田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『スーパーノヴァ』

2021-06-30 10:17:51 | 新作映画を見てみた

老夫婦と何ら変わるところはない

 ピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)は20年来のパートナーで、幸せな人生を歩んでいた。ところが、タスカーが認知症に侵される。病が進行する中、最後まで共に生きることを願うサムと、サムの負担になることに悩むタスカー。決断を迫られた2人は、キャンピングカーで旅に出る。

 ひと昔前なら、こうした同性カップルの動静と安楽死の問題を真正面から描くこと自体がタブーとされただろうが、いまや違和感は薄くなった。早い話、2人の姿を見ていると、老夫婦のそれと何ら変わるところはないと思わされたし、2人を囲む隣人たちの温かさにも時代の変化を感じさせられた。

 サムとタスカーの複雑な胸中を、ファースとトゥッチという2人の名優が、豊かな表情としぐさで巧みに表現。イギリスの湖水地方の風景も美しい。ユニークなロードムービーとしての側面もある。監督・脚本は、これが長編2作目というハリー・マックィーン。

 タイトルは「超新星の爆発」を意味し、同名のSF映画(00)もあったが、この映画の場合は、生と死に関する哲学的な意味合いを含んでいる。

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「BSシネマ」『ピンポン』

2021-06-29 07:11:31 | ブラウン管の映画館

『ピンポン』(02)

CGを使った競技映像が見もの
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/41cc4c9f9fa7c6d63cd176df444a6e96

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『アジアの天使』

2021-06-29 07:05:38 | 新作映画を見てみた

人情などの味わいは日本映画

 妻を病気で亡くした青木剛(池松壮亮)は、一人息子の学と共に、疎遠になっていた兄の透(オダギリジョー)が暮らすソウルへ渡る。一方、ソウルでタレント活動をするチェ・ソル(チェ・ヒソ)は、仕事や家族との関係について悩んでいた。

 韓国の首都ソウルから地方に向かう列車の中で出会った日本人と韓国人の、言葉の通じない二組のきょうだいが、旅を通じて心を通わせていくさまを描いたロードムービー。石井裕也監督が、韓国人スタッフ&キャストと共にオール韓国ロケで撮り上げた。

 「相互理解」をキーワードに、言葉と文化の違いという壁による両者のかみ合わない会話、コミュニケーションのすれ違いが、半ばドキュメンタリーのように、ユーモラスに描かれるが、やがて両者が心を通わせ、別れ難くなる変化の様子が見どころとなる。

 うさんくさい透が語る、「よく分からない感情は、みんな愛だ」「『ビールください』と『愛してる」。この二つだけを知っていれば、この国(韓国)でやっていける」などのセリフも面白い。

 全編韓国ロケ、韓国人のスタッフ&キャストで撮られているが、人情などの味わいは日本映画。だから韓国映画が苦手な自分にも、心地よさが感じられたのだろう。一度仕事で訪れたことがあるソウルの風景が懐かしく映った。

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「BSシネマ」『追憶』

2021-06-28 07:30:57 | ブラウン管の映画館

『追憶』(73)

年を取れば取るほど味わいが増す
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1e90621f91d45c9d0aa20199865708f0

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『映画の森』「2021年 6月の映画」

2021-06-28 06:30:00 | 映画の森

 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)6月28日号で、『映画の森』と題したコラムページに「2021年 6月の映画」として、5本の映画を紹介。独断と偏見による五つ星満点で評価した。


みんな映画作りが大好き
『カムバック・トゥ・ハリウッド!!』☆☆☆☆

夫婦間の希望の隔たりとは
『幸せの答え合わせ』☆☆☆

人生の最期の迎え方について
『ブラックバード 家族が家族であるうちに』☆☆☆

記憶と時間にまつわる新機軸のラブコメディー
『1秒先の彼女』☆☆☆☆

ハインラインの『夏への扉』を翻案
『夏への扉 キミのいる未来へ』☆☆☆

クリックで拡大↓

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『返校 言葉が消えた日』

2021-06-27 08:11:17 | 新作映画を見てみた

ホラーの形を借りて迫害事件を告発

 1962年。国民党による独裁政権下の台湾では、市民に相互監視と密告が強要されていた。ある日、翠華高校の女子生徒ファン・レイシン(ワン・ジン)が、放課後の教室で目覚めると、校内には誰もいなかった。校内をさまよったファンは、読書を禁じられた本をひそかに書き写す読書会のメンバーのウェイ・ジョンティン(ツォン・ジンファ)と遭遇する。2人は学校からの脱出を試みるが、どうしても外に出ることができない。

 監督のジョン・スーは、この映画がデビュー作。ホラーの形を借りて、暗黒の白色テロ時代の政府による迫害事件を告発しているが、基はゲームだという。読書会の存在を当局に密告した者を明かしていく、謎解きミステリーの要素もあるが、こういう題材がゲームとして成立することに驚かされた。個人的には、韓国映画にはどうもなじめないが、台湾映画にはなぜか親和感を覚える。

 禁書、密告、裏切りをテーマとした、レイ・ブラッドベリの原作をフランソワ・トリュフォー監督が映画化した『華氏451』(66)のことを思い出した。

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ランドルフ・スコット

2021-06-27 00:01:17 | 俺の映画友だち

 オンラインでの西部劇映画のトークに参加した。この日のテーマは、ランドルフ・スコット。

 スコットは紛れもない西部劇の大スターなのだが、リアルタイムではない自分にとっては、作品の質もそうだが、ちょっとなよなよした感じがして、正直なところあまり魅力が感じられない。(ファンの皆さんごめんなさい)。

 『外国映画男優名鑑』(09)で彼のことを書いたときに、いろいろと調べたら、西部劇専門になる前は、二枚目俳優としてゲーリー・クーパーと比較され、『風と共に去りぬ』(39)では、原作者のマーガレット・ミッチェルが、アシュレー役に彼を推薦したという。もし、レスリー・ハワードではなく、スコットがアシュレーを演じていたら、その後の彼の俳優人生は、大きく変わっていたのだろうか、と考えると興味深いものがある。

 さて、あまり見ていないが、ランドルフ・スコット出演作の私的ベストファイブは

『西部魂』(41)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/fb396f6aa251249b7bf2af5d30331bcc

『サンタフェ』(51)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/23205acdce60a59b84e78eb0556acc23

『捨身の一撃』(55)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2352f713846f9f84c9c3f489d1dd76b8

『七人の無頼漢』(56)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9fde112e6ba333f26ad912459f1a3581

『昼下りの決斗』(62)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f14113d05f80fedff0458bb913cae3f8

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『プロミシング・ヤング・ウーマン』

2021-06-26 08:41:22 | 新作映画を見てみた

変幻自在の脚本とマリガンの怪演

 明るい未来を約束された(原題)医学生だったキャシー(キャリー・マリガン)は、友人のレイプ事件によって未来を奪われ、事件の当事者たちへの復讐を企てる。

 監督・脚本は、これがデビュー作となったエメラルド・フェネル。アカデミー賞の脚本賞を受賞したことからも分かるように、前半はシュールなブラックコメディ、中盤はラブロマンス、後半はサイコミステリーと、変幻自在の展開を見せる。その中で、時にはかわいく、時には哀れを誘い、時にはグロテスクに映るなど、さまざまな顔を披露するマリガンの怪演が目を引く。

 また、復讐の前段として、キャシーが、女性を性欲のはけ口としか思わない男たちに色仕掛けで近づき、制裁を加えるさまが描かれるが、これを見ながら、同じく、女であることを武器にした復讐劇である山本周五郎の『五辨の椿』のことを思い出した。

 女性の立場を主張する映画をプロデュースしているマーゴット・ロビーが、この映画の製作者としても名を連ねているのを見て、なるほどと思った。

【インタビュー】『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』マーゴット・ロビー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f68d6feefe67190181d776737a86431c

【付記】『狩人の夜』(55)のロバート・ミッチャムがちらっと映る。これは、キャシーもハンターだということなのか?

 

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「金曜ロードショー」『ピーターラビット』

2021-06-25 10:00:29 | ブラウン管の映画館

『ピーターラビット2/ バーナバスの誘惑』公開に合わせての放送。

CGの発達で映画化が可能になった『ランペイジ 巨獣大乱闘』と『ピーターラビット』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/941f3a53f058395c2750a1b3c98313c3

【インタビュー】『ピーターラビット』ウィル・グラック監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/374c50f98229aa4b080253adad401db6

【インタビュー】『ピーターラビット2/ バーナバスの誘惑』ウィル・グラック監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cfbcf55ce8da80ca6cc0962767a80f49

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『犬部!』

2021-06-25 08:28:47 | 新作映画を見てみた

俳優と犬たちの好演の賜物

 大学に動物愛護サークル「犬部」を設立した獣医学部の花井颯太(林遣都)が、仲間たちと共に動物を守ろうと奮闘した過去と、獣医師となって新たな問題に立ち向かう現代を交差させながら、信念を曲げずに突き進む“犬バカ”の主人公と、「犬部」のメンバーたちの熱い思いと奮闘を、笑いあり、涙ありで描く。

 監督・篠原哲雄。原案は、青森県の北里大学に実在したサークルを舞台にした『北里大学獣医学部 犬部!』(片野ゆか)。

 動物を飼うには大きな責任が伴うはずだが、先の、ニシキヘビ脱走の大騒動を例に出すまでもなく、人間の身勝手で被害をこうむる動物たちは数知れない。また、自分のペットかわいさのあまり、他人に迷惑を掛ける飼い主もいる。そして、あからさまに感動の涙を誘うような動物映画もあふれている。そんな風潮はどうも苦手だ。

 この映画の主人公の花井は、全ての犬を救う気構えで行動する“犬バカ”で、はたから見れば迷惑なところもあるのだが、損得勘定ではなく、純粋に犬たちを救いたいという思いを貫いて行動し、その行動の責任もきちんと取るところには好感が持てる。そして、過度の感動の押し付けもないから、自然、この男を応援したい気持ちにさせられる。

 その花井をはじめ、相棒の柴咲涼介(中川大志)、後輩の佐備川よしみ(大原櫻子)と秋田(浅香航大)という「犬部」のメンバーたち、あるいは、花井の動物病院の看護師(安藤玉恵)などは、皆、善意の人たちであり、あまのじゃくに言えば、悪人が一人も出てこないこの映画を、夢物語として片付けてしまうのは簡単なのだが、たまにはこういう映画があってもいいではないかと思わされるのは、俳優と犬たちの好演の賜物だろう。

【付記】「犬部」のメンバーの一人、佐備川よしみを演じた大原櫻子にインタビューをした。詳細は後ほど。

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