西條奈加著
「銀杏手ならい」
西條さん、子どもを生き生き動かすのが本当に見事です
「銀杏堂」
父が開いた手習所を手伝っていた萌
20歳で御家人の家に嫁ぐが、子どもができないので3年で実家に戻される
出戻った萌と妻に手習所をまかせ、父は上方に旅にでる
後を任された萌は教育者として迷いながらも子ども達と一緒に成長していく物語
どうしても迷いが生じたら、哲二を頼れと言い残した父
哲二の教える手習所には枠からはみ出した個性的な子どもたちが、学んでいる
どの子にどんな指南書をあてがうか悩んだ萌は哲二に聞いてみた
すると、哲二は
「どんな良書であろうと、当人が興が乗らねば紙屑と同じだよ」
と言う
しかし、萌は納得いかずに
子どもの好きにさせることが、教育ではない。
むしろ嫌がることを我慢させ、耐える力を身につけ
世間に受け入れられる素地を作ることこそ、手習所の身上だと反論する
哲二は
「たしかに間違ってはおらんが・・・・それは子のためというよりも、親の望みであろう」
しかし、ある意味、親たちに認められなければ、私塾はやっていけないのが現実でもあるのだ
又、哲二は萌にこんなことも語る
「どんなことでもいい、大人からすれば無益に見える事柄でも構わない。
己にも得手がある、できることがあると気づかせてやるのが何よりの一義。
たとえ人並みには及ばずとも、己を信じることさえできれば、この先も生きていけよう」
西條さんが書きたかったのは、この二点なのだと思った
いずれ続編もでるのではと期待しています