田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ベニスビーチ『ロード・オブ・ドッグタウン』

2021-02-28 17:43:18 | BIG ISSUE ビッグイシュー

 NHK BSの、世界ふれあい街歩きスペシャル「北米大陸・西海岸を行く」で、スケートボードが盛んなロサンゼルスのベニスビーチが紹介されていた。ここには一度訪れたことがあるので懐かしかったが、1970年代にこの地で結成されたスケボーグループ「Z Boys」たちを描いた映画のことも思い出した

『ロード・オブ・ドッグタウン』(05)

 舞台は1970年代のウエストコースト。スケートボード・ブームを現出させた実在の3人(ステイシー・ペラルタ、ジェイ・アダムズ、トニー・アルバ)をモデルにした青春群像劇だが、音楽やファッションといったうわべの雰囲気だけで70年代を描いているから懐かしさが浮かんでくるわけでもない。

 というか、そもそもオレたちのような世代に向けたノスタルジー物なのか、今の若者たち向けにスケボーや、それを取り巻くさまざまをカッコ良く見せようとしたのか、狙いが中途半端なので焦点がぼやける。

 これは、描き方によってはもっと面白くなるべき題材を、キャサリン・ハードウィック監督が消化しきれなかった結果ではないか。主役の3人(ジョン・ロビンソン、エミール・ハーシュ、ビクター・ラサック)よりも、彼らを世に送り出す役割を果たした店のオーナー(ヒース・レジャー好演)の屈折が目立ってしまうのもちょっと違う気がする。

 こうなると、同じくウエストコーストのサーフィンを描いたジョン・ミリアスの『ビッグ ウェンズデー』(77)が名作に思えてしまう錯覚が生じて困った。また、この映画を見ながらイーグルスの「ラスト・リゾート」を思い出した。

ビッグイシュー日本版39号(2005.11.)で、主役3人にインタビューをした。

【今の一言】3人の中での一番出世はエミール・ハーシュだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『テスラ エジソンが恐れた天才』

2021-02-28 10:41:13 | 新作映画を見てみた

エジソンはひどい人

 電流戦争でトーマス・エジソン(カイル・マクラクラン)に勝利しながらも、天才であるが故に孤独な人生を歩んだニコラ・テスラ(イーサン・ホーク)の半生を描く。監督・脚本はマイケル・アルメレイダ。

 この映画は、テスラと交流があったモルガン財閥の娘アン(イブ・ヒューソン)が、時折、実際のスライド写真を見せたりしながら、案内役を務める。加えて、スマホを手に持つエジソンや、テスラが自らの心境を、ティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド」に託して歌うシーンなどで、現在との接点を示そうとしているだが、違和感を抱かせるだけで、成功しているとは言い難い。

 エジソンとの対立や葛藤の描き方も中途半端だし、サラ・ベルナールの登場も唐突。アンとの関係も良く分からない。全体的に描写が観念的なので、実際のテスラの業績も浮かんでこないし、ホークの暗くて癖のある演技を見ていると気が滅入ってくる。伝記映画の悪例といった感じがした。

 それにしても、「おどるポンポコリン」では、「いつだって忘れない エジソンは偉い人 そんなの常識」と歌われていたが、ある側面から見れば「エジソンはひどい人」だな。

 ところで、テスラがエジソンのキネトスコープで、エドウィン・S・ポーターの『大列車強盗』(1903)を見るシーンがあったが、それであるドキュメンタリーを思い出した。

 『ペーパープリントが語る100年前のアメリカ』(2011.1.2.NHK BS)

 「映画の発明」「大国の誕生」「カメラは世界へ」の3部作でなかなか見応えがあった。ちなみに、ペーパープリントとは、エジソンが著作権を得るためにフィルムを紙に貼り付けて写真として保存したものだそうだ。

 こうして改めて黎明期のフィルム=映画を見ると、もともと映画とは高尚なものではなく、人々の好奇心を満たすのぞき趣味の産物であり、戦争や事件を都合よく見せるためには、特撮を駆使したやらせもいとわない、という下世話なものだったことがよく分かる。中でも、エドウィン・S・ポーターの『あるアメリカ消防夫の生活』(1903)は、劇映画の元祖と言われるだけあって、今見ても結構面白い。

 ところで、映画発明者はエジソンにあらずという説がある。候補者は、有名なリュミエール兄弟をはじめ、ウィリアム・ディクソン、オーギュスタン・ル・プランスなど。

 中でも、特許争いの渦中で突然失踪したル・プランスは、『エジソンに消された男』(クリストファー・ローレンス)で大きく扱われ、日本でも北原尚彦が、ル・プランスの霊が霊媒師に降りて真実を語るという短編小説「映画発明者」を著している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『大決戦!超ウルトラ8兄弟』

2021-02-28 08:41:25 | 映画いろいろ

『大決戦!超ウルトラ8兄弟』(08)

 別の世界でウルトラマンとして戦った者たちが普通の人間として暮らしている世界が舞台で、かつてウルトラシリーズがテレビで放映されていた世界に本物のウルトラマンが現れる、という一種のパラレルワールド話。

 主人公は、マドカ・ダイゴ (長野博)/ ウルトラマンティガ、アスカ・シン(つるの剛士)/ウルトラマンダイナ、高山我夢(吉岡毅志)/ウルトラマンガイアの3人。

 彼らの住む横浜に、夫婦となった「ウルトラマン」のハヤタ(黒部進)とフジ・アキコ(桜井浩子)、「ウルトラセブン」のモロボシ・ダン(森次晃嗣)と友里アンヌ(ひし美ゆり子)、「帰ってきたウルトラマン」の郷秀樹(団時朗)と坂田アキ(榊原ルミ)、「ウルトラマンA」の北斗星司(高峰圭二)と南夕子(星光子)も住んでいるという設定。

 まあ皆、本編では一種の悲恋に終わったカップルたちだから、これはこれで懐かしくもあり、ほほ笑ましくもあるのだが、女性陣のハワイアンダンスのシーンはちょっときつかった。

 おまけに、「ウルトラQ」の主人公・万城目淳(佐原健二)がSF作家として姿を見せ、その相棒の戸川一平役の西條康彦、「ウルトラマン」のイデ隊員役の二瓶正也も登場し、ナレーターは「ウルトラQ」と「ウルトラマン」の石坂浩二が務めるという念の入れようには恐れ入った。

 これらは、よく言えばオマージュだが、悪く言えば楽屋落ち。そもそも、子供心にもウルトラ兄弟という設定には付いていけなかったのだが、今思えば、それはアベンジャーズやDCエクステンデッド・ユニバースの発想にも通じるものだったのか…。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『清張地獄八景』(みうらじゅん)

2021-02-27 21:39:43 | ブックレビュー

 『ゆるゆる映画劇場』でも触れられていた松本清張について、みうらじゅんがマニアぶりを発揮した編集文庫本。

 押したら最後、底なしの生き地獄へ転落してしまう「清張ボタン」の一言が飛び出す、2時間ドラマの帝王・船越栄一郎との対談、妻から見た清張、女性愛読者への手紙、そして、清張原作の映画を手掛けた脚本家・橋本忍と女優・岩下志麻の証言、松本清張映画ベストテンなど多士済々。今回は編者お得意のエロ話やおふざけは抑え気味。本当に清張が好きなのだという思いが伝わってきた。

で、自分も結構清張マニアか…。

『清張ミステリーと昭和三十年代』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/21a1daafd63019790217b499dbe146e2

旅と松本清張
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ae1666b12778daf8b73a569d6ec7b9a7

『砂の器』の映画と原作の間 その2
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3b460492781d5254b1895fdbf3fdf7a6

『砂の器』の映画と原作の間 その1
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/91dde6edf312177337a692a2e1ff3f35

桁外れの脚本家、橋本忍
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/480e2a191aa22a1f5954a170fc11c77e

川治温泉『風の視線』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f96770d2f25fe6cad00553127724c708

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ベン・ハー』

2021-02-27 12:58:05 | ブラウン管の映画館

『ベン・ハー』(59)(1974.4.5.「ゴールデン洋画劇場」)

 壮大なストーリーとミクロス・ローザの荘厳な音楽、華麗なる映像美、豪華なセット、膨大なエキストラ、戦車レースの迫力、キリストの奇跡、スペクタクル俳優チャールトン・ヘストンの面目躍如、敵役メッサラ=スティーブン・ボイドの強烈さ、ハイヤ・ハラリートの美しさ、ヒュー・グリフィス、ジャック・ホーキンス、サム・ジェフィら、脇役たちの活躍…。これぞまさに映画!

 初めて見たのは「ゴールデン洋画劇場」での前後編版。その前後1週間の各局の映画放送のラインアップは

4.1.「月曜ロードショー」(TBS)『マーフィの戦い』:解説・荻昌弘
4.3.「水曜ロードショー(NTV)『シェーン』:解説・水野晴郎
4.4.「木曜洋画劇場」(12C)『シシリアン』:解説・南俊子
4.5.「ゴールデン洋画劇場」(フジ)『ベン・ハー』(前編):解説・高島忠夫
4.6.「土曜洋画劇場」(NET)『バラキ』(前編):解説・増田貴光
4.7.「日曜洋画劇場」(NET)『007/ゴールドフィンガー』:解説・淀川長治

実は、生まれて初めて見た映画は、テアトル東京での、この『ベン・ハー』らしい。もちろん赤ん坊の頃だから、全く記憶にはないのだが。

『アカデミー賞~ハリウッドの栄冠~』から。

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

名もなきヒーローたち『オンリー・ザ・ブレイブ』

2021-02-27 08:37:27 | 映画いろいろ

栃木県足利の山火事の報道を見ながら、この映画のことを思い出した。



『オンリー・ザ・ブレイブ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7d1bd520466ecdc1e438267a74091f6c

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「金曜ロードSHOW!」『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』

2021-02-26 07:29:09 | ブラウン管の映画館

 今夜の「金曜ロードSHOW!」は『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
いろいろと取材させてもらったりもした。

『スター・ウォーズ』エトセトラ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/1641824c0d048b8a3559a534eebcc4cf

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『まともじゃないのは君も一緒』

2021-02-25 14:15:35 | 新作映画を見てみた

ちょっと不思議な感覚の映画

 恋愛について何も知らない予備校教師(成田凌)と、全てを知っているふりをする高校生(清原果耶)。彼女が彼に恋愛指南をするが、やがて彼女が彼にほれて立場が逆転していく様子が見どころとなる。

 テーマは「普通とは何か」だが、これは普通じゃない2人による恋愛劇と見るべきなのか。ちょっと不思議な感覚の映画になっている。監督・前田弘二、脚本・高田亮、音楽・関口シンゴ。

 清原がなかなかチャーミング。成田は朝ドラの「おちょやん」や新作映画『くれなずめ』でも好演しているが、『カツベン!』(19)あたりから一皮むけたように見える。

【インタビュー】『カツベン!』周防正行監督、成田凌
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3e05619830e2646254dc35f638aab180

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東映映画からテレビへ 村山新治

2021-02-25 12:28:42 | 映画いろいろ

 東映所属の監督たちの多くは、さまざまなジャンルのプログラムピクチャーを撮った後、東映テレビに活躍の場を移し、刑事物、アクション、特撮と、ここでもさまざまなジャンルのドラマを撮った。先頃亡くなった村山新治もその一人だ。

 村山は、『警視庁物語』シリーズなどを監督した後、テレビに移り、「キイハンター」「プレイガール」「特捜最前線」、そして東映不思議コメディシリーズと呼ばれる子ども向けのドラマも撮っている。まさに職人監督。

 「特捜最前線」に関するメモが残っていた。どちらも村山の監督作ではないが、あのドラマに対する自分の思いは残っていると思う。佐藤肇も天野利彦も、村山と同じ道を歩んだ、東映出身の監督だ。

「ああ三河島・幻の鯉のぼり!」(1980.5.21.)監督・佐藤肇、脚本・大原清秀

 このドラマは、毎回他の刑事物とは一味違う、重厚な人間ドラマを見せてくれるが、今回は、三河島事故をモチーフにして、1960年代から現代までの世相を背景に、沖縄からの移住者の問題を絡ませて描いていた。最近の刑事物では出色の感動作。

「ビーフシチューを売る刑事!」(1980.7.9.)監督・天野利彦、脚本・塙五郎

 大滝秀治の船村刑事が特命捜査課に復帰した。他の刑事ドラマとは一味違うシリーズが、また一層見応えが増した。

 『村山新治、上野発五時三五分 私が関わった映画、その時代』という本が出ているようだ。興味が湧いた。そして、以前から『警視庁物語』シリーズをきちんと見てみたいと思っている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『すくってごらん』

2021-02-25 07:44:23 | 新作映画を見てみた

意外な拾い物

 大手銀行の東京本店から奈良県大和郡山市の支店に左遷された元エリート銀行員の香芝誠(尾上松也)が、金魚すくいとそれを取り巻く人々との出会いを通して成長していく姿を描く。原作は大谷紀子の同名漫画。監督は『ボクは坊さん。』(15)の真壁幸紀。

 本格ミュージカルをパロディ化したような歌と踊り、ポップな映像と色遣いなどは、『モテキ』(11)『ラ・ラ・ランド』(16)をほうふつとさせるが、大和郡山の風景やレトロな雰囲気には大林宣彦的なものも感じさせる。

 鈴木大輔作曲の耳に残るメロディがなかなかいいが、松也のほか、百田夏菜子、柿澤勇人、石田ニコルら、“歌で表現できる俳優”を配した点も大きいだろう。意外な拾い物だった。

『ボクは坊さん。』
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1021450 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする