ケンのブログ

日々の雑感や日記

ベルナルド ハイティンクのブルックナー

2020年02月18日 | 音楽
僕は音楽全般が好きだけれどとりわけシンフォニー つまり交響曲を聴くのが好き。

最もよく聴く作曲家はベートーベンでこれは中学生の頃から一貫して変わっていない。

ベートーベンの次に聴く頻度が高いのはショスタコーヴィチとシベリウス。そして、その次くらいがきっとブルックナーなのだと思う。

しかし、それでも僕の場合、今、列挙した上位三人の作曲家の交響曲を聴くことが圧倒的に多いのでブルックナーはごくたまにということになってしまう。

ところが今年に入ってちょっとしたことがきっかけでブルックナーを以前より頻繁に聴きたくなった。

それでブルックナーのCDということなのだけれどたぶん15年以上昔にオイゲンヨッフム指揮ドレスデンシュターツカペレの交響曲全集を買って、これでいいと思ってきた。

ブルックナーの交響曲全集では定盤と言われているものの一つだし、弦の音はなめらかでまずます気に入っていた。

ところがいざもう少し高い頻度でブルックナーを聴いてみようと思いヨッフムの全集を聴いていくとちょっと僕にとっては気になるところが出てきた。

僕は気にしだすと気にしてしまうところがあって、いやあ気になるなあ、やっぱりブルックナーも別の指揮者の全集を持ったほうがいいなと思った。

僕が気になった点はまず加速。ブルックナーの場合曲が長大なのでやはりヨッフムさんに限らず加速で演奏効果を出す指揮者は多い。

ヨッフムさんの演奏では例えば交響曲第9番の第一楽章の第一主題の提示がが始まってしばらくすると大きな音楽的頂点に向かってどんどん加速していくところがある。

そこは他の指揮者も加速していることはあるのでヨッフムさんが特別というわけではないのだけれど僕の感覚ではこの加速ちょっとやりすぎと思ってしまう。

加速のし過ぎで逆にちょっと軽薄になってしまっているようでここを聴くとなんともやりきれない気持ちになってしまう。

ちなみに確かカラヤンも交響曲第9番の開始直後の音楽的頂点でかなり加速していてその昔その録音を聴いてすっかりカラヤンのブルックナーを聴く気がうせてしまった。

そのころの僕はまだ若かったのでカラヤンはここでこんな加速をするような演奏スタイルだから朝比奈隆さんに皮肉を言われたりするんだなと象徴的に思った。やはり軽薄に聴こえることは僕にとって否めないから。朝比奈さんがカラヤンのことを皮肉っているのはなにもブルックナーの演奏を皮肉っているわけではないので象徴的に思ったということにしておく。

ちょっと話がカラヤンで脇道にそれてしまったけれどブルックナーの9番ほどスピリチュアリティの高い曲で加速による盛り上げの度が強すぎるのは興ざめということなのだと僕は思った。

一箇所そういう盛り上げ方の違和感を覚えると連鎖反応で他の曲の演奏の盛り上げ方まで気になってしまったりする。

全集で交響曲をそろえるというのはそういう面もあると思う。

もうひとつ僕が気になったのはときに金管の強奏が耳にうるさいと感じられること。過去にはギュンターヴァントさんの録音を聴いてそれを思ったことがあるけれどヨッフムさんでもなんか気になってしまう。

気にしだすと気になってしまうということで他の指揮者の全集を調べてみた。

すぐにでも買えそうな全集は意外にも少ないことに気づいた。まあ、規模のおおきな交響曲だし録音も難しいだろうしそんなに全集を出しても売れないだろうし、わかる気はするのだけれど。

そんな中でタワーレコードがハイティンクさんとウイーンフィルのコンビで交響曲3,4,5,8番 ロイヤルコンセルトヘボウとのコンビで7,8,9番のセットをかなり宣伝していることに気づいた。

合わせてロイヤルコンセルトヘボウとの旧録音を思しき全集も出ていたけれど1番2番6番は全集でもっていてもそんなに聴かないし、これはウイーンフィルと、コンセルトヘボウで3,4,5,7,8,9番がそろえばそれで十分と思った。

それでネットに出ていた商品番号をひかえてタワーレコードに行ったら店員の方がそれなら在庫ありますと言ってくれた。隣の街のタワーレコードは今やネットショップにおされて僕の出身地の田舎町と同じくらいの小さな売り場面積になっているのでブルックナーのシリーズなんてあるわけないと思ったら運がよかった。

店員さんが在庫とってまいりますと言ってくれたけれど、在庫があるなら自分で見ますと言って売り場で商品を見せてもらった。演奏時間で他の演奏家と比較すると比較的おそいテンポであるようだ。その一点に望みをかけてこれは思い切って買おうと思った。店員の方も手際よく対応してくださって嬉しかった。

家に帰って聴くと問題の加速のところは僕にとっては程よいものになっている。金管のうるささもあまり気にならない。音量が少ないというよりも響きが分厚いのでうるささが気にならないという方が適切と思う。同じ音量でも響かせ方で耳に与える印象が全然違う。それに録音のバランスも工夫されているのだと思う。

演奏を聴いているとハイティンクさんって賢いというか思慮深い指揮者なんだなと思う。どこでそう思うかというのは言葉ではかけないけれど。

20世紀後半の大指揮者で例えばカラヤンは何をやってもテンポは概して早め、ショルティさんは概して遅めというのはあると思う。

ハイティンクさんはベートーベンに関してはこの年代の指揮者ではやや早めだと思う。それに対してショスタコーヴィチ、ブルックナーはやや遅め。そういう表現の使い分けというのも僕にとってはハイティンクさんの引き出しの多さのように感じられる。

ブルックナーに関しては遅めでありながらもっぱら荘厳さを醸し出すことに主眼を置くというのとはちょっと毛色の違う演奏であるようだ。

遅いテンポでもリズム感が感じられるというところがすごいとおもう。

あと、ウイーンフィルって特にブルックナーのような曲を演奏するときはまったり感の出るオーケストラだと思うけれど、ハイティンクさんが指揮するとそれがあまり表に出ない。程よい引き締まり感がある。音をよほど整理してならさなければこうはならないように思う。今の僕にとってはいい演奏だなと思う。これが全てというわけではないけれど。