田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「カムカムエヴリバディ」『ベースボール』

2022-04-04 10:29:18 | カムカムエヴリバディ

 「カムカムエヴリバディ」で野球好きの勇(目黒祐樹)が、「ジャズは野球じゃ。駆け引きと予想外の展開と間が似とる」みたいなことを言っていた。

 このドラマは、映画と野球とジャズが絡むところが面白くて見続けているのだが、なるほどそう来たかという感じがした。そこで思い出したのが、ケン・バーンズという映像作家が、MLBの歴史を描いた『ベースボール』(94)というドキュメンタリーだった。

 これは、1イニングを1時間とし、9イニング×2の18時間にわたって野球の歴史を描いた超大作だが、その“1回表”の冒頭で、アメリカ文化批評家のジェラルド・アーリーが、アメリカ史にとっての野球の意味について、こう語っていた。

 「2000年後、もし誰かがアメリカの文明を学ぼうとしたら、アメリカが残せるものはたったの3つだ。合衆国憲法、ジャズ、そしてベースボール。この3つが、我々の文化が作り出したものの中で、最も美しくデザインされている」と。

 ちょっと趣旨は違うが、勇の言葉とも通じるものがある。ひょっとして脚本の藤本有紀は、このドキュメンタリーを見たのかもしれないと思った。『ベースボール』は、随分前に、NHKで放送されたダイジェスト版しか見ていないので、いつかその全編に目を通してみたいと思っている。

https://www.youtube.com/watch?v=-_cuFNFqi2Y

 

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「カムカムエヴリバディ」→『ジャズ大名』

2022-04-01 06:19:02 | カムカムエヴリバディ

 「カムカムエヴリバディ」の劇中映画『ベースボール・サムライ』は、現代のアメリカ人が幕末の日本にタイムスリップし、弱小藩の人々とコミュニケーションを取るために、彼らに野球を教える、というものらしい。

 で、思い出したのが、幕末の日本に漂着したアメリカの黒人が、小藩の人々にジャズを教えるさまを描いたこの映画だった。

『ジャズ大名』(86)(1986.7.19.)

 『近頃なぜかチャールストン』(81)から、随分とごぶさたが続いた岡本喜八監督の新作。相変わらずのウイットに富んだ笑いと、アナーキーぶりで健在を示してくれたので、まずは一安心。

 日本の幕末に、ジャズのルーツを持ったアメリカの黒人たちが漂着するなどという、突拍子のなさは、いかにも原作の筒井康隆の世界。だが、その短編から話を膨らませ、アメリカの南北戦争と日本の戊辰戦争という、両国の内戦を、同じ土俵の上で描きながら、それらお国の一大事には全く我関せず、オールナイトのジャムセッション(これがめちゃくちゃ楽しい)に熱中する人々を描くというアナーキーな感じは岡本喜八の世界である。

 随分前の岡本喜八による幕末映画『赤毛』(69)の中で吐かれた「葵が錦に代わっただけじゃないか」という一言に、時の権力に迎合しない、あるいは、権力者が代わったところで、急に世の中がよくなるものでもない、といった諦めの気持ちが込められていたが、そうした精神が、同じ幕末もののせいもあるが、数十年後のこの映画にもつながるところがあった。

 そして、年を取っても、黒澤明のように巨匠然としないで、こうした軽い、B級に毛が生えたような、それでいて抜群に面白く、皮肉の効いた映画が撮れるところが岡本喜八の真骨頂なのだろう。さまざまな出演者の中でも、堅物の家老を演じた財津一郎が絶品だった。

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「カムカムエヴリバディ」『ラストサムライ』+『ミスター・ベースボール』=『サムライ・ベースボール』

2022-03-30 00:02:30 | カムカムエヴリバディ

 朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で、ハリウッドの映画スタッフが、映画製作のオーディションのために映画村を訪れた。その映画のタイトルは『サムライ・ベースボール』。これは多分『ラストサムライ』(03)『ミスター・ベースボール』(92)の合体だろう。で、『ラストサムライ』には、伴虚無蔵(松重豊)のモデルと思われる福本清三が、サイレント・サムライ役で出演したのだ。

『ラストサムライ』



https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/49ffa1d36ec04bf32dd59a96aaf849d8


『ミスター・ベースボール』(92)(1993.2.16.日比谷映画)

 初めて日本のプロ野球が舞台になったハリウッド映画。二ューヨーク・ヤンキースから中日ドラゴンズにトレードされた強打者ジャック・エリオット(トム・セレック)の姿を通して日米の違いが露わになる。監督役は高倉健。セレックも健さんも野球経験はほとんどなかったというが、名選手と名監督らしく見せてしまうところが映画のマジックだ。2人の間で苦労する通訳(塩屋俊が好演)がこの映画の主人公だという見方もできる。監督はフレッド・スケピシ。

 この映画の主人公ジャック・エリオットのキャラクターには、かつて日本でプレーしたさまざまな外国人選手の姿が反映されている。例えば、ダリル・スペンサー、ウィリー・デイビス、チャーリー・マニエル、ウォーレン・クロマティ、ランディ・バース、ボブ・ホーナー、セシル・フィルダー…。

 一方、健さんが演じた内山監督も、時には長嶋さん、王さん、星野仙一、広岡達朗と、こちらも複数のモデルがいるようだ。その分、どちらも人物像が散漫になったきらいがあり、健さんの監督が英語がペラペラだったり、ヒロインが監督の娘といったご都合主義的なところも見られたが、これだけ日本人キャストで固められた映画をハリウッドが作り、上映したのだから、日本野球のハリウッドデビューとしては、ゲームシーンのリアルさも加味して、合格点をあげてもいいと思った。惜しむらくは、エリオットの孤独や改心の奥が描き切れなかったところか。

 名前こそ出ていないが、この映画の影のクリエーターは、『菊とバット』や『和をもって日本となす』のロバート・ホワイティングではないだろうか。

 

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「カムカムエヴリバディ」目黒祐樹と近衛十四郎の素浪人シリーズ

2022-03-17 12:17:17 | カムカムエヴリバディ

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に、目黒祐樹が3代目ヒロインひなたの大叔父・雉真勇の晩年の姿として登場した。

 その目黒の父は時代劇スターの近衛十四郎。兄は松方弘樹。父の近衛は映画で活躍した後、テレビの素浪人シリーズ「素浪人 月影兵庫」(65~68・後に松方主演でリメーク)「素浪人 花山大吉」(69~70)「素浪人 天下太平」(73)で、豪快な殺陣とコミカルな演技を披露して、品川隆二演じる相棒の焼津の半次と共に茶の間の人気者となった。自分も子どもの頃、夢中になって見ていた口だ。

 目黒は、素浪人シリーズの最終作「いただき勘兵衛 旅を行く」(73~74)で、品川の焼津の半次に代わって、旅の相棒となる旅がらすの仙太(実は監視役の与力・有賀透三)として親子共演を果たしている。

 このあたり、「カムカムエヴリバディ」の劇中に登場する時代劇スター桃山剣之介父子(尾上菊之助)の姿と微妙に重なる。脚本の藤本有紀は、1967年生まれだというから、65年生まれという設定のひなた(川栄李奈)とほぼ同世代。ということは、自身の体験や時代劇に対する思い入れも反映されていることだろう。素浪人シリーズも再放送などで見ていたのではあるまいか。しかも、今回目黒が演じた晩年の勇は兄を失くした弟の役なのだ。

 キャスティングの際に、こうしたことが加味されたのだとしたら、それはそれで、なかなか粋な感じがするのだが。ここまでくるともはや妄想の世界か…。

目黒祐樹「カムカムエヴリバディ」でひなたの大叔父・雉真勇役
「ジョーという名は、やっぱりジョー・ディマジオから取ったんか」というセリフには笑った。その後のキャッチボールのシーンもなかなかよかった。
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1320620

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「カムカムエヴリバディ」伴虚無蔵と福本清三

2022-02-25 17:40:02 | カムカムエヴリバディ

 朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の舞台となっている条映映画村のモデルは、明らかに東映映画村だが、松重豊演じる大部屋俳優の伴虚無蔵のモデルは、先年亡くなった福本清三さんなのかな。

 殺陣は素晴らしい虚無蔵が、セリフが下手というのは、福本さんと同じ。福本さんの主演作『太秦ライムライト』(14)の役名・香美山清一(かみやま・せいいち)は、セリフをかむというシャレからきているぐらいだ。

 さて、福本さんのように、虚無蔵にも奇跡は起こるのか。

松重豊「カムカムエヴリバディ」で伴虚無蔵役
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1317822

「あんちゃん」「あのお方」「清ちゃん」「顔の濃い人」「斬られ役」…福本清三
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6e9194e32c07664ee8b0e5574ea10764

「5万回斬られた男」福本清三逝く
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/81d34459805b942a4e1e357e5c5c446b

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「カムカムエヴリバディ」「チャンバラとジャズはよく合う」

2022-01-18 09:23:09 | カムカムエヴリバディ

 今日の朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では、市川雷蔵の『眠狂四郎』をパロディにしたような、劇中映画『棗黍之丞 妖術七変化 隠れ里の決闘』の桃山剣之介(尾上菊之助)と伴虚無蔵(松重豊)の対決シーンと、ジョー(オダギリジョー)とトミー(早乙女太一)のトランペット合戦をカットバックで見せるというなかなか面白い趣向が見られた。確か、山下洋輔が「チャンバラとジャズはよく合う」と言っていたのをどこかで聞いた覚えがある。

ジャズ喫茶「Night and Day」の支配人木暮洋輔を演じる近藤芳正も、このシーンを絶賛していた。
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1310986

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「カムカムエヴリバディ」『ハワイの若大将』と『マタンゴ』

2022-01-12 06:52:31 | カムカムエヴリバディ

 朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で、黒澤明監督・三船敏郎主演の『椿三十郎』(62)に続いて、『ハワイの若大将』と『マタンゴ』(63)が登場。実際にこの2作は同時上映だったらしい。どちらもヨットで外遊する話だが、片や明るい青春物、こなたホラーと内容は全く異なる。よくこんな2本立てをやったものだと思うが、どちらも東宝のドル箱映画で、昔は結構こういうパターンがあったのだ。で、時代はいつの間にか昭和38年になったことが分かる。

「カムカムエヴリバディ」の『椿三十郎』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fb833ed4cce7154ea0f4e3bca9a254a6

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「カムカムエヴリバディ」の『椿三十郎』

2021-12-28 13:43:05 | カムカムエヴリバディ

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。前日は、O・ヘンリーの「善女のパン」の舞台劇の挿入があったが、今回は、オープニングで、いきなり「眠狂四郎」かと思いきや、戦前から活躍するモモケンこと桃山剣之介(尾上菊之助)主演の時代劇で、最後に斬られるのは松重豊だった。このモデルは福本清三か。モモケンは架空の人物だが、かつて安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)が最後に一緒に見たのも彼の映画だった。

 続けて、2代目ヒロインのるい(深津絵里)が、弁護士の卵の片桐(風間俊介)との初デートで、黒澤明監督の『椿三十郎』(62)を見に行く様子が描かれた。ということは、時代は昭和37年ということか。

 るいの額の傷のこともあるから、市川右太衛門の『旗本退屈男』ではしゃれにならないが、そもそも『椿三十郎』はデートムービーには向かないと思うのだが…。

 一緒に並ぶ看板は『巴里のイギリス人』と『逆襲!宇宙海賊船』と『あさがお』。モデルになった映画は、多分『巴里のアメリカ人』(51)『地球防衛軍』(57)『宇宙大戦争』(59)はたまた『スーパー・ジャイアンツ』あたりと『ひまわり』(70)だと思われる。

 これは映画黄金時代の華やかさを表現したかったということなのだろう。何だか時代考証がバラバラだが、これはこれでいろいろと想像をしながら楽しめる。

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「カムカムエヴリバディ」『黄金狂時代』「パンのダンス」と『ジョーカー』

2021-11-02 09:19:39 | カムカムエヴリバディ

 新しい朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で、濱田岳が『黄金狂時代』(25)でチャップリンが見せた至芸「パンのダンス」を模した「おはぎのダンス」を披露し、ラジオの設定で、中川家がエンタツ・アチャコの漫才「早慶戦」を再現していた。

 で、そのチャップリンが印象的に登場するのが、ばかがまねして事件を起こした『ジョーカー』(19)。実はあの映画は、主人公の狂気の裏で、“笑いとは何か?”を問う映画だったのに…。

『黄金狂時代』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/61ebef50ca2876b1fa34be2615d2996b

『ジョーカー』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/75091b52a9e9588c7af8292cc7d4777e

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「おちょやん」から「カムカムエヴリバディ」へ

2021-05-02 09:47:13 | カムカムエヴリバディ

 放送中のNHK連続テレビ小説「おちょやん」が、いよいよラジオドラマ時代に突入。2代目・渋谷天外をモデルにした天海一平役の成田凌に続いて、花菱アチャコをモデルにした花車当郎役の塚地武雅、脚本家・長沖一をモデルにした長澤誠役の生瀬勝久がなかなかいい味を出している。

 この後、杉咲花演じる千代のモデルとなった浪花千栄子は、映画女優としても活躍したのだが、その辺りはどう描かれるのだろうか。最初は違和感があった杉咲が、どんどんと良くなっているので楽しみだ。

 で、次の次の朝ドラは、上白石萌音が主演する「カムカムエヴリバディ」。ラジオ英語講座をめぐる親子3代の話だそうだ。最近の朝ドラは、旬の若手俳優たちを使って近代史を描くものが多いので、興味深く見ている。

浪花千栄子
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e45110e1615f06038239587d9b5f018d

「おちょやん」 岡田嘉子「愛の逃避行」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8f1e4ff621ece5348742a9048a6296db

【インタビュー】『くれなずめ』若葉竜也
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/30b6d3dd4060dbccc239a930aea33a62

【インタビュー】『カツベン!』周防正行監督、成田凌
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3e05619830e2646254dc35f638aab180

新人女優、上白石萌音を発見するための映画『舞妓はレディ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2f3be6a075a8bc90319e97df182e971f

【インタビュー】「カムカムエヴリバディ」上白石萌音
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1272126

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