
この本は、下の朝日新聞の記事や日頃からメディアの示すグラフや、政党支持率、選挙の勝ち負け予想に関して疑問を持っていたので、興味があり予約した。
本書はむろん、数字でのごまかしを推奨する本ではない。その手口を認識させ、みんながダマされないようにする本だ。
その後類書もいろいろ出ているが、本書は半世紀たっても見劣りしない。重要なポイントはすでに完全に網羅されている。
むしろ古い分、書き方がまんべんなく素直な面すらあり、それも売れ続けている一因かもしれない。だます手口は半世紀前(いやそれ以前)からほぼ変わっていない。標本選びの偏り、平均値を使ったごまかし、グラフのインチキ、相関と因果関係の混同等々。
本書で書かれた手口は、未(いま)だに後を絶たない。本書の有用性はまったく衰えていないのだ。 それはだまされる側にも進歩がないせいでもある。
が、必ずしもみんながトロいから(だけ)ではない。新しい無垢(むく)な(ダマされやすい)世代が次々に生まれるし、またすでに知っているはずの人々も絶えず復習が必要なのだ。
一部では、皮相的な理解が増えてありがた迷惑な面もある。グラフ縦軸の原点をゼロ以外にしただけで、「インチキだ!」とネットで騒ぐ人が多いのも一例だ。
確かにウソ「にも」使える手法だが、目的次第ではまったく問題ではないのだ。が、形式的にせよ統計詐欺について警戒心が高まっているのは歓迎だ。みなさんも本書などで、情報の賢い受信者になろう!
あともう一つ。初版刊行時とはちがい、いまや表計算ソフトで誰もが数字をいじりグラフを作る機会が激増している。
自分の部署の業績をよく見せようと、本書の手口をつい使いたくなることも多いはず。賢い受け手となるだけでなく、そういう悪魔のささやきを退け、情報の正しい発信者となるためにも、改めて本書などをお読みあれ。それが情報リテラシーなるものの基本なのだから。
目次は本の裏表紙にあり、以下の通り

まず、抗ヒスタミン剤の効果に関する調査について、しょっぱなから「はしがき」で「・・・平均とか、相関関係とか、トレンドとか、グラフなどは、かならずしも示されている通りのものではない。目に見える以上の意味があるかもしれないし、見かけより内容がないかもしれないのである。」などと書かれていて、手厳しい。しかし、私も全く同感である。
この本は、統計の本としては名著らしく、1968年第1刷発行で、この頃からこのような指摘をしていたことに感心する。
内容としては、色々な事例がいっぱい載っている。いつものように、この本の中から、私の興味を引いた文章を以下に示す。
ー(かたよりはサンプルにつきもの)「”豆について” 赤と白のまざり具合が一様であるとすれば、一握りの豆を数えるだけで良いのである。・・・・もしそういうサンプルがえられなければ、賢明な当て推量の方がむしろはるかに正確であろう。」
ー(かたよりはサンプルにつきもの)「歯を磨かない人は社会的違反者だと教えられている女性が、知らない人に、自分はキチンと歯を磨いていないなどと打ち明けるものだろうか?」
ー(かたよりはサンプルにつきもの)「だから、例のエール大学卒業生の平均所得の数字(雑誌タイムの記事)は価値がないのである。また、同じ理由で新聞や雑誌にのっている非常に多くの事柄には、もともと意味のないことが明らかなのである」
ー(かたよりはサンプルにつきもの)1932年の大統領選における事前の当選予測(リアリーダイジェスト誌)が大外れだったこと(ルーズベルトが負けると予測)”1932年から大統領選挙の予測は大外れしていたのだ!”
ー(かたよりはサンプルにつきもの)「そこで街へでる。しかし、それでは、出不精な人がつかまえられないのでサンプルはかたよる。昼間、一軒一軒訪問すると、今度は大部分の勤め人がはいってこない。」
ー(”平均”でだます法)「ある数字が平均値であると聞いても、それがどういった種類の平均値ーーいわゆる平均値(算術平均)、中央値(中位数)、最頻値(並み数)のいうちのどれーーであるかがわからなければ、あまり意味がないのだ。」
ー(”平均”でだます法)「この会社で、最も多い給料は年2000ドルである。しかし、例の通り他の数字よりも中央値の方が、この状態をよく説明している。すなわち、3000ドル以上の人が半分いて、あとの半数は3000ドル以下なのだ。」
ー(”平均”でだます法)「平均賃金の数字を見たら、まず、質問することであるーー平均の書類は?その数字に含まれている人は?と。」
ー(小さい数字はないも同然)この場合の使用者のテストグループはたった12人からなっていたのである。」
ー(大山鳴動 ネズミ一匹)誤解のないように十分に表せば、ピーターのIQは98±3となろうし、リンダのは101±3となろう。”数字には必ず誤差がある。それを踏まえて数字を見る必要がある。ピーターのIQは98でリンダが101といっても、誤差を考慮するとリンダのほうが賢いとはかならずしも言えない”
ー(グラフでだまそう)本書では、色々なグラフの例がわかりやすい形で載っているが、著作権の問題があるのでそれを写真にとって載せるのは控える。下に、ほぼ同様なことを表す自作のグラフを載せる。
下のように縦軸を0(ゼロ)点からでなく途中の数字からとして違いを大きく見せたり、棒グラフを途中で切って違いを大きく見せる。

このようなグラフは、実は私はエンジニアなので、仕事上のテクニックとして自分の成果を相手により伝えるために、このような技術を若い頃に叩き込まれる。
ー(こじつけた数字)「罹病率や患者数よりは、死亡率あるいは死者数の方が、流行性感冒の影響をはかる尺度としては、より正確であることがしばしばあるという事実だ。」
以上、いつも私がメディアに対して思っていることを丁寧に、くどいくらいに色々示してある本だ。エンジニアの方はすでにわかっていることだと思うが、そうでない方はぜひこの本を読んで、メディアや作者に騙されないようにしてほしい。
最後に、つけくわえると、最近の選挙でトランプがアメリカで圧勝したとか、そうでないとか、政党の支持率が数%上回るとか増えたとか報道されるが、この本意書かれた誤差などを考慮すると、かならずしもそうではないことを認識しておくことが大事だろう。だいたい選挙などの投票率が50%を割ったり、少しだけうわまわっただけの状態では、民意を反映されたとは言えないと私は思う。
Amazonの紹介のリンクも紹介しておく。
世の中には統計が氾濫している。「平均」とか「相関関係」とか言って数字やグラフを示されると、怪しい話も信じたくなる。
しかし、統計数字やグラフは、必ずしも示されている通りのものではない。
目に見える以上の意味がある場合もあるし、見かけより内容がないかもしれないのだ。統計が読み書きの能力と同じぐらい必要になっている現在、「統計でだまされない」ためには、まず「統計でだます方法」を知ることが必要だ!
だまされないためには、だます方法を知ることだ!
かの有名な英国の政治家ディズレーリは言った――ウソには3種類ある。ウソ、みえすいたウソ、そして統計だ――と。
確かに私たちが見たり聞いたり読んだりするものに統計が氾濫しているし、
「平均」とか「相関関係」とか「トレンド」とか言って数字を見せられ、グラフを示されると、怪しい話も信じたくなる。しかし、統計数字やグラフは、必ずしも示されている通りのものではない。
目に見える以上の意味がある場合もあるし、見かけより内容がないかもしれないのである。
私たちにとって、統計が読み書きの能力と同じぐらい必要になっている現在、「統計でだまされない」ためには、まず「統計でだます方法」を本書によって知ることが必要なのである!
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます