社会をゆがめる巨額の余剰財産。
今日1月7日の新聞には政府与党「消費増税素案を決定」とあった。
震災以降苦しんでいる国民が大勢いる現実をよそに民主党政府は着々と「亡国の政策」にひた走っている。
前回に引き続き武田知弘氏の論を引用してみる。
今日本には個人の金融資産が1400兆円もある。この大半は金持ちが持っている。
そして企業の内部留保金が約300兆円。
合わせて1700兆円の内、1000兆円ほどは当座必要なものではない余剰資産とみることができる。
1000兆円は現在の国税収入の30年分にもあたる巨額なものだ。
今の日本で、低所得者や中小企業、零細自営業者をさらに苦しめることになる消費増税なのか、金持ち・大企業が普通に税金を払うべきなのか、答えはおのずと見えているのではないか。
それを実行するのが政府であり、政治家の役目だ。
大多数の持たざる人々が生きていけるようにするのが政治であり、金持ちや強い者をさらに優遇する政治は必要ない。
武田氏は1000兆円の貯蓄というのは日本の経済キャパからすると大きすぎると言う。
日本は先進国の中では1人当たりの所得も消費も決して多くはない。なのに貯蓄だけは飛びぬけて多いのだ。
また企業の内部留保金も米国の約2倍で、これは異常な状態だという。
「貯蓄が多すぎる」ということは経済にとって決して好ましい状態ではない。お金というものはそれが使われることによって、経済活動を活発化させるものであって、溜め込んで使わなければ経済は停滞してしまう。
お金はこの世で使うものであって、あの世には持っていけない。
貯蓄が増えるその数字をながめてにんまりする「守銭奴」を人々は軽蔑してきたはずなのに。これは国を問わない一般的な感覚だったはずだが。
日本は世界最高レベルの工業国で輸出大国だ。だが輸出して稼いだお金は使われないまま貯蓄として積み上げられている。
国内で消費が増えないので景気は上向かない。
町で人々にマイクを向けれれば「景気をよくしてほしい」と答える人が殆どなのに、この間政治がやってきたことは景気を悪くすることばかりだったわけだ。
日本の労働時間は先進国のなかで最も長い。そして長いだけでなくよく働く仕事人間ばかりだ。
なのにホームレスやネットカフェ難民が生じるというのはこの「守銭奴資本主義」のせいである。
米国人が「アメリカンドリーム」の空しさに気づき、99パーセントの側の権利を取り戻す運動に立ち上がったように、日本人も「ワーキングプアー」のカラクリに気づくべきだ。
バブル崩壊後に日本では大企業、高額所得者に大幅な減税が実施された。
1980年代後半から90年代といえば、ソ連崩壊=社会主義の敗北という認識の中で、再び資本主義の横暴が世界を覆い始めた頃と合致する。
小泉・竹中の「構造改革」時代、次々と大企業と資産家、投資家を優遇する法改定が行われ、その逆に中間層以下にとっての実質増税が実施されてきた。
それを列挙すると
①連結納税制度の導入(2002年)=大企業にとって大減税=グループ全体で所得の通算ができるようになったので、グループ全体では大幅な減税となった。
②相続税の大減税(2003年)=資産家にとって大減税=税率は15ポイントも下げられ、近年まれに見る大減税となった。
③新証券税制(2003年)=投資家にとって大減税=上場企業の株式売買については一定期間無税にするなど投資に対するあからさまな大減税になった。
④配偶者特別控除の削減(2004年)=妻に収入がない低所得家庭にとって大増税=配偶者特別控除には所得制限があったので、高額所得者にはまったく影響がなかった。
⑤役員ボーナス税制の改正(2006年)=会社の役員にとって大増収=役員ボーナスに法人税が課せられないようになったため、特に大企業の役員はボーナス額が激増した。
⑥定率減税の廃止(2007年)=中間層以下にとって大増税=減税額に上限があったので、高額所得者にはあまり減税になっていなかった。しかし廃止は中間層以下の人々にとって負担が大きかった。
これらの問題ある改正法がスルスルと国会で決められてしまった背景には、小選挙区制の導入により、中間層及びそれ以下の国民の利益を代弁する政治家が排除されてきたという背景がある。
今回の消費税増税にあたっては、政府の側が身を切る内容として「国会議員の定数削減」を挙げているが、今の小選挙区制度のまま定数削減をすれば、野田のクローンのような議員が殆どを占めてしまう危機がやってくる。
それこそ今の政府与党の狙いでもある。