼んでおくと安心です。




 東京駅では、発車までの待ち時間、身障者用待合室に案内してもらえました。空調が効いていて、人も少ないので安心。時間に余裕を持って駅に行くことができます。


 11号車東京方のデッキにある、丸い扉の中にあるのが多目的室です。向かいの多目的トイレとよく似た扉なので、間違えられることもしばしば。内側からの施錠をお忘れなく。


 2人掛けの座席と、折りたたみの椅子が備えられているのがデフォルトの状態です。しかし座席を引き出すと…


 シングルサイズのベッドに早変わり! まだ首が座っていない我が子にとって、ありがたい仕掛けです。ベッドへの転換は乗車時に乗務員さんにお願いできますし、自分で変えるのもそんなに難しくはありません。
 多目的室ではこまめな温度調整はできないので、毛布や薄めの肌着など、暑さ、寒さへの対策はお忘れなく。


 グリーン個室とは異なり、ハンディキャップのある利用者に向けた開かれた設備である多目的室。シンプルであっさりした内装です。コンセントが備えらえていて、長旅でも安心。


 テーブルの類がないのは、ちょっと不便。窓框くらいしか、物を載せる場所がありません。お弁当を食べる時はもちろん、服薬の際にも苦労しました。


 向かい側の多目的トイレには、使用済みおむつのごみ箱があり、赤ちゃん連れには助かります。


■ 赤ちゃん連れとしての雑感あれこれ…

 この多目的室は予約が入っていない際は、一般の親子連れも車掌に申し出て授乳室として使うことができます。おむつ交換ができるトイレも隣にあることから、赤ちゃん連れの利用者は11号車を予約するケースが多いようです。
 しかし僕らのように予約した人がいれば使えず、乳児を連れた旅行者という立場は同じだけに、申し訳ない気持ちになります。多目的室とは別に、専用の授乳室があれば、親子連れの旅行者にとってどれだけ安心かと思います。


 2003年に廃止された「グリーン個室」があれば、赤ちゃん連れには助かるのになぁ。20年前、横浜に嫁いだ隣の家のお姉さんが、6時間以上かけて「ひかり」の個室で帰省していたことを思い出しました。
 「のぞみ」にだって、授乳室や個室を設けるスペースが、ないわけではないです。新幹線にはファミリー層も多いねんから、1編成に4箇所もある喫煙室はキッズ対応の部屋にした方がええんちゃうか?…霜降り明星なら、きっとそう言うと思います。


■ 東京での滞在先は、アフラックペアレンツハウス

 東京駅に到着。エレベーターは11号車からは遠い上、インバウンドの大荷物の乗客も多くて、2回待ちました。空調の効かないホームでは、子どもの体調が心配になります。


 エレベータが降りた先は、八重洲中央南口。改札を出れば正面にタクシー乗り場があり、人ごみの中を歩かなくて済むのは安心です。ただ行列ができていることが多く、悪天候だと雨が降りこむような場所なのは困りもの。


 あまりに行列が長い場合は、改札から左手に徒歩数分の日本橋口にまわるのも一考。タクシー乗り場ではないので待機している車両はないですが、降車場になっているので、やってきたタクシーを捕まえることができます。
 ただ雨が避けられないのは、こちらも同じです。博多駅みたいに、地下のタクシー乗り場があればいいのに…。


 10分少々、タクシー代1,500円前後で、浅草橋の「アフラックペアレンツハウス」に到着。小児がん患者と、その家族のための支援施設です。患者本人は無料で、付き添いも1泊1人1,000円(+リネン代500円)で利用できます。


 ピカピカで、快適なツインルーム。なのにすごく家庭的な雰囲気で、ほっと落ち着ける空間です。


 部屋の造りも広くて、ゆったり。ホテルでは得られない安らぎがあります。


 ウチの子も気に入ってくれたようで、ごきげん。
 ペアレントさんは「お帰りなさい」と迎えてくれるし、社会福祉士さんは親身になって相談に乗ってくれます。短期間なら新幹線+ホテルパックの方が安いかもしれませんが、ハウスの利用が何かと安心です。


 長期の時は、和室もゆっくりできてよかったです。


 最上階にはランドリーの設備があり、無料で使えます。病院だと洗濯機も乾燥機も100円くらいはかかり、長期になるほどじわじわ負担になってくるので、ありがたいです。


 同じフロアには、図書室も。希少がんの文献はなかなか当たることができないので、これも助かりました。


 3階には共用のリビングとプレイルームがあり、アフラックのキャラクターが出迎えてくれます。


 充実したキッチンでは、自炊もOK。


 ここにも寄贈を受けた調味料が揃っています。
 交通費や宿泊費が、とてつもない負担になる地方住まいの患者家族だけど、こうして支えてくれる人たちもいるんだ…その事実だけで、すごく力になります。


 共用リビングでは、ゆったりしたソファでDVDも見られます。うちの子にはまだ早いけど、じきにお世話になりそう。


 ハウスの真横にはミニイオン的な「まいばすけっと」の店舗があり、日用品を手ごろに入手できます。反対側にはお安めの精肉店スーパーもあり、自炊にも困りません。


 宿舎の真横は神田川。部屋の窓からは屋形船が見えて、非日常な風景にちょっとした旅気分にもなれました。


 おむつなんかはドラッグストアで買おうと思ってたけど、こちらでは扱かってない店も多いのは意外。ばかでかいドラッグストアばかりの地方とは、事情が違うみたいです。
 総武線で2駅移動した錦糸町駅前にはアカチャンホンポがあるので、買出しに使えます。


 ハウスから国がんまでは、タクシーで20分ほど。運賃は1,700円前後です。
 普通に配車を依頼すると、迎車料金がかかるのが地方住まいとしてはびっくり。配車アプリ「DiDi」を使えば迎車無料になるので、重宝しています。

 今後もしばらく定期的な上京が続く見込みなので、気付いたことがあれば随時、追記していきたいと思います。

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