以下は先日発売された月刊誌正論(840円)今月号に、トランプ「保護主義」「孤立主義」のウソ、と題して掲載されている武者陵司氏の論文からである。
彼の論文は私がトランプ大統領に対して感じていた考えを見事に論文化してくれていると私の友人は言った。
この論文一つをとっても、例えば貴方が朝日新聞に月間購読料約5,000円を払いNHKに視聴料を払っても全く読むことは出来ない論文である事を痛感するだろう。
つまり21世紀に生きて知性を持って事に相対し常に物事の真相を究めたいと考えている人間は全て、正論、Voice,WiLL、HANADAなどの月刊誌(平均800円)を読まなければ、政治や経済、外交、日本と世界について語る事は出来ない事を、特に、マスメディアで生計を立てている人間たちは知らなければならないのである。
アメリカ衰退論の誤り
現在の国際情勢において最重要の問題は、世界の覇権国であるアメリカが衰退しつつあるのか、隆盛の過程にあるのか、であろう。
多くの政治学者や評論家は、前者とみる。
オバマ大統領がアメリカはもはや世界の警察官であり続けることはできない、と述べて以降、アメリカは衰勢の大国とみなされることがむしろ一般的になっている。
Gゼロ論など、米国が覇権国から普通の大国に滑り落ちたなどとする見解すら、多くの人々に共有されつつある。
例えばビル・エモット氏はトランプ氏の外交政策がナイーブ(稚拙)、つまり短期的、実用的利益優先で長期的目標や価値観を放棄したように見えるのは、米国の力が衰えつつあるという本能的判断に根差したもの、と論じている。(毎日新聞朝刊8月12日付)
圧倒的なアメリカの経済力
しかし、経済や産業競争力、金融や株式市場にひとたび目を転じると、景観は一変する。
アメリカの独り勝ち色がますます強まっている、というものが実態である。
3~4%の経済成長率が視野に入っているのは先進国の中ではアメリカだけである。
失業率は4%を切り、完全雇用をほぼ実現している。
低迷していた物価もFRBの目標の2%がほぼ達成された。
日本と欧州はゼロ金利にもかかわらずインフレ率が高まらず、長期金利の低迷が続き、銀行の利ザヤが極小となり、信用創造が事実上停止する「流動性の罠」に陥ったままである。
その中でアメリカだけは、長期金利が上昇に転じ十分な長短利ザヤの下で、銀行貸し出しが増加し、金融機関の収益体質は大きく強化されている。
株価はトランプ大統領が当選して以降1年余りで40%上昇し、2月のVIXクラッシュで12%下落したものの、すでにほぼ下落を取り戻すなど、世界最高の成績である。
2019年6月に、アメリカは10年という戦後最長の景気拡大記録を更新することは、確実視されているのだ。
好況なのに物価も金利も抑制されている、だから景気を殺す金融引き締めも、バブルの崩壊も起きようがないのである。
この経済力を支えているものがインターネット、グラウドコンピューティング、スマホ、AIなどを駆使した新産業革命における圧倒的リーダーシップである。
中国を除く世界のインターネット空間はアップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトなど、アメリカのインターネットープラットフォーマーに独占支配され、世界の株式市場ではこれらプラットフォーマーが時価総額トップテンをほぼ独占している。
新産業革命がトリガーとなり新ビジネスとイノベーションが世界的に巻き起こっているが、その多くもアメリカ発である。
この稿続く。