かみさんが言った。
「義姉さんが蕎麦打ちをやってみたいって」
今年で八十三歳になる。両ひざの手術をして、歩くのも大変な時期もあった。
連れ合いに先立たれ、一人暮らしだが、最近親しい友達が出来て「私たちも蕎麦打ちをやってみたい」という話になった。
その後友達が、蕎麦打ちを見学に行って、あんなに力が要るんだもの、私たちには無理と言ったそうだ。
蕎麦打ち道具一式を持って義姉さんの家を訪ねた。
実際に打ってみると、蕎麦粉のこね方は筋がいい。おやき作りで慣れているのだろう。
こねる作業では冬にもかかわらず汗びっしょりになった。
年齢など関係ない。やりたい時がやれる時だ。
包丁で切る作業は面がかなり太くなったが、それも愛嬌。
初めての蕎麦打ちにとても満足そう。
友達に持っていってあげると言った。
人生には色々な事があるが、あきらめさえしなければまだまだ新しい経験ができる。人生百年時代、八十三歳はまだまだ若いのだろう。