熱く・楽しくいこう!

山岳ガイド 江口正徳の仕事と日常

2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その⑦ 最終回

2016-07-25 14:39:40 | プライベート
◎トライアングル デュ タキュル(3970m)北壁 コンタミヌ・グリソールート~モンブラン デュ タキュル(4248m)(単独登攀)

長かったアルプス滞在も残り2日となりました。今回4000m峰は一度も登っていなかったので日帰りで登れる4000m峰ということでモンブラン デュ タキュルに向かうことにしました。折角なのでノーマルルートからではなく、トラアングルの北壁を登ってから継続しました。
コンタミヌ・グリソールートも今回で3回目です。このトライアングル北壁には偉大なる山岳ガイドのアンドレ・コンタミヌ氏が拓いたクラシックルートが3ルートあります。その3ルートを全て単独で登っていますが、複数回登っているルートを数えると延べで5回目の登攀です。


トライアングル デュ タキュル北壁全景。赤線が登攀ライン


このルートはガチガチのガリーの突破がポイントです。今回はまるで水を流した水氷のようにツルツル、カチカチ状態で過去3回の内で最も難しい状態でした。


ガリーを抜けて中間部のミックス帯を登ります。先行パーティが取付いています。コスミックリッジを除いて初めて他の登山者と前後しながらの登攀です。


昨年登ったコンタミヌ・マゾーを横に見ながらの登攀。


最上部のミックス帯を急なアイスガリーから抜けます。ここも有り得ない堅さのカチカチアイスでした。


ガリーを抜けてホッとした瞬間です。途中で追い越した先行パーティが登ってきます。
フリーソロの僕を見てしきりに「クレージー!」と連呼していました。昨年は「ブラボー!」と言われたのになぁ~


トラアングル山頂を経て取りあえず登攀終了~ そのままモンブラン デュ タキュルをめざします。


モンブラン デュ タキュル山頂直下。ここもカチカチ状態。春の剱岳山頂直下より全然難しい状態でした。


モンブラン デュ タキュル登頂! ここも今までに4、5回は登頂していますが、やはり4000mを越えているというだけで何となく嬉しい気分です。ミーハーでしょうか・・・


山頂からのベルト、ドロワット、クルトの山並み


名前のとおり真っ白いモンブランを望みます。


◎プティベルト針峰(3512m) 北壁(単独登攀)

前日のタキュル山行で今回の登山を終了とするつもりでしたが、朝早くに起きて余りの天気の良さにジッとしてられません。
ゴンドラの切符も1日分残っていたのでクールダウンの山行に出かけました。あっという間の締めの登山なので単独というにはちょっと大げさかもしれませんね。


プティベルト針峰全景 赤線が登攀及び下降ライン


ショートロープの滑落停止技術を訓練するパーティ


ほんの短い氷雪壁ですが、それなりに楽しめますし、街をブラブラしてるよりは10倍位充実します。


ノーマルルート岩稜ルートはクライマーで大賑わいです。


憧れ続けているベルト針峰 ナン・ブランフェースを望みます。いつかはあのルートへ・・・


この登山を以って今回のヨーロッパアルプス登山は全て終了しました。
数えると10年連続通ってきました。これからも通い続けていくことでしょう。

僕がヨーロッパアルプスに通い続ける訳・・・
先ず第一に、ヨーロッパアルプスの山々が大好きだからです。さらにこの土地、風土、自然、人々、街・・・にとても魅力を感じているからです。
そして次に、生活の大半を「プロ」として活動している僕という人間が一切の制約を取っ払って純粋に一人の登山者として活動できる場だからです。ガイドという仕事を生業としている僕は国内でどこに行っても「プロ」という目で見られますが元は単なる一人の登山者です。そして今でも原点(いわゆる土台)はやはり一人の登山者です。そんな僕が一人の登山者として自由に自分の登山を追求できる場所、それがヨーロッパアルプスなのです。

一人の登山者として今日より明日、明日より明後日、そして一月後、一年後・・・ という想いで、よりよく充実した登山を続けていきたい思います。






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2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その⑥

2016-07-25 13:49:39 | プライベート
メインイベントも終了したので取りあえずノンビリと街をブラブラしたり、マルチピッチのロッククライミングをしたり、暫く雨続きの周期に入ったのでスイスの都市の観光にプチ旅行に出かけたりもしました。

◎マルシェの様子


シャモニでは土曜日の午前中はマルシェが開かれ大勢の買い物客で賑わいます。名物のサラミ、ハム専門店


チーズ専門店


果物店、ネクタリンやベリー類がズラリ!


パン屋さん


◎ルージュ針峰でのクライミング


マルチピッチの易しいルートを登りました。


シャモニ針峰群の雄大な景色を眺めながらの気持ち良いクライミングです。


ハイキングコースからの景色も素敵です。


堅く、乾いた岩でノンビリと快適にクライミングが楽しめました。




◎スイス ルツェルン観光

3、4日雨続きとなったのでスイスのバーゼルとルツェルンに観光にそれぞれ丸1日かけて小旅行に出かけました。
バーゼルはカメラを忘れたので写真は無しです・・・


ルツェルン駅


有名なカペル橋と水の塔


カペル橋橋上


ロイス川沿いに立ち並ぶ旧市街の街並み


旧市街のショッピング街


歴史のある立派な市庁舎


美しい装飾の噴水


◎ガイヤンの岩場


観光ばかりしていても面白くないので天気が良ければ登りに行きたくなります。やはり近場のガイヤンは手頃で楽しめます。


ここから望むシャモニ針峰群も最高ですが、少し雲がかかっていますね。
雨続きで殆ど山に登れなかった一昨年は10日位通いましたが、今年は山に僅かに1日だけでした。

そんなこんなで折角遥々ヨーロッパまで来ているので色んな楽しみ方をするようにしています。


◎今回の山行中に見かけた花々


サクラソウの仲間


イワカガミの仲間


リンドウの仲間


キンポウゲの仲間


スミレの仲間


アルペン・ローゼ(ツツジの仲間)


ウラシマツツジの仲間



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2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その⑤

2016-07-24 10:22:29 | プライベート
◎アルジャンチェール針峰(3902m) 北壁(単独登攀)

ある程度の準備も整ったのでいよいよ何年も前から登りたいと願っていたルートに向かいました。ある意味今回のメインイベントです。
アルジャンチェール針峰自体は人気の山で、特にノーマルルートはアルプスの氷雪入門ルートとして多くの人に登られています(氷雪入門とは言ってもモンブランのノーマルルートなどよりだいぶ難しいですが・・・)。
しかし北壁はセラック崩壊の危険性や様々な危険要因が多く、またかなり奥まで入らないと壁の姿そのものさえも目にすることが出来ないので状況を把握しにくいということがあり最近はメッキリ登られることの少なく、シャモニの高山事務所に状況を聞きに言ってもいつも必ず「全く登れる状況でない」としか言われたことのないルートなのです。まあそうは言っても初めて写真で見た時に感じた強烈なインパクトに惹きつけられ登りたい気持ちを持ち続けていました。下でああだこうだと考えていてもラチがあかないので下見を経てようやくチャレンジ、そして登り切ることができました。
ただ昨年の猛暑の影響で上層の雪が落ち切ってしまって下層のブラックアイスの露出が激しくなっていました。その為所々アックスが跳ね返される程の堅い氷を登らなければならずフリーソロの僕としては常にスリップの恐怖に怯えながら一手一手一歩一歩慎重に登りました。


アルジャンチェール針峰北壁全景(下見時に撮影)。赤線は登攀ライン


さらに別角度からの北壁全景(ネット画像より)。同じく赤線が登攀ライン


登攀日、深夜に出発して手前のコルまで来ました。暗闇の中、北壁が迫ります。


取付きまできました。壁がデカイので傾斜が緩く見えますが、赤丸で囲った岩でも家くらいの大きさがあります。
もちろんトレースや最近登られたような形跡など皆無です。


いよいよ登攀開始。下部は柔らかめの氷雪を登り出します。上部からは時々落石、落氷があるので気が抜けません。


中間部からミックス帯に突入です。所々ガチガチのアイスが続いて緊張の登りです。


大きなセラックが横に見える高さまで登ってきました。セラック崩壊からの大きな落氷からは逃れられるので取りあえずホッとします。


しかし足元見ると取付きのデブリが真下に見えます。スリップしたら体の原型も残らないくらい木っ端みじんになりそうです。
これでも本当に危ない個所は写真が全く撮れていないのですが・・・


ようやく北壁を抜けて北西稜に合流です。僕の登ってきた足跡だけが残っています。


この後も急峻な北西稜が続いていて全く気の抜けない登りです。


1週間前に登ったシャルドネ針峰とギザギザノコギリのフォーブス稜。


山頂が近づいてきました。ノーマルルートから登ってきたクライマーの姿が見えます。出発してから初めて人の姿を見ました。


アルジャンチェール針峰登頂です。奥にはトリオレ針峰とモンドラン


同じく山頂からはマッターホルン、ダンブランシュ


別方面、ドロワット、ベルト針峰の各北壁が圧倒的な姿を見せています。


ノーマルルートを下山開始。トレースはバッチリですがカチカチの氷雪急斜面なのでやはり気が抜けません。


一番急な個所を下り終えて見上げます。雪の前剣の急斜面より遥かに急でそれをカチカチにしたくらいの難しさです。


アルジャンチェール氷河に降り立ちました。右側はクルトとその北壁。


氷河上を流れるせせらぎ。やっと平和な気持ちが蘇ってきました。まだまだ先は長いですが安堵感と満たされた気持ちを胸にノンビリ下山しました。

この登山を終えて改めて思ったことは「やはり独りで登って良かったなぁ~」ということ。
そして登る前いつも思い繰り返していた一文があります。
『アドベンチャーを単独で生きることを決心したからには、たとえ、万一、状況が予想どおりに展開せず、どんな事態が発生しても、最後まで単独でいる覚悟だ。つねに他人の援助を期待しているようでは、ソロ・クライミングの存在理由はない。』 ~トモ・チェセン~


改めて良い登山でした。








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2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その④

2016-07-24 02:08:45 | プライベート
◎プティ ベルト針峰(3512m) シャバリエ クーロワール(単独登攀)

またまた雷雨を挟んだので余り雨の影響を受けていなさそうなという安易な?考えから日帰りで手軽に登れる?つもりでルートをめざしました。
しかし手軽に?ということから完全にナメていた為に結果的に今回のヨーロッパ登山の間で最も危険な登山となってしまいました。
どんな山でも必ず真剣に取り組まなければならいという基本中の基本を改めて考えさせられました。そういうことから完全に反省の登山でした。


シャバリエ クーロワール全景。赤線が登攀ライン


グランモンテ展望台からのドリュ針峰とモンブラン山群


同展望台からのシャルドネ針峰とアルジャンチェール針峰


プティ ベルト針峰


シャバリエ クーロワール取付
完全に取付く時間が遅すぎ! 強烈な日射しでクーロワールを抜けきるまで落石と雪崩のロシアンルーレット状態。当たらなかったのが不思議なくらいでした。


上部を望みます。


登ってきたクーロワールを見下ろします。

この後、クーロワールを抜けてプティベルトを登って下山しました。






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2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その③

2016-07-24 01:42:14 | プライベート
◎シャルドネ針峰(3824m) フォーブス稜(単独登攀)

途中、雨天での停滞などを経て次はシャルドネ針峰のフォーブス稜というルートを登りました。
人気のクラシックルートですが、前後に他のクライマーが全く居ない中での登山でした。
今年は雪が多く、その雪が融雪、凍結を繰り返していてリッジ上の激細リッジは猛烈な悪状況でした。


シャルドネ全景。赤線が登攀ライン


フォーブス稜をめざして・・・


北壁方面を眺めます。


フォーブス稜が近づいてきました。


フォーブス稜上を進みます。


北壁最上部のトラバースやアップダウンは圧巻でした。


更にリッジを進んで・・・


少々時間を要してシャルドネ針峰登頂!
バックにはアルジャンチェール針峰が聳えています。


山頂を越えて下山へ


急な岩壁を懸垂下降を繰り返したりしながら下降です。意外にも想像していた以上に苦労しましたがその分充実した登山でした。








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