夏目漱石は1894年(明治27年)、高等師範学校の英語教師をしていた頃神経を病み、友人の菅虎雄のすすめもあり、円覚寺塔頭の一つである帰源院に止宿し、老師 釈(洪獄)宗演のもとで参禅しています。結局、悟りは得られず帰京しますが、その後の創作活動には影響を与えたようです。漱石といえども簡単には悟りの境地には達しなかったようですね。
「仏性は白き桔梗にこそあらめ」漱石の句ですが、なんとなくその気持ちはわかります。
漱石が鎌倉に行った当時、横須賀線は1889年(明治22年)に開通していますが、北鎌倉駅が出来たのは1927年(昭和2年)でしかも単線、一日4往復でしたので、現在の円覚寺門前の景色とは全く違っていたのではないでしょうか。漱石の『門』の抜粋です。
「山門を入ると、左右には大きな杉があって、高く空を遮っているために、路が急に暗くなった。その陰気な空気に触れた時、宗助は世の中と寺の中との区別を急に覚った。静かな境内の入り口に立った彼は、始めて風邪を意識する場合に似た一種の寒気を催した。」
今でこそ人気の観光地ですが、百年以上前は鬱蒼とした森で修行僧ぐらいしか訪ねる人はなかった筈です。一度、漱石の気持ちになって訪ねてみるのも良いでしょう。
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