◎アルジャンチェール針峰(3902m) 北壁(単独登攀)
ある程度の準備も整ったのでいよいよ何年も前から登りたいと願っていたルートに向かいました。ある意味今回のメインイベントです。
アルジャンチェール針峰自体は人気の山で、特にノーマルルートはアルプスの氷雪入門ルートとして多くの人に登られています(氷雪入門とは言ってもモンブランのノーマルルートなどよりだいぶ難しいですが・・・)。
しかし北壁はセラック崩壊の危険性や様々な危険要因が多く、またかなり奥まで入らないと壁の姿そのものさえも目にすることが出来ないので状況を把握しにくいということがあり最近はメッキリ登られることの少なく、シャモニの高山事務所に状況を聞きに言ってもいつも必ず「全く登れる状況でない」としか言われたことのないルートなのです。まあそうは言っても初めて写真で見た時に感じた強烈なインパクトに惹きつけられ登りたい気持ちを持ち続けていました。下でああだこうだと考えていてもラチがあかないので下見を経てようやくチャレンジ、そして登り切ることができました。
ただ昨年の猛暑の影響で上層の雪が落ち切ってしまって下層のブラックアイスの露出が激しくなっていました。その為所々アックスが跳ね返される程の堅い氷を登らなければならずフリーソロの僕としては常にスリップの恐怖に怯えながら一手一手一歩一歩慎重に登りました。

アルジャンチェール針峰北壁全景(下見時に撮影)。赤線は登攀ライン

さらに別角度からの北壁全景(ネット画像より)。同じく赤線が登攀ライン

登攀日、深夜に出発して手前のコルまで来ました。暗闇の中、北壁が迫ります。

取付きまできました。壁がデカイので傾斜が緩く見えますが、赤丸で囲った岩でも家くらいの大きさがあります。
もちろんトレースや最近登られたような形跡など皆無です。

いよいよ登攀開始。下部は柔らかめの氷雪を登り出します。上部からは時々落石、落氷があるので気が抜けません。

中間部からミックス帯に突入です。所々ガチガチのアイスが続いて緊張の登りです。

大きなセラックが横に見える高さまで登ってきました。セラック崩壊からの大きな落氷からは逃れられるので取りあえずホッとします。

しかし足元見ると取付きのデブリが真下に見えます。スリップしたら体の原型も残らないくらい木っ端みじんになりそうです。
これでも本当に危ない個所は写真が全く撮れていないのですが・・・

ようやく北壁を抜けて北西稜に合流です。僕の登ってきた足跡だけが残っています。

この後も急峻な北西稜が続いていて全く気の抜けない登りです。

1週間前に登ったシャルドネ針峰とギザギザノコギリのフォーブス稜。

山頂が近づいてきました。ノーマルルートから登ってきたクライマーの姿が見えます。出発してから初めて人の姿を見ました。

アルジャンチェール針峰登頂です。奥にはトリオレ針峰とモンドラン

同じく山頂からはマッターホルン、ダンブランシュ

別方面、ドロワット、ベルト針峰の各北壁が圧倒的な姿を見せています。

ノーマルルートを下山開始。トレースはバッチリですがカチカチの氷雪急斜面なのでやはり気が抜けません。

一番急な個所を下り終えて見上げます。雪の前剣の急斜面より遥かに急でそれをカチカチにしたくらいの難しさです。

アルジャンチェール氷河に降り立ちました。右側はクルトとその北壁。

氷河上を流れるせせらぎ。やっと平和な気持ちが蘇ってきました。まだまだ先は長いですが安堵感と満たされた気持ちを胸にノンビリ下山しました。
この登山を終えて改めて思ったことは「やはり独りで登って良かったなぁ~」ということ。
そして登る前いつも思い繰り返していた一文があります。
『アドベンチャーを単独で生きることを決心したからには、たとえ、万一、状況が予想どおりに展開せず、どんな事態が発生しても、最後まで単独でいる覚悟だ。つねに他人の援助を期待しているようでは、ソロ・クライミングの存在理由はない。』 ~トモ・チェセン~
改めて良い登山でした。
ある程度の準備も整ったのでいよいよ何年も前から登りたいと願っていたルートに向かいました。ある意味今回のメインイベントです。
アルジャンチェール針峰自体は人気の山で、特にノーマルルートはアルプスの氷雪入門ルートとして多くの人に登られています(氷雪入門とは言ってもモンブランのノーマルルートなどよりだいぶ難しいですが・・・)。
しかし北壁はセラック崩壊の危険性や様々な危険要因が多く、またかなり奥まで入らないと壁の姿そのものさえも目にすることが出来ないので状況を把握しにくいということがあり最近はメッキリ登られることの少なく、シャモニの高山事務所に状況を聞きに言ってもいつも必ず「全く登れる状況でない」としか言われたことのないルートなのです。まあそうは言っても初めて写真で見た時に感じた強烈なインパクトに惹きつけられ登りたい気持ちを持ち続けていました。下でああだこうだと考えていてもラチがあかないので下見を経てようやくチャレンジ、そして登り切ることができました。
ただ昨年の猛暑の影響で上層の雪が落ち切ってしまって下層のブラックアイスの露出が激しくなっていました。その為所々アックスが跳ね返される程の堅い氷を登らなければならずフリーソロの僕としては常にスリップの恐怖に怯えながら一手一手一歩一歩慎重に登りました。

アルジャンチェール針峰北壁全景(下見時に撮影)。赤線は登攀ライン

さらに別角度からの北壁全景(ネット画像より)。同じく赤線が登攀ライン

登攀日、深夜に出発して手前のコルまで来ました。暗闇の中、北壁が迫ります。

取付きまできました。壁がデカイので傾斜が緩く見えますが、赤丸で囲った岩でも家くらいの大きさがあります。
もちろんトレースや最近登られたような形跡など皆無です。

いよいよ登攀開始。下部は柔らかめの氷雪を登り出します。上部からは時々落石、落氷があるので気が抜けません。

中間部からミックス帯に突入です。所々ガチガチのアイスが続いて緊張の登りです。

大きなセラックが横に見える高さまで登ってきました。セラック崩壊からの大きな落氷からは逃れられるので取りあえずホッとします。

しかし足元見ると取付きのデブリが真下に見えます。スリップしたら体の原型も残らないくらい木っ端みじんになりそうです。
これでも本当に危ない個所は写真が全く撮れていないのですが・・・

ようやく北壁を抜けて北西稜に合流です。僕の登ってきた足跡だけが残っています。

この後も急峻な北西稜が続いていて全く気の抜けない登りです。

1週間前に登ったシャルドネ針峰とギザギザノコギリのフォーブス稜。

山頂が近づいてきました。ノーマルルートから登ってきたクライマーの姿が見えます。出発してから初めて人の姿を見ました。

アルジャンチェール針峰登頂です。奥にはトリオレ針峰とモンドラン

同じく山頂からはマッターホルン、ダンブランシュ

別方面、ドロワット、ベルト針峰の各北壁が圧倒的な姿を見せています。

ノーマルルートを下山開始。トレースはバッチリですがカチカチの氷雪急斜面なのでやはり気が抜けません。

一番急な個所を下り終えて見上げます。雪の前剣の急斜面より遥かに急でそれをカチカチにしたくらいの難しさです。

アルジャンチェール氷河に降り立ちました。右側はクルトとその北壁。

氷河上を流れるせせらぎ。やっと平和な気持ちが蘇ってきました。まだまだ先は長いですが安堵感と満たされた気持ちを胸にノンビリ下山しました。
この登山を終えて改めて思ったことは「やはり独りで登って良かったなぁ~」ということ。
そして登る前いつも思い繰り返していた一文があります。
『アドベンチャーを単独で生きることを決心したからには、たとえ、万一、状況が予想どおりに展開せず、どんな事態が発生しても、最後まで単独でいる覚悟だ。つねに他人の援助を期待しているようでは、ソロ・クライミングの存在理由はない。』 ~トモ・チェセン~
改めて良い登山でした。