木村忠啓の大江戸百花繚乱

スポーツ時代小説を中心に書いている木村忠啓のブログです。

英傑たちの肖像写真

2010年04月21日 | 江戸の写真
上野公園の西郷さんの銅像は本人とは似ていない、と言ったら驚く人も多いのではないか。
実は、西郷隆盛の写真は後世に残されていない。
だから、私たちが日頃慣れ親しんだ西郷さんのイメージは不確かなものである。
最近ではテレビなどでも取り上げられ、よく知られた史実となりつつあるが、古写真史にはこの手の話が散在する。

その古写真史に並々ならぬ造詣をお持ちの研究家の森重和雄さんが、共著で本を著された。
「英傑たちの肖像写真」というタイトルの本である。
英傑というのは、明治天皇、西郷隆盛、土方歳三、近藤勇、坂本龍馬の五人。
このうち、近藤勇の項を森重さんが担当された。
写真に少し詳しい方なら、坂本龍馬の写真は上野彦馬が撮ったというのが定説になっているが、その説が正確ではないことを教えてくれたのが森重さんであった。

幕末の写真史というのは、最近になって急に研究が進んできた分野で、ひと昔の本は一部の著者を除いて大抵が嘘八百である。

理由としては、二つあると思う。

写真史に関しては残された文献が非常に少なく、推理をしながら検証を進めていく、という地味な作業が不可欠であった。
学問としてしっかり確立されていない分野でそんな面倒なことをする人はごく限られた人であった。
どれが本当でどれが嘘だか、ほとんどの人が分からなかったから、平気で詐欺のような嘘がまかり通ったのである。
詐欺というのは言葉の綾ではなく、イカサマ写真が高い値段で売られたり、本当の詐欺もあった。

もうひとつは、各人の研究が限定されていた点が挙げられる。
たとえば、故宇高随生氏は優れた古写真研究家だが、今ではあまり知られていない。それというのも、インターネットなどの情報網が確立される前はライフワークとして研究しても個人の知りうる範囲が限られていた。
一生を掛けても、決定打が打てなかったのである。

今は机の前で、かなりのことが分かる。
だが、最も大事なことは現場に行かなければ分からない。
この点は肝心である。
インターネットで手品の種を知ることができても、手品ができるようにはならない。
また、インターネットでは玉石混合で、素人には、どれが玉で、どれが石だか判断できない。

この「英傑たちの肖像」は薀蓄の固まりである。
だが、決して重箱の隅を突付いた内容ではない。
既に分かりきったジャンルでの新事実を発見するには、細かい指摘になるのだが、古写真については、まだ分からない点が多い。
目から鱗がドカン、ドカンと落ちる内容に違いない。
本は4月末販売開始の予定。

写真が紐解く幕末・明治(森重和雄さんのHP)

土方歳三記念館日記(執筆者のおひとりである土方愛さんのHP。 本の予約はこちらにアップされているチラシからできます



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