純粋さと清らかさを重んじるという心から、かつて神主は染めも飾りもしていない白い装束(浄衣)だけを服装として用いていました。しかし明治時代以降、神社界の規則が整備されるのにともなって狩衣(かりぎぬ)装束などが用いられるようになり、今では色・文様に富んだ様々な装束が用いられています。
普段の祭事で用いるのは「常装(じょうそう)」という装束で、いわゆる狩衣はこれに当たります。平安時代には貴族の正式な服装であったということで、当時はその人の位・家柄・年齢などで色や文様がおおまかに決まっていたようですが、今はそのような厳しさはありません。
登場する場面が多様な事もあり、色・文様は各々の神社・神主の裁量によって用いられています。色で言えば青・緑・薄紫などは平安時代の四季通用の重ね色目にも近く、狩衣によく用いられています。
狩衣。文様は「三重襷に花菱」
「雲鶴」紋。ポピュラーな紋のひとつです
文様は実にたくさんの種類がありますが、鳥や草花を象ったものが多くを占めます。まさに「花鳥風月」と言う通り、日本人が古来よりどれだけ自然を大切にしてきたか、ということを表しているようです。神社では他に、神社の紋「神紋」を狩衣に用いているところもあります。
一方で大祭などの恒例の祭事には、神主の位ごとに定められた「正装(せいそう)」や「礼装(れいそう)」、また大祓などの祭事には冒頭にもお話した「浄衣(じょうえ)」を用いることもあります。現在は神社にとって、伝統を残しつつももっとも色や文様にあふれた時代だといえそうです。
今月3日、小池弁財天社での祭典。浄衣を用いました