以下は昨日発売された月刊誌「正論」の巻頭を飾る、兼原信克・元国家安全保障局次長と杉山大志キャノングローバル戦略研究所研究主幹の対談特集からである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
日本のみならず世界中の先進諸国は、これまでの自分達の愚劣さについて、暗澹たる思いを抱くはずである。
月刊誌「正論」は本稿を含む本物の論文が満載されていながら、何と!950円(税込み)なのである。
本誌も、本ほど安いものはない、を実証している。
活字が読める日本国民全員は最寄りの書店に購読に向かわなければならない。
何故なら、そうしなければ、貴方は日本と世界について無知蒙昧な人間になるからである。
見出し以外の文中強調は私。
以下は「脱炭素政策が作り出す安全保障の脆弱性 シーレーンの安全確保が急務」の続きである。
GDPの三%を脱炭素に投入
杉山
いまの日本政府のエネルギー政策は環境への配慮が最優先になっています。
岸田文雄首相肝いりのグリーン・トランスフォーメーション (GX)が国の基本方針として閣議決定されました。
関連する法案も今通常国会で可決される見通しです。
GXとは、ひらたくいえば「脱炭素」です。
官民あわせて10年で150兆円を脱炭素の社会実現に向けて投資するとのことで、年間15兆円の投資という計算ですが、これはGDP(国内総生産)の3%にあたります。
しかも、政府はこの動きを支持するため新たな国債を発行します。
兼原
防衛省に聞かせてやりたい話ですね。
バイデン政権もGXやインフラや半導体に巨額の補助を出していますが、みな、国家安全保障と絡めて考えています。
日本ではGXと安全保障産業政策が全く絡んでいない。
杉山
防衛費がGDPの2%弱になる、と大騒ぎしているときに、それを上回るGDPの3%をグリーン投資につぎ込むという話が、ノーマークで国会を通ってしまいそうな気配なのです。これは一体、何なのか。
GXの目玉はやはり太陽光発電で、さらにはその電気を使って水素をつくるという話も出ています。
「化石燃料の輸入が減るので安全保障上もプラスだ」と言う人もいますが、実際には幾重にも問題があります。
まず太陽光発電は高くつきます。
近年、太陽光や風力の電気が安くなったといわれますが、ドイツやデンマーク、あるいは米カリフォルニア州など、再生可能エネルギーの導入を進めた国・地域ほど電気代が高騰しているのは動かぬ事実です。
不安定な電源をいくら入れても、安定的な電源が別途必要になり、二重投資にならざるを得ないわけです。
そうしてエネルギーのコストが高くなれば、産業は逃げていきます。
いま米国で投資が起きているのはレッド・ステート、すなわち共和党知事のいる内陸部の州です。
エネルギーの安いそれらの州に、欧州からも企業が集まっている。
日本の産業も空洞化が進んでいますが、エネルギー価格が高いというのも大きな要因でしょう。
また現在、世界の太陽光パネルの8割が中国製ですが、数年以内に欧州の企業も製造から撤退するため、95%が中国製になる見通しです。
*気候変動・脱炭素運動は、中国がカナダ人国際詐欺師モーリス・ストロングと仕組み、似非モラリストの馬鹿なアル・ゴアが加担し、中国に支配されていた国連が強制し出した。
中国の策略は、見事に結実している。似非モラリズムに毒されている先進諸国が如何に愚劣になっているかの馬鹿げた証明である*
中国製のうち半分ほどは新疆ウイグル自治区製で、これを輸入することは人権上も大問題です。
太陽光発電についての不安を言い出すと際限がありません。
自衛隊基地のそばにもメガソーラーが多数あり、通信の傍受・妨害やテロの基地になりかねない。
複数の太陽光発電所の発電を一斉に止められたら周辺は大停電になります。
そうしたことが公の場でほとんど検討されていません。
兼原
土地利用規制法に関しては菅義偉政権のときに成立しましたが、もともとは地方議会で最初に火がついた話です。
先ほど触れたように沖縄県の宮古島であったような、中国資本の太陽光発電施設のために自衛隊の駐屯地が場所を変えざるを得なかった。
中国資本はおそらく、太陽光発電にしても当初は公明正大に参入してくるでしょう。
ただ、3人以上の中国人がいる企業には必ず共産党の細胞をつくらねばならず、党の細胞ができてしまうと党には絶対服従ですから、もう日本の憲法や法律など関係なく、平気でいろんなことをやるわけで、後からこの人たちが入ってきたらアウトです。
土地利用規制法がザル法だ、という批判はありますが、ともかく施行されたのは立派なこと。
私は「ナフタリン法」と呼んでいますが、法律があることに意義があるのです。
ナフタリンは置いてにおけば虫が寄って来ませんから。
経産省の太陽光に補助金を付けている部署は、どこに自衛隊の基地があるとかいうことをそもそも考えていませんでした。
やっと最近は経産省も安全保障の土俵に乗ってきましたが、まだまだこれからです。
国の根幹であるエネルギーの分野と安全保障とのすり合わせが一番、遅れています。
これはGHQの日本非軍事化政策の爪痕です。
戦後、GHQが入ってきて陸海車がつぶされ、「一切の軍事をやめろ」と言われて全ての官庁が軍事関連業務をやめてしまった。
その後「再軍備しろ」と言われたときに手を挙げたのは外務省、警察庁くらいで、他の役所は軍事とは完全に関係が切れていたのです。
この稿続く。