日本人が等身大の日本を誤解し、過小評価し、異常ともいえるほど自己卑下しているのを正したい
2017年10月04日
以下は前章のつづきである。
米国と日本が“二人勝ち”する
武者陵司
〈日本経済を停滞させる悲観論者に耳を傾けるな。歴史的追い風は吹いている〉
日本を誤解するな
『結局、勝ち続けるアメリカ経済 一人負けする中国経済』(講談社+α新書)を上梓しました。
本書に込めたもっとも重要なメッセージは、日本人が等身大の日本を誤解し、過小評価し、異常ともいえるほど自己卑下しているのを正したいということです。
1990年のバブル経済ピークのとき、日本人は著しく自己を過大評価し、傲慢になり、そのままバブルが崩壊した。
そのときの痛手とは、まったく対照的です。
正しい評価に基づく正しい政策、あるいは正しい企業戦略・投資対応が必要です。
かつての過大評価して傲慢であった日本は確かに問題でしたが、それと同時に、現代の異常なまでの過小評価・自己卑下の状態も、また問題なのです。
経済や産業の最前線で、何が起こっているのか。
この現状を知らずに、暗い見通しばかりを述べる悲観論者が非常に多い。
バブル経済崩壊後、20年にわたり停滞し、困難に陥った日本経済。
この過去が、ずっと続いていくだろうという、ある意味、刷り込まれた考え方にとらわれ悲観論が唱えられています。
これはあたかも「バックミラー」を見ながら車を運転しているようなもの。
この考え方は大きな間違いだと断言します。
私は思想家でもなければ、経済理論家でもありません。
「実証的分析者」だと自負しています。
一番現実を正しく説明できる論理や理屈を常に模索し検証している。
そういう私からすると、荒唐無稽な議論が世の中にあまりにも多く氾濫している。
一つの例をあげると「日本の財政赤字は死に至る病状態で、財政規律を守り、堅実な財政再建をすべきだ」と。
国の借金を早急に減らすべきで、それによって日々の生活が苦しくなるかもしれないが、それに甘んじなければいけない……。
これは的外れな議論です。
日本経済の最大の問題は、財政赤字ではありません。
民間企業や家庭が世界最大の過剰貯蓄を積み上げていることに問題の根っこがあります。
お金を稼ぐ一方で、稼いだお金を使わないことが続けば、いくら健全な財政状態だとしても経済はどんどん衰退していきます。
過剰な資本がありながら、民間で需要が創造できない以上、政府が代わりに借金をして、資本を実体経済の循環に戻していく、あるいは需要を創造していく。
民間に過剰貯蓄があり、政府もお金をプールしていたら金余り状態は一段と深刻化し、経済はとんでもない状態に陥ってしまうのです。
*読者は、私の「文明のターンテーブル」が、どれほど正しかったかを、この武者氏の論文で再認識するはずである。*
この稿続く。
2021/4/30 in Nara