熱く・楽しくいこう!

山岳ガイド 江口正徳の仕事と日常

2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その⑤

2016-07-24 10:22:29 | プライベート
◎アルジャンチェール針峰(3902m) 北壁(単独登攀)

ある程度の準備も整ったのでいよいよ何年も前から登りたいと願っていたルートに向かいました。ある意味今回のメインイベントです。
アルジャンチェール針峰自体は人気の山で、特にノーマルルートはアルプスの氷雪入門ルートとして多くの人に登られています(氷雪入門とは言ってもモンブランのノーマルルートなどよりだいぶ難しいですが・・・)。
しかし北壁はセラック崩壊の危険性や様々な危険要因が多く、またかなり奥まで入らないと壁の姿そのものさえも目にすることが出来ないので状況を把握しにくいということがあり最近はメッキリ登られることの少なく、シャモニの高山事務所に状況を聞きに言ってもいつも必ず「全く登れる状況でない」としか言われたことのないルートなのです。まあそうは言っても初めて写真で見た時に感じた強烈なインパクトに惹きつけられ登りたい気持ちを持ち続けていました。下でああだこうだと考えていてもラチがあかないので下見を経てようやくチャレンジ、そして登り切ることができました。
ただ昨年の猛暑の影響で上層の雪が落ち切ってしまって下層のブラックアイスの露出が激しくなっていました。その為所々アックスが跳ね返される程の堅い氷を登らなければならずフリーソロの僕としては常にスリップの恐怖に怯えながら一手一手一歩一歩慎重に登りました。


アルジャンチェール針峰北壁全景(下見時に撮影)。赤線は登攀ライン


さらに別角度からの北壁全景(ネット画像より)。同じく赤線が登攀ライン


登攀日、深夜に出発して手前のコルまで来ました。暗闇の中、北壁が迫ります。


取付きまできました。壁がデカイので傾斜が緩く見えますが、赤丸で囲った岩でも家くらいの大きさがあります。
もちろんトレースや最近登られたような形跡など皆無です。


いよいよ登攀開始。下部は柔らかめの氷雪を登り出します。上部からは時々落石、落氷があるので気が抜けません。


中間部からミックス帯に突入です。所々ガチガチのアイスが続いて緊張の登りです。


大きなセラックが横に見える高さまで登ってきました。セラック崩壊からの大きな落氷からは逃れられるので取りあえずホッとします。


しかし足元見ると取付きのデブリが真下に見えます。スリップしたら体の原型も残らないくらい木っ端みじんになりそうです。
これでも本当に危ない個所は写真が全く撮れていないのですが・・・


ようやく北壁を抜けて北西稜に合流です。僕の登ってきた足跡だけが残っています。


この後も急峻な北西稜が続いていて全く気の抜けない登りです。


1週間前に登ったシャルドネ針峰とギザギザノコギリのフォーブス稜。


山頂が近づいてきました。ノーマルルートから登ってきたクライマーの姿が見えます。出発してから初めて人の姿を見ました。


アルジャンチェール針峰登頂です。奥にはトリオレ針峰とモンドラン


同じく山頂からはマッターホルン、ダンブランシュ


別方面、ドロワット、ベルト針峰の各北壁が圧倒的な姿を見せています。


ノーマルルートを下山開始。トレースはバッチリですがカチカチの氷雪急斜面なのでやはり気が抜けません。


一番急な個所を下り終えて見上げます。雪の前剣の急斜面より遥かに急でそれをカチカチにしたくらいの難しさです。


アルジャンチェール氷河に降り立ちました。右側はクルトとその北壁。


氷河上を流れるせせらぎ。やっと平和な気持ちが蘇ってきました。まだまだ先は長いですが安堵感と満たされた気持ちを胸にノンビリ下山しました。

この登山を終えて改めて思ったことは「やはり独りで登って良かったなぁ~」ということ。
そして登る前いつも思い繰り返していた一文があります。
『アドベンチャーを単独で生きることを決心したからには、たとえ、万一、状況が予想どおりに展開せず、どんな事態が発生しても、最後まで単独でいる覚悟だ。つねに他人の援助を期待しているようでは、ソロ・クライミングの存在理由はない。』 ~トモ・チェセン~


改めて良い登山でした。








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2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その④

2016-07-24 02:08:45 | プライベート
◎プティ ベルト針峰(3512m) シャバリエ クーロワール(単独登攀)

またまた雷雨を挟んだので余り雨の影響を受けていなさそうなという安易な?考えから日帰りで手軽に登れる?つもりでルートをめざしました。
しかし手軽に?ということから完全にナメていた為に結果的に今回のヨーロッパ登山の間で最も危険な登山となってしまいました。
どんな山でも必ず真剣に取り組まなければならいという基本中の基本を改めて考えさせられました。そういうことから完全に反省の登山でした。


シャバリエ クーロワール全景。赤線が登攀ライン


グランモンテ展望台からのドリュ針峰とモンブラン山群


同展望台からのシャルドネ針峰とアルジャンチェール針峰


プティ ベルト針峰


シャバリエ クーロワール取付
完全に取付く時間が遅すぎ! 強烈な日射しでクーロワールを抜けきるまで落石と雪崩のロシアンルーレット状態。当たらなかったのが不思議なくらいでした。


上部を望みます。


登ってきたクーロワールを見下ろします。

この後、クーロワールを抜けてプティベルトを登って下山しました。






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2016 ヨーロッパアルプス登山紀行 その③

2016-07-24 01:42:14 | プライベート
◎シャルドネ針峰(3824m) フォーブス稜(単独登攀)

途中、雨天での停滞などを経て次はシャルドネ針峰のフォーブス稜というルートを登りました。
人気のクラシックルートですが、前後に他のクライマーが全く居ない中での登山でした。
今年は雪が多く、その雪が融雪、凍結を繰り返していてリッジ上の激細リッジは猛烈な悪状況でした。


シャルドネ全景。赤線が登攀ライン


フォーブス稜をめざして・・・


北壁方面を眺めます。


フォーブス稜が近づいてきました。


フォーブス稜上を進みます。


北壁最上部のトラバースやアップダウンは圧巻でした。


更にリッジを進んで・・・


少々時間を要してシャルドネ針峰登頂!
バックにはアルジャンチェール針峰が聳えています。


山頂を越えて下山へ


急な岩壁を懸垂下降を繰り返したりしながら下降です。意外にも想像していた以上に苦労しましたがその分充実した登山でした。








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