青春18切符の残りの一枚。
出来るだけ有効に使おうと、飯山線経由で新潟市までの旅を計画した。
朝まだ暗いうちに始発列車に乗り、出発。
あえて列車と言い、電車と言わないのは、この路線を走るのはディーゼル機関車だからだ。
列車と言うのも気が引ける2両編成。
ビールとつまみを持って乗車したが、そんな朝早くから飲んでなんていられない。
飯山市に入ると、一面の雪景色。
我が家の周りはほとんど融けているから、わずか30キロほど北に寄っただけでこんなにもにも違うとびっくり。
千曲川に沿って列車は北上。
JR日本最高積雪地点。7.85メートル。
ここはまだ信州だ。
飯山線の終点は越後川口駅。
去年、ここまで旅をして、しあわせの33番観音巡りをした。
あれは4月の上旬。もうカタクリの花がたくさん咲いていた。
今年は雪が多い。多分。
この駅で長岡行の乗り換え、それから新潟行に乗る。
時間も時間なので学生や社会人の乗客があふれる。
ビールなんか飲んでいられない。
実は、窓の外の風景を眺めるふりをしながら、頭の中は他のことでいっぱいだった。
前の日、かみさんが勤める保育園の主任に呼ばれた。
この先生は長男の担任だった先生で、来年度から新しくなる保育園で園長になる。
もうずいぶん長い付き合いだ。
用件は、新しい保育園に鶏小屋を作って欲しいということ。
もちろん建築が本業ではない。
だが、できないとむげに断ることもできない。
どんな構造にすればいいのだろう。
どうすれば、安く仕上げられるだろう。
そんなことが頭を占領していた。
明日からは水道メーターの検針の仕事も待っている。
新潟市。
僕は古町通を目指した。
アーケードの繁華街。歩行者専用道路。
長野市にも権藤という繁華街があるが、ほとんどシャッター通りと化している。
東海道歩きで三重で感じた寂れた感じはあまりなく、たくさんの店と客で賑わっていた。
鈴木鮮魚店の海鮮丼定食。
旨い。
お土産にぎんだらの浜焼きを買う。
あとの予定は萬代橋を渡って朱鷺メッセに行き、最上階の展望台から佐渡を見ること。
萬代橋は上を渡っているときは何ということもない普通の橋。
だが、少し離れて振り返ると、実に見事な橋桁。
朱鷺メッセの最上階は無料の展望台になっている。
軽食喫茶も併設されている。
ここから、信濃川が海と出会うのを見た。僕はこの川の上流に住んでいる。
小樽運河のような(見たことないけど)、しゃれた建物。
新潟市の活気が感じられる。
小雨交じりの曇り空だったが、佐渡の島影が見えた。
意外と近い。
僕が何度も見たのは出雲岬からだった。とても遠くにかすんで見えた。
北國街道の到着地点で、感慨深く眺めたのは何年前だったのだろう。
あれから中山道を歩き、東海道も大詰めに来ている。
終わったら何をやろうとは今は考えるまい。
とりあえず、なすべきことは山ほどある。
今回の旅は長かった冬への決別。
鳥小屋作り、メーター検針、そして雪の融けた畑では農作業が待っている。
良い旅だった。