玄関の扉を開けると、目の前を銀色に煌めく細い糸が横切った。
その蜘蛛の糸の輝きで、今日の天気が良いことを知った。
「蜘蛛ってさあ、飛ぶんだよ。知ってた?」
孫の幸次が何日か前、自慢げに云っていたことを思い出した。
「羽も無いのに蜘蛛が飛べるわけないじゃん」小学生のお姉ちゃんがバッサリと否定したのに屈せず、幼い幸次はさらに反論した。
「あのね、お尻から糸を伸ばしてね、それに風を受けて遠くへ飛んでいくんだよ」
私も、お姉ちゃんと同じく、内心 (飛べるわけがない) と思っていたので、飛んでいるのか、飛ばされているのかは別にして、蜘蛛が糸を利用して空中を移動するという事実を「風を受けて」と云う文学的な表現を使って、説明したことに驚いたのだ。
「何処を歩いてくるの?」彩(あや)が顔も見せずに訊いてきたのに
「高専裏」とだけ答えて扉を閉めた。
昨夜、どうでもよいことで軽い口論をしたのが後を引いているのだ。
足の指を骨折して以来、歩くことができずに治療に専念していたため、2ケ月ぶりくらいのウォーキングになる。
医師から「もう大丈夫」と言われてからも、時折、骨折部に痛痒いような微妙な感覚があり、無理を自重してきていた。
団地の隘路から国道に出た途端、青い空が広がった。
昨夜、台風崩れの低気圧が町の南側を通り過ぎた時に、何もかもさらっていったようで、空には雲一つ浮かんでいない。
その蜘蛛の糸の輝きで、今日の天気が良いことを知った。
「蜘蛛ってさあ、飛ぶんだよ。知ってた?」
孫の幸次が何日か前、自慢げに云っていたことを思い出した。
「羽も無いのに蜘蛛が飛べるわけないじゃん」小学生のお姉ちゃんがバッサリと否定したのに屈せず、幼い幸次はさらに反論した。
「あのね、お尻から糸を伸ばしてね、それに風を受けて遠くへ飛んでいくんだよ」
私も、お姉ちゃんと同じく、内心 (飛べるわけがない) と思っていたので、飛んでいるのか、飛ばされているのかは別にして、蜘蛛が糸を利用して空中を移動するという事実を「風を受けて」と云う文学的な表現を使って、説明したことに驚いたのだ。
「何処を歩いてくるの?」彩(あや)が顔も見せずに訊いてきたのに
「高専裏」とだけ答えて扉を閉めた。
昨夜、どうでもよいことで軽い口論をしたのが後を引いているのだ。
足の指を骨折して以来、歩くことができずに治療に専念していたため、2ケ月ぶりくらいのウォーキングになる。
医師から「もう大丈夫」と言われてからも、時折、骨折部に痛痒いような微妙な感覚があり、無理を自重してきていた。
団地の隘路から国道に出た途端、青い空が広がった。
昨夜、台風崩れの低気圧が町の南側を通り過ぎた時に、何もかもさらっていったようで、空には雲一つ浮かんでいない。