このひと月半、重い宿題を抱えていた。
かみさんの勤める保育園が、別の場所に新しい保育園を作った。
それに伴い、いろいろな仕事を頼まれた。
ミニハウスの屋根の張替え、太い桑の木の伐採、ウズラの鳥小屋の製作、鶏小屋の解体と製作等。
どのようなものを作るのかの構想、設計図の作成、材料の調達と加工、ほとんど休む暇もなく考え、加工、制作し続けた。
四月の終わり、何とか終わらせようと、最後の仕事、、鶏小屋の仕上げをした。
小屋本体はもう据えてあるが、雨よけの小屋掛けが残っている。
材料費を抑えるため、解体した材料を使った。
材木は、見たところすっかり朽ちているように見えたが、カンナをかけると、使えるほどには再生できた。
タキロンも再使用した。
僕は金属加工の設計の仕事もしたことがあるが、木材は金属と違って、反りもあればゆがみもある。
なかなか意図した仕上がりにならないことが普通だと思い知らされた。
確かに頑丈な材料を使い、ガチガチに仕上げればそんな問題はないのだろう。
安い費用で、なおかつ充分な強度を確保しなければならないという、ぎりぎりの綱渡り。
その辺は経験と勘に頼るしかない。
屋根を仕上げ、最後におまけでベンチを付けた。
座って目を上げると、まだ少し雪の残る飯綱山が見えた。
これで、ようやく宿題が終わった。
山登りに行く計画も立てられる。
それに、この地では、そろそろ苗の植え付けの季節。
畑作業も待っている。
先延ばしにしてきた様々なことが待ち構えている。
それでも、一応これで一区切り。
鶏小屋本体は、鶏が移住して一週間ほど過ぎた。
昨日、新園長先生が未満児を背負いながら近寄ってきた。
『ねえ、すごいんだよ、前の小屋では卵を産まなくなっていた鶏が、また卵を産むようになったんだよ』
僕は満足そうに頷く。
この園長先生は、長男の担任だった。
長男は明日身重の妻とともに千葉から里帰り。
時の流れをつくづく感じる。
『園長の椅子に座っているより、保育している方が似合っているね』
『本当にそう思う。そうできたらどんなにいいだろう』
そいういう人に、僕の信頼は厚い。
権力の座に胡坐をかく人を僕は極度に嫌う。
時の政権などその最たるものだ。
鶏ばかりでなく、園児たちもこのベンチに座り、一層元気に過ごしている姿をイメージしながら、ビールで乾杯。
明日は農作業と、長男夫婦を迎えるためのそば打ち。