文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

アジアでの紛争の可能性は多くの人が思うよりずっと高いと思う。最大のリスクは台湾だ。習主席は引退前に台湾を奪還すると言った。

2019年11月11日 09時57分32秒 | 全般
以下は11/9の日経新聞に掲載された米スタンフォード大シニアフェロー、フランシス・フクヤマ氏へのインタビュー記事からである。 
勝者の民主主義に内憂 
1989年のベルリンの壁崩壊から9日で30年になる。 
東西冷戦を卒業した世界は、民主主義のきしみと米国と中国による角逐の時代を迎えている。 
今後の世界をどう読むか、識者に聞いた。 
―壁崩壊後の世界はどう進化しましたか。   
「数多くの進展があったのは疑う余地がない。70年以来、民主主義国の数は30から110に増え経済規模は4倍に拡大した。私の師であるサミュエル・ハンチントン氏が 『民主主義の第三の波』と呼ぶ期間の真ん中に、壁の崩壊があった」  
―その民主主義が揺らいでいるようです。 
「最近の10年間に起きているのは民主主義のリセッション(後退)だ。トランプ大統領を生んだ米国を筆頭に洗練された民主主義国にポピュリスム(大衆迎合)の動きが広がった。驚くべき変化だ。中国とロシアが安定した専制体制を築き、デジタルの技術を利用して民主主義の自信をくじこうとしている」  
―なぜ揺り戻しが生まれたのでしょうか。 
「国際化で誰でも豊かになれるはずだったのに、富が均等に広がっていない。労働者層の収入は停滞し、途上国に雇用を奪われている。右翼政党は移民流入や国家の主体性の喪失でエリートだけが恩恵を得たと陰謀説を流している。経済より文化の側面が大きい」  
―著書の「歴史の終わり」で民主主義の勝利を指摘しました。楽観的にすぎませんでしたか。 
「30年単位では私の説は正しかった。我々は共産主義に至る前に立ち止まった。市場経済と連携した民主主義を上回る社会制度は見つからないが、それが全てを満たすものではない。民主主義の内部に難問がある」 
―中国の国家資本主義が台頭しています。   
至岐山(ワン・チーシャン)現国家副主席と会談した時に『共産党だけが中国を支配できる』と言われた。習近平(シー・ジンピン)国家主席の最大の懸念は党の将来だ。ビッグデータや機械学習で個々人の動きを逐一監視し、全体主義を構築しようとしている」  
―成功しますか。   
「分からない。ある段階で人々が反乱を始めるかもしれない。中国経済は6%成長というが、多くの論者は実際は3~4%だという。景気後退に陥っても政権に人々が忠実かとうかだ」  
―米国と中国が激しく競い始めました。   
「米国は確実に敵対的な対中関係に進んでいる。中国は巨額の知的財産権の侵害や産業補助金など、公正な競争をしていない。もしトランプ氏が20年の選挙で敗れても米中は以前の友好的な関係に戻らない。中国と西側経済圏のデカップリング(分離)はやむを得ない。ハイテクの分野ではそれが不可欠だ」  
―実際の衝突も起こりうるのですか。 
「アジアでの紛争の可能性は多くの人が思うよりずっと高いと思う。最大のリスクは台湾だ。習主席は引退前に台湾を奪還すると言った。米国の台湾への関与も疑わしい」  
―トランプ大統領の3年で起きた変化は。   
「トランプ氏は民主主義国の指導者より北朝鮮やロシア、中国の独裁的なリーダーを好む。多国開協力の意義を理解せず全てを同時に攻撃している。米国以外の国々が多国間協力を前に進めなければならない。トランプ氏が再選したら事態は深刻だ。国際機関の弱体化は避けられない」  
―日本の課題は。   
「アジアでもっと強い役割を担うべきだ。中国の脅威を念頭に自衛隊を再構成し、同様の脅威にさらされる国との連帯関係を強化すべきだ。日韓が根深い論争に陥っているのは深刻な過ちだ」  
(聞き手はワシントン支局長 菅野幹雄)

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